《電力・管理》〈配電〉[R06:問5]分散型電源の導入に伴い配電系統の電圧に生じる問題に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

配電系統への分散型電源の導入に伴い配電系統の電圧に生じる問題について,次の問に答えよ。

(1) 分散型電源の導入拡大に伴い,分散型電源から配電系統への逆潮流が大幅に増加した場合,分散型電源が無い場合と比べて配電系統の電圧にどのような問題が生じるか,\( \ 200 \ \)字程度で説明せよ。

(2) 上記(1)の問題を解決するために,分散型電源の設置者が取り得る対策を二つ挙げて,\( \ 100 \ \)字程度で説明せよ。

(3) 上記(1)の問題を解決するために,一般送配電事業者が取り得る対策を二つ挙げて,\( \ 100 \ \)字程度で説明せよ。

【ワンポイント解説】

分散型電源の導入に伴い発生する配電系統への問題のうち,電圧に関する出題です。
\( \ 3 \ \)種や\( \ 2 \ \)種の頃から電圧降下に関する問題は多く出題されているため,分散型電源が接続されることで,本来遅れ力率においては配電系統の末端に向かい電圧が下がっていくものが,逆になるというのは容易に想像がつくかと思います。令和5年電力管理科目問5では計算問題も出題されているので,そちらも学習しておくとよりイメージが沸くかと考えられます。

1.分散型電源の大量導入に伴う課題と対策
近年の太陽光発電をはじめとする分散型電源大量導入に伴い,以下に示すような問題をはじめとする種々の問題が発生し,その対策がなされています。

①周波数の適正範囲の維持困難
分散型電源には原則出力調整機能はないため,既設の水力発電や火力発電の出力調整では周波数の維持が困難になる場合があります。
特に春や秋等の軽負荷期においては,昼間の発電電力が電力需要を上回り,相対的に出力調整可能な発電の割合が減るため,さらに周波数の調整が困難となることから一般送配電事業者が発電事業者に出力制御スケジュール配信を行うことにより出力制御する方法が取られるようになっています。

②電圧上昇
分散型電源から配電系統に逆潮流が増加すると,配電系統の電圧が上昇し,電気事業法施行規則で規定されている\( \ 101±6 \ \mathrm {V} \ \)や\( \ 202±20 \ \mathrm {V} \ \)を維持できなくなってしまいます。
その対策として,電線の太線化・専用線や負荷分割等配電系統設備を増強する方法,分散型電源のパワーコンディショナ\( \ \left( \mathrm {PCS} \right) \ \)に進み力率一定制御機能を設けて遅れ無効電力を抑制する方法,静止形無効電力補償装置\( \ \left( \mathrm {SVC} \right) \ \)により無効電力を補償する方法,ステップ式自動電圧調整器\( \ \left( \mathrm {SVR} \right) \ \)により電圧を調整する方法,等がなされています。

③高調波の発生
分散型電源は電力変換装置を用いて電力系統に連系されることが多いため,高調波が配電系統に流出する可能性があります。
その対策として,高調波発生源である電力変換装置の多パルス化により発生を抑制する方法,機器から発生した高調波電流を需要家内の設備に分流させ配電系統への流出を抑制する方法,アクティブフィルタを設けて高調波を除去する方法,等がなされています。

【解答】

(1)分散型電源から配電系統への逆潮流が大幅に増加した場合,配電系統の電圧にどのような問題が生じるか
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.分散型電源の大量導入に伴う課題と対策」の通りです。
・指定文字数が\( \ 200 \ \)字程度と比較的長めなので,送電線の抵抗やリアクタンスによる電圧変化のメカニズムの説明を加えても良いかと思います。

(試験センター解答)
分散型電源が連系されていない場合,配電系統を流れる電流は配電用変電所から負荷側に向かい,インピーダンスによる電圧降下のため,末端に行くほど電圧は低下する。しかし配電系統に分散型電源が連系され,その分散電源から配電系統への逆潮流が大幅に増加した場合,配電線の電流の向きが変電所側に向かい,電圧の分布が変化する。変電所側に向かう電流が大きいと,配電線の末端に向けて電圧が上昇し,規定された電圧を逸脱する問題が生じる。

(2)分散型電源の設置者が取り得る対策二つ
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.分散型電源の大量導入に伴う課題と対策」の通りです。
・試験センター解答には記載がありませんが,蓄電システムの導入も有効な対策として加点対象となるかと考えられます。

(試験センター解答)
・分散型電源で発生した電力を同一構内で自家消費することにより,配電系統に発生する逆潮流を低減させ,電圧上昇を抑制する。
・分散型電源の\( \ \mathrm {PCS} \ \)に進み力率一定制御機能を付加することにより,配電系統における無効電力を適正に保ち,電圧上昇を抑制する。

(3)一般送配電事業者が取り得る対策二つ
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.分散型電源の大量導入に伴う課題と対策」の通りです。

(試験センター解答)
・配電線の太線化によるインピーダンス低減,配電線新設による系統分割,専用線による連系等により,電圧上昇を抑制する。
・配電線の途中に,無効電力を調整する静止形無効電力補償装置\( \ \left( \mathrm {SVC} \right) \ \)や,電圧を調整するステップ式自動電圧調整器\( \ \left( \mathrm {SVR} \right) \ \)等を施設し,電圧上昇を抑制する。



記事下のシェアタイトル