《電力・管理》〈水力〉[H29:問1]水力発電所の負荷遮断試験に関する計算問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

理論水力\(\mathrm{11000kW}\)の水力発電所で\(\mathrm{100}%\)負荷遮断試験を行い,速度上昇率は\(\mathrm{30}%\),電圧変動率は\(\mathrm{25}%\)であった。水車発電機の総合効率は\(\mathrm{86}%\),発電機は18極,定格周波数は\(\mathrm{60Hz}\)である。負荷遮断試験は,定格電流\(\mathrm{517A}\),定格力率\(\mathrm{96}%\),定格回転速度の下で行った。水車の速度調定率は\(\mathrm{5}%\)とし,調速機のガバナ特性は直線とする。

次の(1)から(6)の数値を求めよ。

(1) 水車発電機の定格回転速度\(\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)
(2) 水車発電機の最大回転速度\(\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)
(3) 水車発電機の無負荷安定時の回転速度\(\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)
(4) 発電機の定格出力\(\mathrm{[kW]}\)
(5) 発電機の定格電圧\(\mathrm{[kV]}\)
(6) 発電機の最大電圧\(\mathrm{[kV]}\)

【ワンポイント解説】

電験一種の二次試験としては,かなりのサービス問題と言えます。他の問題の難易度を考慮すると,本問は完答しておきたいところです。

1.定格回転速度\(N_{\mathrm {n}}\)
周波数を\(f\mathrm{[Hz]}\),極数が\(p\)の時の定格回転速度\(N_{\mathrm {n}}\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)は,
\[
N_{\mathrm {n}}=\frac {120f}{p}\mathrm{[{min} ^{-1}]}
\] となります。

2.速度上昇率\(\delta_{n} \)
最大回転速度を\(N_{\mathrm {m}}\mathrm{[{min} ^{-1}]}\),遮断前の回転速度を\(N_{0}\mathrm{[{min} ^{-1}]}\),定格回転速度を\(N_{\mathrm {n}}\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)とすると,速度上昇率\(\delta_{\mathrm {n}} [%]\)は,
\[
\delta_{\mathrm {n}} =\frac {N_{\mathrm {m}}-N_{0}}{N_{\mathrm {n}}}\times 100[%] \] となります。

3.速度調定率\(R\)
定格回転速度を\(N_{\mathrm {n}}\mathrm{[{min} ^{-1}]}\),回転速度変化量を\(\Delta N\mathrm{[{min} ^{-1}]}\),定格出力\(P_{\mathrm {n}}\mathrm{[kW]}\),出力変化量を\(\Delta P\mathrm{[kW]}\)とすると,速度調定率\(R[%]\)は,
\[
R=\frac {\frac {\Delta N}{N_{\mathrm {n}}}}{\frac {\Delta P}{P_{\mathrm {n}}}}\times 100 [%] \] となります。

4.電圧変動率\(\varepsilon \)
最大電圧を\(V_{\mathrm {m}}\mathrm{[kV]}\),定格電圧を\(V_{n}\mathrm{[kV]}\)とすると,電圧変動率\(\varepsilon [%]\)は,
\[
\varepsilon =\frac {V_{\mathrm {m}}-V_{\mathrm {n}}}{V_{\mathrm {n}}}\times 100 [%] \] となります。

【解答】

(1) 水車発電機の定格回転速度\(\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)
定格回転速度を\(N_{\mathrm {n}}\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)とすると,ワンポイント解説「1.定格回転速度\(N_{\mathrm {n}}\)」より,
\[
\begin{eqnarray}
N_{\mathrm {n}} &=& \frac {120f}{p} \\[ 5pt ] &=& \frac {120\times 60}{18} \\[ 5pt ] &=& 400\mathrm{[{min} ^{-1}]}
\end{eqnarray}
\] となる。

(2) 水車発電機の最大回転速度\(\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)
速度上昇率を\(\delta_{\mathrm {n}} [%]\),最大回転速度を\(N_{\mathrm {m}}\)とすると,題意より定格回転速度で遮断試験を行ったから,ワンポイント解説「2.速度上昇率\(\delta_{\mathrm {n}} \)」より,
\[
\begin{eqnarray}
&&\delta_{\mathrm {n}} &=& \frac {N_{\mathrm {m}}-N_{0}}{N_{\mathrm {n}}}\times 100 \\[ 5pt ] &⇔& 30 &=& \frac {N_{\mathrm {m}}-400}{400}\times 100 \\[ 5pt ] &⇔& N_{\mathrm {m}} &=& 520 \mathrm{[{min} ^{-1}]}
\end{eqnarray}
\] となる。

(3) 水車発電機の無負荷安定時の回転速度\(\mathrm{[{min} ^{-1}]}\)
無負荷安定時の回転速度は,ワンポイント解説「3.速度調定率\(R\)」の\(\Delta P=P_{\mathrm {n}}\)の時の回転速度であるから,
\[
\begin{eqnarray}
&&  R &=& \frac {\frac {\Delta N}{N_{\mathrm {n}}}}{\frac {\Delta P}{P_{\mathrm {n}}}}\times 100 \\[ 5pt ] &⇔&  5 &=& \frac {\frac {\Delta N}{400}}{\frac {P_{\mathrm {n}}}{P_{\mathrm {n}}}}\times 100 \\[ 5pt ] &⇔& \Delta N &=& 20 \mathrm{[{min} ^{-1}]}
\end{eqnarray}
\] となる。よって,無負荷安定時の回転速度は,
\[
400+20=420\mathrm{[{min} ^{-1}]}
\] と求められる。

(4) 発電機の定格出力\(\mathrm{[kW]}\)
理論水力が\(\mathrm{11000kW}\),水車発電機の総合効率が\(\mathrm{86}%\)であるから発電機の定格出力\(P_{\mathrm {n}}\)は,
\[
P_{\mathrm {n}}=11000\times 0.86 =9460\mathrm{[kW]}
\] となる。

(5) 発電機の定格電圧\(\mathrm{[kV]}\)
定格電圧\(V_{\mathrm {n}}\),定格電流\(I_{\mathrm {n}}\),力率\(\cos \theta \)とすると,定格出力\(P_{\mathrm {n}}\)は,
\[
P_{\mathrm {n}}=\sqrt {3}V_{\mathrm {n}}I_{\mathrm {n}}\cos \theta
\] であるから,各値を代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
&&  9460 &=& \sqrt {3}V_{\mathrm {n}}\times 517 \times 0.96\\[ 5pt ] &⇔&   V_{\mathrm {n}} &≒& 11.004 \mathrm{[kV]} → 11.0 \mathrm{[kV]} 
\end{eqnarray}
\] と求められる。

(6) 発電機の最大電圧\(\mathrm{[kV]}\)
ワンポイント解説「4.電圧変動率\(\varepsilon \)」の通り,最大電圧を\(V_{m}\mathrm{[kV]}\),定格電圧を\(V_{n}\mathrm{[kV]}\)とすると,電圧変動率\(\varepsilon [%]\)は,
\[
\varepsilon =\frac {V_{\mathrm {m}}-V_{\mathrm {n}}}{V_{\mathrm {n}}}\times 100 [%] \] となるから,各値を代入し,最大電圧を\(V_{\mathrm {m}}\)を求めると,
\[
\begin{eqnarray}
&&  25 &=& \frac {V_{\mathrm {m}}-11.004}{11.004}\times 100 \\[ 5pt ] &⇔&   V_{m} &≒& 13.755 \mathrm{[kV]} → 13.8 \mathrm{[kV]} 
\end{eqnarray}
\] と求められる。



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