《法規》〈電気施設管理〉[R07:問6]電圧フリッカの発生原因と対策に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電圧フリッカに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

\( \ \mathrm {a)} \ \) 製鉄用アーク炉などの負荷を,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の小さい系統に接続した場合,無効電力の変動により母線電圧が連続的に短い周期で不規則に変動する。これを電圧フリッカと呼ぶ。この場合,同じ変電所から供給される一般需要家の電灯,蛍光灯などの照明,テレビにちらつきを生じ,見ている人に不快感を与える場合がある。電圧フリッカは,電気溶接機,電動機の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)電流によっても発生するが,アーク炉によるものが著しい。

電圧フリッカの防止には,次のような対策がある。

 ① \( \ \fbox {  (1)  } \ \)の大きい系統から供給する。又は,一段電圧階級の高い系統から供給する。

 ② 一般負荷と分離するため,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の変圧器又は\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の送電線で供給する。

 ③ アーク炉の電流変動を抑制するため,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)又は可飽和リアクトルを挿入する。

 ④ 静止型無効電力補償装置を設置し,アーク炉の無効電力変動分を吸収する。

\( \ \mathrm {b)} \ \) 近年の太陽光発電などの分散型電源の大量連系に伴い,春季・秋季やゴールデンウィーク・年末年始など電力需要が少ないときに,晴天で太陽光発電設備の出力が増加すると,その分需給バランス上\( \ \fbox {  (5)  } \ \)発電機の多くを停止せざるを得なくなっている。このため,短絡インピーダンスが\( \ \fbox {  (6)  } \ \)なり,わずかな無効電力の変動でも系統電圧が大きく変動する。 

太陽光発電設備は,逆潮流有りで連系するには,保安確保や事故被害拡大防止のため\( \ \fbox {  (7)  } \ \)防止機能を設ける必要がある。この場合,低圧配電線に連系する太陽光発電設備を転送遮断方式で制御するには制御対象数が多過ぎて現実的に困難であり,周波数変化率等の検出による受動的方式と,周波数変動等を与えたときの応動を検出する能動的方式を組み合わせている。

最近では,無効電力を注入したときの応動を検出する新型能動的方式の太陽光発電設備が大量に系統連系され,系統への無効電力の注入量が増加して,電圧変動を助長することとなり,電力系統と分散型電源間の無効電力の発振による電圧フリッカの発生が顕在化してきている。

このため,周波数フィードバック制御の\( \ \fbox {  (8)  } \ \)の下げ設定や無効電力発振抑制機能を具備したパワーコンディショナ\( \ \mathrm {(PCS)} \ \)の使用などの対策がとられている。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 短絡容量      &(ロ)& 脱調     &(ハ)& 直列リアクトル \\[ 5pt ] &(ニ)& 定常     &(ホ)& 周波数特性定数       &(ヘ)& ゲイン \\[ 5pt ] &(ト)& 事故波及     &(チ)& 誘導     &(リ)& 専用 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 励磁     &(ル)& 検出レベル     &(ヲ)& 共用 \\[ 5pt ] &(ワ)& 風力     &(カ)& 同期     &(ヨ)& 分路リアクトル \\[ 5pt ] &(タ)& 充電容量     &(レ)& 単独運転     &(ソ)& 小さく \\[ 5pt ] &(ツ)& 大きく     &(ネ)& 始動     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電圧フリッカに関する問題です。
電圧フリッカは電験でも何度も取り扱われたことがある必須の知識となりますので,多くの受験生が高得点を得た問題かと思います。後半の太陽光発電に関する内容は少し発展的な内容を含みますが,これまでに学んだ様々な知識を駆使して解いていって下さい。

1.電圧フリッカ
①電圧フリッカの発生源及び原因
送配電線に製鉄用アーク溶解炉や溶接機など負荷変動の大きい負荷を短絡容量の小さい系統に接続すると,負荷電流変化による線路の電圧降下の変化の繰り返しにより,電圧変動が生じます。
短絡容量\( \ P_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[V\cdot A]} \ \)は,定格容量\( \ P_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[V\cdot A]} \ \),線路の百分率インピーダンス\( \ %Z \ \mathrm {[%]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {s}} &=&\frac {P_{\mathrm {n}}}{%Z}\times 100 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められ,線路のインピーダンスに反比例します。線路のインピーダンスが大きいほど電圧変動は大きくなるため,短絡容量が小さいほど電圧変動は大きくなります。

②電圧フリッカによる影響
電球や蛍光灯等の照明機器にちらつきが生じます。
特に電圧変動の周波数が\( \ 10 \ \mathrm {[Hz]} \ \)程度のときに人が感知しやすいです。フリッカの認識率は電圧降下の大きさが大きくなるほど増加し,\( \ 0.4~0.5 \ \mathrm {[V]} \ \)程度で\( \ 50 \ \mathrm {[%]} \ \)の人にちらつきがあると認識されることから,これを最大値として抑制するのが望ましいとされています。

③電圧フリッカの対策
・短絡容量の大きい系統から受電する
・配電用変圧器の容量を大きくし,線路インピーダンスを減少させる
・アーク溶解炉や溶接機を専用線もしくは専用変圧器とする
・電源側に直列コンデンサを設置する
・負荷側に無効電力補償装置(\( \ \mathrm {SVC} \ \))を設置する
・負荷側に直列リアクトルと同期調相機を挿入し,無効電力変動を同期調相機で吸収する
・アーク溶解炉の供給回路に可飽和リアクトルを設置する

【解答】

(1)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)短絡容量,(ホ)周波数特性定数,(タ)充電容量,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電圧フリッカ」の通り,電圧フリッカは短絡容量が小さい系統に接続した場合に発生しやすいです。

(2)解答:ネ
題意より解答候補は,(ニ)定常,(チ)誘導,(ヌ)励磁,(ネ)始動,等になると思います。
電圧フリッカは,短時間の電流変動により発生するため,電動機の始動電流によっても発生します。

(3)解答:リ
題意より解答候補は,(リ)専用,(ヲ)共用,になると思います。
ワンポイント解説「1.電圧フリッカ」の通り,専用の変圧器又は専用の送電線で供給することで電圧フリッカを防止することができます。

(4)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)直列リアクトル,(ヨ)分路リアクトル,になると思います。
ワンポイント解説「1.電圧フリッカ」の通り,直列リアクトルを挿入することで電圧フリッカを防止することができます。

(5)解答:カ
題意より解答候補は,(チ)誘導,(ワ)風力,(カ)同期,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電圧フリッカ」の通り,太陽光発電設備の出力が増加すると,需給バランス上水力や火力等の同期発電機を停止せざるを得なくなっています。

(6)解答:ツ
題意より解答候補は,(ソ)小さく,(ツ)大きく,になると思います。
ワンポイント解説「1.電圧フリッカ」の通り,太陽光発電設備の出力が増加すると,短絡インピーダンスが大きくなり,わずかな無効電力の変動でも系統電圧が大きく変動します。

(7)解答:レ
題意より解答候補は,(ロ)脱調,(ト)事故波及,(レ)単独運転,等になると思います。
電気設備の技術基準の解釈第227条や第229条で規定されている通り,太陽光発電設備は,逆潮流有りで連系するには,保安確保や事故被害拡大防止のため単独運転防止機能を設ける必要があります。

(8)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ホ)周波数特性定数,(ヘ)ゲイン,(ル)検出レベル,等になると思います。
電圧フリッカの対策として,周波数フィードバック制御のゲインの下げ設定をすることが効果的となります。

<電気設備の技術基準の解釈第227条(抜粋)>
低圧の電力系統に分散型電源を連系する場合は,次の各号により,異常時に分散型電源を自動的に解列するための装置を施設すること。

一 次に掲げる異常を保護リレー等により検出し,分散型電源を自動的に解列すること。

 イ 分散型電源の異常又は故障

 ロ 連系している電力系統の短絡事故,地絡事故又は高低圧混触事故

 ハ 分散型電源の(7)単独運転又は逆充電



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