《法規》〈電気施設管理〉[H24:問4]供給予備力を考慮した発電機の出力配分に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,供給予備力を考慮した発電機の出力配分に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

ある電力系統には,表に示す\( \ \mathrm {G1} \ \)から\( \ \mathrm {G6} \ \)の発電機があり,\( \ \mathrm {G1} \ \)は最大容量の出力で一定運転の制約がある発電機,\( \ \mathrm {G2} \ \)は最低運転出力から最大容量までの任意の出力で一定運転の制約がある発電機であり,その他の\( \ \mathrm {G3} \ \)から\( \ \mathrm {G6} \ \)は最低運転出力から最大容量までの範囲で調整運転が可能な発電機である。なお,\( \ \mathrm {G3} \ \)を揚水動力として運転するときは,発電の最大容量と等しい負荷電力で運転するものとする。
\[
\begin{array}{cccc}
   &        &     & 単位:\mathrm {[MW]} \\
\end{array}
\] \[
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
発電機 & 種 別 & 最大容量 & 最低運転出力 \\
\hline
\mathrm {G1} & 出力一定運転 & 300 & - \\
\hline
\mathrm {G2} & 出力一定運転 & 200 & 80 \\
\hline
\mathrm {G3} & 揚水式発電 & 100 & 10 \\
\hline
\mathrm {G4} & 調整運転 & 350 & 35 \\
\hline
\mathrm {G5} & 調整運転 & 250 & 25 \\
\hline
\mathrm {G6} & 調整運転 & 150 & 15 \\
\hline
\end{array}
\] この電力系統に並列する発電機は,不意にいずれか\( \ 1 \ \)機が脱落したときでも、残りの運転中の発電機で出力を上げて,脱落前と同じ発電電力を保つことが必要である。したがって,運転中の発電機の総出力は,各発電機の最大容量の合計から調整マージン(上げ余力)を差し引いた出力しか出すことができない。この条件で,次の負荷状況における発電機の運転出力及び供給できる負荷電力は次のとおりである。

a.負荷が最大のとき,全発電機を運転し,\( \ \mathrm {G1} \ \)と\( \ \mathrm {G2} \ \)を最大出力一定とする場合,調整運転する\( \ \mathrm {G3} \ \)から\( \ \mathrm {G6} \ \)の合計出力は,上げ余力を確保して最大\( \ \fbox {  (1)  } \ \mathrm {[MW]} \ \)であり,この系統が供給できる最大電力は\( \ \fbox {  (2)  } \ \mathrm {[MW]} \ \)である。

b.負荷が減少するのに合わせて,\( \ \mathrm {G3} \ \)を停止し,\( \ \mathrm {G1} \ \)は最大出力一定,\( \ \mathrm {G2} \ \)を最低出力とし,その他の発電機は上げ余力を確保しながら台数を調整して運転することとすれば,この系統が供給できる最大電力は\( \ \fbox {  (3)  } \ \mathrm {[MW]} \ \),最小電力は\( \ \fbox {  (4)  } \ \mathrm {[MW]} \ \)である。

c.負荷が最小となるとき,\( \ \mathrm {G3} \ \)は揚水運転して,\( \ \mathrm {G1} \ \)は最大出力一定,\( \ \mathrm {G2} \ \)を最低出力とし,その他の発電機は上げ余力を確保しながら最小限の台数で運転することとすれば,この系統が供給できる最小電力は\( \ \fbox {  (5)  } \ \mathrm {[MW]} \ \)である。ただし,\( \ \mathrm {G3} \ \)は発電に切り替えできないものとする。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 295     &(ロ)& 305     &(ハ)& 315 \\[ 5pt ] &(ニ)& 395     &(ホ)& 415     &(ヘ)& 420 \\[ 5pt ] &(ト)& 450     &(チ)& 500     &(リ)& 550 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 780     &(ル)& 830     &(ヲ)& 900 \\[ 5pt ] &(ワ)& 1 \ 000       &(カ)& 1 \ 050       &(ヨ)& 1 \ 150 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

系統運用における発電機の出力配分に関する問題です。
受験生にその場で考えさせ,読解能力や論理的思考能力を見るいかにも\( \ 1 \ \)種らしい問題と言えます。
落ち着いて一つ一つ条件を整理することが肝になります。

【解答】

(1)解答:チ
\( \ \mathrm {G3} \ \)から\( \ \mathrm {G6} \ \)の合計最大出力は,\( \ \mathrm {G3} \ \)から\( \ \mathrm {G6} \ \)の最大容量の合計から,最も大きい容量である\( \ \mathrm {G4} \ \)の\( \ 350 \ \mathrm {[MW]} \ \)を上げ余力として差し引いた出力となる。したがって,
\[
\begin{eqnarray}
\left( 100+350+250+150 \right) -350 &=&500 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(2)解答:ワ
(1)より,\( \ \mathrm {G1} \ \)と\( \ \mathrm {G2} \ \)を最大出力一定として,系統が供給できる最大電力は,
\[
\begin{eqnarray}
300+200+500 &=&1 \ 000 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)解答:ヌ
題意に沿って,最大電力時の各出力を整理すると下表のようになる。ただし,\( \ \mathrm {G4} \ \)から\( \ \mathrm {G6} \ \)の合計において下表から上げ余力を確保する必要がある。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
発電機 & 種 別 & 最大出力 & 出力 \\
\hline
\mathrm {G1} & 出力一定運転 & 300 & 300 \\
\hline
\mathrm {G2} & 出力一定運転 & 200 & \color{red}{80} \\
\hline
\mathrm {G3} & 揚水式発電 & 100 & \color{red}{0} \\
\hline
\mathrm {G4} & 調整運転 & 350 & \color{red}{350} \\
\hline
\mathrm {G5} & 調整運転 & 250 & \color{red}{250} \\
\hline
\mathrm {G6} & 調整運転 & 150 & \color{red}{150} \\
\hline
\end{array}
\] したがって,最大電力は,
\[
\begin{eqnarray}
\left( 300+80+350+250+150 \right) -350 &=&780 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:ヘ
最大出力を出す発電機\( \ \mathrm {G1} \ \)が脱落したときの上げ余力\( \ 300 \ \mathrm {[MW]} \ \)を確保可能なパターンは下表のパターン\( \ \mathrm {A} \ \)もしくはパターン\( \ \mathrm {B} \ \)となる。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
発電機 & 種 別 & 最大出力 & 出力パターン \ \mathrm {A} & 出力パターン \ \mathrm {B} \\
\hline
\mathrm {G1} & 出力一定運転 & 300 & 300 & 300 \\
\hline
\mathrm {G2} & 出力一定運転 & 200 & \color{red}{80} & \color{red}{80} \\
\hline
\mathrm {G3} & 揚水式発電 & 100 & \color{red}{0} & \color{red}{0} \\
\hline
\mathrm {G4} & 調整運転 & 350 & \color{red}{35} & \color{red}{0} \\
\hline
\mathrm {G5} & 調整運転 & 250 & \color{red}{0} & \color{red}{25} \\
\hline
\mathrm {G6} & 調整運転 & 150 & \color{red}{0} & \color{red}{15} \\
\hline
\end{array}
\] 出力パターン\( \ \mathrm {A} \ \)は\( \ \mathrm {G1} \ \)が脱落したときの上げ余力は確保できるが,\( \ \mathrm {G4} \ \)が脱落したときに上げ余力を確保できない。一方,出力パターン\( \ \mathrm {B} \ \)は\( \ \mathrm {G1} \ \),\( \ \mathrm {G2} \ \),\( \ \mathrm {G5} \ \),\( \ \mathrm {G6} \ \)のいずれの発電機が脱落したときでも上げ余力を確保できる。したがって,出力パターン\( \ \mathrm {B} \ \)が最小電力となり,その大きさは,
\[
\begin{eqnarray}
300+80+25+15 &=&420 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ロ
\( \ \mathrm {G3} \ \)は\( \ 100 \ \mathrm {[MW]} \ \)で揚水運転しているので,発電機が脱落したときは揚水運転を停止することで上げ余力\( \ 100 \ \mathrm {[MW]} \ \)を確保できる。そのため,最も大きい出力である\( \ \mathrm {G1} \ \)が脱落したときの上げ余力は\( \ 200 \ \mathrm {[MW]} \ \)確保する必要がある。よって,下表のパターンが第一に考えられる。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
発電機 & 種 別 & 最大出力 & 出力 \\
\hline
\mathrm {G1} & 出力一定運転 & 300 & 300 \\
\hline
\mathrm {G2} & 出力一定運転 & 200 & 80 \\
\hline
\mathrm {G3} & 揚水式発電 & 100 & \color{blue}{-100} \\
\hline
\mathrm {G4} & 調整運転 & 350 & \color{red}{0} \\
\hline
\mathrm {G5} & 調整運転 & 250 & \color{red}{25} \\
\hline
\mathrm {G6} & 調整運転 & 150 & \color{red}{0} \\
\hline
\end{array}
\] 上表において,仮に\( \ \mathrm {G5} \ \)が脱落した場合でも,\( \ \mathrm {G3} \ \)を停止すれば良いので,発電電力を保つことが可能となる。したがって,上表の出力パターンで運転して問題はなく,その電力は,
\[
\begin{eqnarray}
300+80-100+25 &=&305 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



記事下のシェアタイトル