《電力・管理》〈送電〉[H30:問2] 事故波及防止リレーシステムに関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

電力系統に発生した事故を事故除去リレーの働きによって高速で除去することで,通常は事故点を含む最小限の範囲の設備が停止することとなるが,系統及び事故の様相によっては,系統全体に事故の影響が波及拡大し,広範囲な停電を起こす場合があることから,事故波及防止リレーシステムが導入されている。事故によって次の(1)から(3)の事象が発生した場合に,どのような事故波及が発生する可能性があるのか,また,その事故波及を防止するために,事故波及防止リレーシステムによってどのような制御を行うのかについて,(1)から(3)のそれぞれに対し,\(100\)~\(300\)文字程度で簡潔に述べよ。

(1) 送電線等の過負荷

(2) 周波数低下

(3) 発電機の脱調

【ワンポイント解説】

一種の電力管理平成26年問4に事故波及防止リレーシステムに関する問題が出題されています。電験の場合,過去問と全く同じ問題は出題されませんが,このように過去問の類題は出題されることは多々あります。試験勉強の際には,過去問の内容+αの勉強をすると高得点が狙えると思います。

【解答】

(1)送電線等の過負荷
(ポイント)
・「\(100\)~\(300\)文字程度」となっているので,\(300\)文字弱にすることが大事であると思います。
・過負荷になる時の最大の問題は過負荷の連鎖であり,系統切替や電力調整で対応できる場合はまず系統切替や電力調整で対応し、不可能な場合は負荷遮断をすることになります。

(試験センター解答例)
事故により送電線や変圧器が停止し,他の健全設備の過負荷が発生した場合,過負荷になった設備の損壊等による事故の発生,又は,損壊等を回避するための設備停止によって,大規模な停電に至る可能性がある。また,ループ状やメッシュ状の系統では,過負荷になった設備の停止により,他の設備が過負荷となり,次々と設備停止を余儀なくされる可能性もある。
このような事故波及を防止するため,発電機出力又は負荷の抑制や遮断によって,送電線や変圧器を通過する電流を抑制する。

(2)周波数低下
(ポイント)
・周波数の低下は何らかの原因で系統全体の有効電力のアンバランス(需要過多)が生じた時に発生するものです。
・周波数の低下は過負荷の場合に比べ,発電プラントの停止が絡んで来るので,余裕時間が少なく早急に負荷遮断等の対応をする必要があります。

(試験センター解答例)
系統事故(及びその波及)により大量の電源が脱落し,大幅な需給アンバランスが生じた場合には,通常の制御では対処できない急激かつ大幅な周波数低下が発生し,これが発電プラントの安定運転限界を超過すると,連鎖的な発電機の脱落に繋がる可能性がある。
このような事故波及を防止するため,一部の負荷を遮断することで周波数の維持を図る。さらに,この対策によっても周波数の回復が困難で周波数低下状態が継続する場合には,連系系統を分離したり,適当な近傍負荷を有する局地火力系統を分離して単独系統として安定運転を維持させたりするなどにより,事故の影響による停電等が電力系統全体に及ぶことを回避する対策も採用されている。

(3)発電機の脱調
(ポイント)
・発電機の脱調は周波数や負荷の変動により,同期発電機の内部相差角が大きくなり,同期が外れてしまう現象です。
・脱調した場合は一旦系統から切り離し,脱調の連鎖を防止した後,再並列をする等の対策がなされます。

(試験センター解答例)
事故除去の遅延や失敗によって発電機が脱調に至った場合,脱調の電気的中心付近の電圧が大きく低下することから,これを放置すると,他の発電機の電気出力の低下により次なる脱調が起こるという連鎖的な脱調現象が発生する可能性がある。
このような事故波及を防止するため,発電機の脱調が予測される場合に一部の電源の遮断を行って脱調現象の発生を防止する,又は,発電機の脱調が発生した後にこれを速やかに検出して脱調の電気的中心の両端で系統を分離することでそれ以上の進展を防止するといった制御を行う。



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