《法規》〈電気施設管理〉[R01:問3]電圧・無効電力制御に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電力系統における電圧・無効電力制御に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

電力系統の電圧は,需要と供給力の変化に伴い絶えず変動する。電圧が変動すると,需要家の各種電気機器の正常な使用あるいは寿命などに影響を与えるため,電気事業法施行規則で,電気を供給する場所において,標準電圧\( \ 100 \ \mathrm {V} \ \)の回路では\( \ 101±6 \ \mathrm {V} \ \),\( \ 200 \ \mathrm {V} \ \)の回路では\( \ 202±20 \ \mathrm {V} \ \)をそれぞれ超えない値に維持すべきと定められている。

そのため電力供給側においては,系統各所の電圧を,一般的に標準電圧の\( \ ±5 \ \mathrm {%} \ \)以内に保つよう,発電機の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)や変圧器の負荷時タップ切換装置などを使用し電圧・無効電力制御が行われている。

例えば,発電所においては,同期発電機の励磁を強めて内部誘導起電力を高め,電力系統側の電圧より高くすることにより,電力系統側から同期発電機に\( \ \fbox {  (2)  } \ \)電流が流れ,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を投入したことと同等の制御が行われている。

変電所においては,下位の系統の電圧が適正になるよう,変圧器の二次側(負荷側)に目標とする電圧を定め,主要変圧器のタップを手動又は自動で切り換えて電圧調整を行っている。一般的には,重負荷である昼間は二次側の目標とする電圧を\( \ \fbox {  (4)  } \ \)定めている。

その他,サイリスタの位相制御により,無効電力を連続的に,また高速に制御できる\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を変電所などに設置し,系統電圧を一定範囲に維持している。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 負荷時電圧調整器       &(ロ)& 同相 \\[ 5pt ] &(ハ)& パワーコンディショナ       &(ニ)& 電力用コンデンサ \\[ 5pt ] &(ホ)& ロータリーコンデンサ       &(ヘ)& 誘導電圧調整器 \\[ 5pt ] &(ト)& 分路リアクトル       &(チ)& 高く \\[ 5pt ] &(リ)& 進相       &(ヌ)& 標準電圧に \\[ 5pt ] &(ル)& 遅相       &(ヲ)& 静止形無効電力補償装置 \\[ 5pt ] &(ワ)& 低く       &(カ)& 中性点接地抵抗器 \\[ 5pt ] &(ヨ)& 自動電圧調整装置 &&\\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

専門書を紐解けばなぜ周波数の調整≒有効電力の調整,電圧の調整≒無効電力の調整であることがわかりますので興味のある方はぜひ勉強して下さい。電験ではその計算を問われることはありません。一方で,電験では本問のように周波数及び電圧をどのように調整するかが重要となります。よく理解しておくようにしましょう。

1.調相設備の種類
代表的な無効電力の調相設備には次の4種類があり,それぞれ下表のような特徴があります。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}
\hline
& 電力用コンデンサ & 分路リアクトル & 同期調相機 & 静止形無効電力補償装置\\
& & & & \mathrm {SVC}\\
\hline
調整能力 & 進相電力を吸収 & 遅相電力を吸収 & 遅れから進みまで調整 & 遅れから進みまで調整 \\
\hline
調整 & 段階的 & 段階的 & 連続的 & 連続的 \\
\hline
コスト & 安 & 安 & 高 & 高 \\
\hline
保守性 & 容易 & 容易 & 頻雑 & 容易 \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

(1)解答:ヨ
題意より,解答候補は(イ)負荷時電圧調整器,(ハ)パワーコンディショナ,(ヘ)誘導電圧調整器,(ヲ)静止形無効電力補償装置,(カ)中性点接地抵抗器,(ヨ)自動電圧調整装置,等になると思います。発電機側で電圧を調整するのは自動電圧調整装置(AVR:Automatic Voltage Regulator)と呼ばれる装置です。

(2)解答:リ
題意より,解答候補は(ロ)同相,(リ)進相,(ル)遅相,となると思います。発電機側の電圧を高めることにより,電力系統側から発電機に流れる電流は進相電流となります。

(3)解答:ニ
題意より,解答候補は(ニ)電力用コンデンサ,(ホ)ロータリーコンデンサ,(ト)分路リアクトル,等となると思います。発電機側の電圧を高めることで,電力系統側から発電機に流れる進相電流を消費するのは電力用コンデンサです。

(4)解答:チ
題意より,解答候補は(チ)高く,(ヌ)標準電圧に,(ワ)低く,となると思います。送電電力量が電圧の2乗に比例すること,送電損失が減少すること,系統の電圧安定性向上等の理由のため,一般的に重負荷時は電圧を高めにします。

(5)解答:ヲ
題意より,解答候補は(イ)負荷時電圧調整器,(ハ)パワーコンディショナ,(ヘ)誘導電圧調整器,(ヲ)静止形無効電力補償装置,(ヨ)自動電圧調整装置,等になると思います。サイリスタの位相制御により,無効電力を連続的に,また高速に制御できるのは静止形無効電力補償装置(SVC:Static Var Compensator)となります。

<電気事業法施行規則第38条>
法第二十六条第一項(法第二十七条の二十六第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の経済産業省令で定める電圧の値は、その電気を供給する場所において次の表の上欄に掲げる標準電圧に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。
\[
\begin{array}{|c|c|}
\hline
\bf {標準電圧} & \bf {維持すべき値} \\
\hline
\bf {百ボルト} & \bf {百一ボルトの上下六ボルトを超えない値} \\
\hline
\bf {二百ボルト} & \bf {二百二ボルトの上下二十ボルトを超えない値} \\
\hline
\end{array}
\]

2 法第二十六条第一項の経済産業省令で定める周波数の値は、その者が供給する電気の標準周波数に等しい値とする。



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