《法規》〈電気施設管理〉[H22:問6]電力系統の信頼度に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,電力系統の信頼度に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句,式又は数値を解答群の中から選びなさい。なお,考慮する電力系統において,発電機端から負荷端までにおける電力損失は無視するものとする。

a.電力系統の信頼度を評価する場合,事故による供給支障の確率を用いることがある。供給設備からみた場合,\( \ n \ \)台の同一仕様の発電機からなる電源で,発電機\( \ 1 \ \)台当たりの事故停止確率が\( \ s \ \)であるとき,同時に発電機\( \ k \ \)台が事故停止している(残りの\( \ \left( n-k\right) \ \)台の発電機は健全である)確率\( \ p_{k} \ \)は,下式で表わされる。
\[
\begin{eqnarray}
p_{k}&=&{}_n \mathrm{ C }_k\cdot \ \fbox {  (1)  } \   ただし,{}_n \mathrm{ C }_k =\frac {n!}{k!\left( n-k\right) !} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] これによれば,発電機\( \ 3 \ \)台の電力系統において,発電機\( \ 1 \ \)台当たりの事故停止確率が\( \ 0.05 \ \)であるとき,同時に発電機\( \ 2 \ \)台が事故停止している(残りの\( \ 1 \ \)台の発電機は健全である)確率は,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)となる。

b.負荷からみた場合,供給支障事故が起きる確率と,事故による供給支障電力の大きさの確率とが重要であることから,それぞれ以下の式で表わす電力不足確率,電力量不足確率が用いられている。
\[
\begin{eqnarray}
電力不足確率&=&\frac {\Large {\Sigma } \normalsize { \ \fbox {  (3)  } \ }  }{考察期間の時間} \\[ 5pt ] 電力量不足確率&=&\frac {\Large {\Sigma } \normalsize { \left( 供給支障電力 \times \ \fbox {  (3)  } \ \right) }  }{考察期間の負荷電力量} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

c.出力\( \ 100 \ \mathrm {[MW]} \ \)の発電機\( \ 3 \ \)台から,負荷電力\( \ 250 \ \mathrm {[MW]} \ \)に供給している電力系統において,発電機が事故停止すれば,残った発電機出力が負荷電力を下回る分だけ供給支障が発生するものとする。発電機\( \ 1 \ \)台当たりの事故停止確率が\( \ 0.05 \ \)であり,発電機から負荷までの送配電設備の事故停止確率は\( \ 0 \ \)とすれば,この系統の負荷の電力不足確率は,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)となる。

d.上記cと同じ電力系統と考慮条件において,この系統の負荷の電力量不足確率は,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)となる。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 0.158     &(ロ)& 0.143     &(ハ)& 0.0381 \\[ 5pt ] &(ニ)& 0.0315     &(ホ)& s^{k}\cdot \left( 1-s\right) ^{n-k}     &(ヘ)& 運転持続時間 \\[ 5pt ] &(ト)& 0.00750     &(チ)& 0.00713     &(リ)& 0.174 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 0.00790     &(ル)& \frac {s^{k}}{\left( 1-s\right) ^{n-k}}     &(ヲ)& 0.0346 \\[ 5pt ] &(ワ)& s^{k}      &(カ)& 運転時間     &(ヨ)& 停電時間 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電力系統の信頼度に関する問題です。
電験ではあまり出題されていない内容なので,高校生の頃に確率の勉強をしっかりとされていた方が有利かなという問題です。理解してしまえばそれほど難解ではありませんが,受験生には少し厳しい問題であったかもしれません。

1.順列と組合せ
①順列
いくつかの物を\( \ 1 \ \)列に並べる並べ方をいいます。例えば\( \ n \ \)個の物を\( \ k \left( n≧k\right) \ \)個並べるときの並べ方は,\( \ 1 \ \)個目が\( \ n \ \)通り,\( \ 2 \ \)個目が\( \ \left( n-1\right) \ \)通り,\( \ 3 \ \)個目が\( \ \left( n-2\right) \ \)通り,\( \ \cdots \ \),となるので,記号\( \ {}_n \mathrm{ P }_k \ \)を用いて,
\[
\begin{eqnarray}
{}_n \mathrm{ P }_k&=&n\left( n-1\right) \left( n-2\right) \cdots \left( n-k+1\right) \\[ 5pt ] &=&\frac {n\left( n-1\right) \left( n-2\right) \cdots 2\cdot 1}{\left( n-k\right)\left( n-k-1\right) \cdots 2\cdot 1 } \\[ 5pt ] &=&\frac {n!}{\left( n-k\right) ! } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で表せます。

②組合せ
いくつかの物から異なるいくつかの物をとる取り方をいいます。例えば\( \ n \ \)個の物から\( \ k \left( n≧k\right) \ \)個取る組合せは,順列\( \ {}_n \mathrm{ P }_k \ \)の並べ方が\( \ k\left( k-1\right) \left( k-2\right) \cdots 2\cdot 1 \ \)個できるので,記号\( \ {}_n \mathrm{ C }_k \ \)を用いて,
\[
\begin{eqnarray}
{}_n \mathrm{ C }_k&=&\frac {n\left( n-1\right) \left( n-2\right) \cdots \left( n-k+1\right) }{k\left( k-1\right) \left( k-2\right) \cdots 2\cdot 1} \\[ 5pt ] &=&\frac {n\left( n-1\right) \left( n-2\right) \cdots 2\cdot 1}{k\left( k-1\right) \left( k-2\right) \cdots 2\cdot 1\cdot \left( n-k\right)\left( n-k-1\right) \cdots 2\cdot 1 } \\[ 5pt ] &=&\frac {n!}{k! \left( n-k\right)!} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で表せます。

2.反復試行の確率
サイコロを連続して何回も振り続けて\( \ 1 \ \)が何回か出る確率を求める際や同じ故障率の機械が何台か壊れる確率を求める際等に用いる確率で,ある事象が起こる確率を\( \ s \ \)とし,それを\( \ n \ \)回実施したときに\( \ k\left( n≧k\right) \ \)回発生する確率\( \ p_{k} \ \)は,\( \ n \ \)回実施したときに\( \ k \ \)回発生する組合せが\( \ {}_n \mathrm{ C }_k \ \)で\( \ k \ \)回は\( \ s \ \)の確率,\( \ \left( n-k\right) \ \)回は\( \ \left( 1-s\right) \ \)の確率で発生したことになるから,
\[
\begin{eqnarray}
p_{k}&=&{}_n \mathrm{ C }_k\cdot s^{k}\left( 1-s\right)^{n-k} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

3.電力不足確率と電力量不足確率
負荷から見たときの,供給支障事故が起こる時間の確率を電力不足確率,供給支障電力量の大きさの確率を電力量不足確率といい,
\[
\begin{eqnarray}
電力不足確率&=&\frac {\Sigma 停電時間   }{考察期間の時間} \\[ 5pt ] 電力量不足確率&=&\frac {\Sigma \left( 供給支障電力 \times 停電時間 \right)      }{  考察期間の負荷電力量  } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。電力不足確率は単純な停電時間の割合,電力量不足確率は停電の規模を定量的に表すことが可能となります。

【解答】

(1)解答:ホ
\( \ n \ \)台の同一仕様の発電機からなる電源で,発電機\( \ 1 \ \)台当たりの事故停止確率が\( \ s \ \)であるとき,同時に発電機\( \ k \ \)台が事故停止している確率\( \ p_{k} \ \)は,ワンポイント解説「2.反復試行の確率」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
p_{k}&=&{}_n \mathrm{ C }_k\cdot s^{k}\cdot \left( 1-s\right) ^{n-k} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(2)解答:チ
(1)より,発電機\( \ 3 \ \)台の電力系統において,発電機\( \ 1 \ \)台当たりの事故停止確率が\( \ 0.05 \ \)であるとき,同時に発電機\( \ 2 \ \)台が事故停止している確率\( \ p_{2} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
p_{2}&=&{}_3 \mathrm{ C }_2\cdot 0.05^{2}\cdot \left( 1-0.05\right) ^{3-2} \\[ 5pt ] &=&\frac {3\times 2\times 1}{1\times 2\times 1}\times 0.05^{2}\times \left( 1-0.05\right) \\[ 5pt ] &=&0.007125 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ヘ)運転持続時間,(カ)運転時間,(ヨ)停電時間,になると思います。
ワンポイント解説「3.電力不足確率と電力量不足確率」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
電力不足確率&=&\frac {\Sigma 停電時間   }{考察期間の時間} \\[ 5pt ] 電力量不足確率&=&\frac {\Sigma \left( 供給支障電力 \times 停電時間 \right)      }{  考察期間の負荷電力量  } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

(4)解答:ロ
問題文の条件において,供給支障が発生しないのは全台運転しているときのみとなる。したがって,全台が正常運転している確率が\( \ \left( 1-0.05\right)^{3} \ \)なので,電力不足確率は,
\[
\begin{eqnarray}
電力不足確率&=&1-\left( 1-0.05\right)^{3} \\[ 5pt ] &≒&0.143 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ニ
発電機\( \ 1 \ ~ \ 3 \ \)台が停止したときの供給支障電力\( \ P_{\mathrm {d1}} \ ~ \ P_{\mathrm {d3}} \ \mathrm {[MW]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {d1}}&=&250-200 \\[ 5pt ] &=&50 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ] P_{\mathrm {d2}}&=&250-100 \\[ 5pt ] &=&150 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ] P_{\mathrm {d3}}&=&250-0 \\[ 5pt ] &=&250 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,それぞれの起こる確率\( \ p_{1} \ ~ \ p_{3} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
p_{1}&=&{}_3 \mathrm{ C }_1\cdot 0.05^{1}\cdot \left( 1-0.05\right) ^{3-1} \\[ 5pt ] &=&\frac {3\times 2\times 1}{1\times 2\times 1}\times 0.05\times \left( 1-0.05\right) ^{2} \\[ 5pt ] &=&0.135375 \\[ 5pt ] p_{2}&=&{}_3 \mathrm{ C }_2\cdot 0.05^{2}\cdot \left( 1-0.05\right) ^{3-2} \\[ 5pt ] &=&\frac {3\times 2\times 1}{2\times 1\times 1}\times 0.05^{2}\times \left( 1-0.05\right) \\[ 5pt ] &=&0.007125 \\[ 5pt ] p_{3}&=&{}_3 \mathrm{ C }_3\cdot 0.05^{3}\cdot \left( 1-0.05\right) ^{3-3} \\[ 5pt ] &=&1\times 0.05^{3}\times 1 \\[ 5pt ] &=&0.000125 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,電力量不足確率は,
\[
\begin{eqnarray}
電力量不足確率&=&\frac {P_{\mathrm {d1}}p_{1}+P_{\mathrm {d2}}p_{2}+P_{\mathrm {d3}}p_{3}}{250\times 1} \\[ 5pt ] &=&\frac {50\times 0.135375+150\times 0.007125+250\times 0.000125}{250\times 1} \\[ 5pt ] &=&0.031475 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



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