《電力・管理》〈変電〉[H29:問2]油入変圧器の絶縁材料に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

油入変圧器の内部絶縁には,絶縁油と絶縁紙(クラフト紙)などのセルロース系絶縁材料が使用されている。これら絶縁材料について次の問に答えよ。

(1) 絶縁油には一般に鉱油が使用されているが,絶縁油を吸湿したり,空気に長時間さらされると絶縁性能が低下する。この場合の絶縁油の絶縁特性を確認する診断項目を四つ挙げ,その診断項目と絶縁性能低下との関係がどのようになるかを簡潔に述べよ。

(2) 不燃性・難燃性などの防災性や環境適合性の観点から,鉱油以外の絶縁媒体を使用した油入変圧器が実用化されている。鉱油以外の絶縁媒体を二つ挙げよ。

(3) 絶縁紙の絶縁特性を向上させる方法の一つとして,油浸して気密度を上げる方法があるが,その他の方法を一つ説明せよ。

【ワンポイント解説】

絶縁油は酸化しやすく,絶縁紙は熱に弱い特性があります。絶縁油が劣化しているかどうかの診断も重要な内容ですが,絶縁油を劣化しないように空気に触れないようにするコンサベータ等の方法も重要な内容となります。

【解答】

(1)絶縁油の絶縁特性を確認する診断項目
(ポイント)
・変圧器の過負荷や短絡事故等により,油が酸化され,他の材料を侵食したり,不溶性沈殿物(スラッジ)を生じたりすることにより,絶縁低下が発生する。
・絶縁油と外気が何らかの形で接触することで,油が酸化し,水分が混入する。
・油の劣化により,絶縁破壊電圧が低下,全酸価,水分量の増加等が発生する。
(試験センター解答例)
①絶縁破壊電圧
 酸化や水分量の増加,油中微粒子などにより絶縁油が劣化すると絶縁破壊電圧が低下する。
②全酸価
 絶縁油の酸化劣化により有機酸が生成され全酸価が増加すると,絶縁性能が低下する。
③体積抵抗率
 絶縁油が劣化するとイオン性の物質が増加し体積抵抗率が減少し,絶縁性能が低下する。
④誘電正接(\( \ \tan \delta \ \)でも正解)
 絶縁油が劣化するとイオン性の物質を生成するため誘電体損が増加し,絶縁性能が低下する。
⑤水分量(油中水分量でも正解)
 絶縁油中の水分量が増加すると絶縁性能が低下する。

(2)鉱油以外の絶縁媒体
(ポイント)
・絶縁油には,現在も一般的には鉱油が使われているが,問題文にもある通り,不燃性・難燃性などの防災性や環境適合性の観点から,シリコーン油等も使用されている。
(試験センター解答例)
①シリコーン油
②合成エステル油
③植物油

(3)絶縁紙の絶縁特性を向上させる方法
(ポイント)
・油浸して気密度を上げる方法がヒントとなっているため,似たような解答を解答する。
(試験センター解答例)
①絶縁紙の密度を上げる。
②絶縁紙の含有水分量を減らす。



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