【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,我が国の電力系統の周波数調整に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。
図は系統の負荷変動の大きさと,周波数を維持するための周波数制御の分担を表した概念図である。この図中で\( \ \fbox { (1) } \ \)は長周期の負荷変動分に対応し,日負荷曲線からある程度予測できるので,ベース調整分として予測値に対応する発電機出力をあらかじめ自動で指令しておく。
\( \ \fbox { (1) } \ \)よりも短周期の変動分については,系統の周波数と基準周波数の偏差を検出して,図中\( \ \fbox { (2) } \ \)による調整を\( \ \fbox { (3) } \ \)で実施する。この\( \ \fbox { (2) } \ \)は時々刻々変動する需要と供給力との差を周波数変化としてとらえ,発電機の出力の増減を短時間で実施し,これを許容範囲に収める制御である。
\( \ \fbox { (2) } \ \)よりも短周期の微小変動分には発電機のガバナフリーにより吸収する。火力発電所のタービンや水力発電所の水車の速度制御を行う。この発電機の出力変化量と周波数変化量との関係は発電機周波数特性定数で表され,通常\( \ \fbox { (4) } \ \left[ %\mathrm {MW}/0.1\mathrm {Hz} \right] \ \)程度である。
さらに微小な調整は図中にもある,系統の\( \ \fbox { (5) } \ \)で吸収される。これは負荷は周波数が上がると消費電力が\( \ \fbox { (6) } \ \)し,周波数が下がると逆になるという特性を持っているためである。
図における横軸は時間を示しており,単位は\( \ \fbox { (7) } \ \)である。
〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 経済負荷配分制御(\mathrm {ELD}) &(ロ)& 自己制御 \\[ 5pt ]
&(ハ)& 秒 &(ニ)& 周波数比較法(\mathrm {FCM}) \\[ 5pt ]
&(ホ)& 電力融通 &(ヘ)& 個別制御 \\[ 5pt ]
&(ト)& 周波数分割多重制御(\mathrm {FDM}) &(チ)& 水力主体制御 \\[ 5pt ]
&(リ)& 飽 和 &(ヌ)& 1.0 \\[ 5pt ]
&(ル)& 分 &(ヲ)& 中央制御 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 時 &(カ)& 増 加 \\[ 5pt ]
&(ヨ)& 過運転 &(タ)& 0.1 \\[ 5pt ]
&(レ)& 10.0 &(ソ)& 減 少 \\[ 5pt ]
&(ツ)& 選択周波数制御(\mathrm {SFC}) &(ネ)& 負荷周波数制御(\mathrm {LFC}) \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
給電の電力(周波数)調整に関する問題です。電験一種なのである程度は仕方がありませんが,電力会社の方が圧倒的有利な問題となっています。
1.電力調整方法
①短周期変動(数秒~数分の変動)
発電系統のガバナフリー運転で自動調整します。例えば火力発電所であったら,タービンの入口の開度周波数が低い場合はガバナ開度を増加,周波数が高い場合は開度を減少させて蒸気流入量を調整します。
②長周期変動(数分~数\( \ 10 \ \)分の変動)
中央給電指令所からの制御信号に伴い,負荷周波数制御(\( \ \mathrm {LFC} \ \))で調整します。火力発電所であれば,変動に合わせ自動制御で出力をコントロールさせます。
③日負荷変動(数\( \ 10 \ \)分~数時間の変動)
天候,気温,湿度等のデータを元に需要予測を決定し,出力配分を各発電所の信号へ送ります。経済負荷配分制御(\( \ \mathrm {ELD} \ \))により最も経済的な配分を行い,各発電機の出力調整,起動停止等を行います。
【解答】
(1)解答:イ
題意より,解答候補は(イ)経済負荷配分制御(\( \ \mathrm {ELD} \ \)),(ロ)自己制御,(ニ)周波数比較法(\( \ \mathrm {FCM} \ \)) ,(ヘ)個別制御,(ト)周波数分割多重制御(\( \ \mathrm {FDM} \ \)),(チ)水力主体制御,(ヲ)中央制御,(ツ)選択周波数制御(\( \ \mathrm {SFC} \ \)),(ネ)負荷周波数制御(\( \ \mathrm {LFC} \ \)),になると思います。今回の文面では数時間の変動に関する内容なので名前は長周期変動となっていますが,解答は(イ)経済負荷配分制御(\( \ \mathrm {ELD} \ \))となります。
(2)解答:ネ
題意より,解答候補は(イ)経済負荷配分制御(\( \ \mathrm {ELD} \ \)),(ロ)自己制御,(ニ)周波数比較法(\( \ \mathrm {FCM} \ \)) ,(ヘ)個別制御,(ト)周波数分割多重制御(\( \ \mathrm {FDM} \ \)),(チ)水力主体制御,(ヲ)中央制御,(ツ)選択周波数制御(\( \ \mathrm {SFC} \ \)),(ネ)負荷周波数制御(\( \ \mathrm {LFC} \ \)),になると思います。問題文で「系統の周波数と基準周波数の偏差を検出して」となっているので,(ネ)負荷周波数制御(\( \ \mathrm {LFC} \ \))となります。
(3)解答:ヲ
題意より,解答候補は(ロ)自己制御,(ヘ)個別制御,(チ)水力主体制御,(ヲ)中央制御,等になると思います。ワンポイント解説「1.電力調整方法」の通り,負荷周波数制御(\( \ \mathrm {LFC} \ \))での調整は中央給電指令所からの中央制御となります。
(4)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ヌ)\( \ 1.0 \ \),(タ)\( \ 0.1 \ \),(レ)\( \ 10.0 \ \),になると思います。出力変化量と周波数変化量との関係は約\( \ 1.0 \ \left[ %\mathrm {MW}/0.1\mathrm {Hz} \right] \ \)となります。
(5)解答:ロ
題意より,解答候補は(イ)経済負荷配分制御(\( \ \mathrm {ELD} \ \)),(ロ)自己制御,(ニ)周波数比較法(\( \ \mathrm {FCM} \ \)) ,(ヘ)個別制御,(ト)周波数分割多重制御(\( \ \mathrm {FDM} \ \)),(チ)水力主体制御,(ヲ)中央制御,(ツ)選択周波数制御(\( \ \mathrm {SFC} \ \)),(ネ)負荷周波数制御(\( \ \mathrm {LFC} \ \)),になると思います。短周期変動より短い変動は自己制御によって周波数が一定に保たれます。
(6)解答:カ
題意より,解答候補は(カ)増加,または(ソ)減少,になると思います。自己制御は周波数が上がると消費電力が増加し,周波数が下がると消費電力が減少するメカニズムを利用して行われる制御です。電圧でも同じように制御されます。
(7)解答:ル
題意より,解答候補は(ハ)秒,(ル)分,(ワ)時,になると思います。ワンポイント解説「1.電力調整方法」の通り,最も適当なのは(ル)分であることが分かります。