《理論》〈電子理論〉[R01:問7]負帰還増幅回路に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,負帰還増幅回路に関する記述である。文中の  に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

図1は負帰還増幅回路の原理図である。 A は増幅回路の電圧増幅度, β は帰還回路の帰還率, vin は入力電圧, vout は出力電圧を示す。この負帰還増幅回路の電圧増幅度は,
AF=voutvin=  (1)   と表される。さらに Aβ  1 に比べ十分に大きいとき, AF   (2)  に近似できる。このことから負帰還増幅回路の電圧増幅度は A の変動の影響を受けにくいことが分かる。

次に, A が周波数 f を用いて,
A=A01+jffc で表されるとする。ここで, A0 は増幅回路の直流における電圧増幅度であり, fc は増幅回路の遮断周波数である。このとき AF は,
AF=voutvin=  (3)   と表される。これより,直流利得と遮断周波数の積( GB 積)が 1 MHz である増幅回路を用いて,直流利得 100 倍の負帰還増幅回路を構成したときの負帰還増幅回路の遮断周波数は  (4)  Hz となることが分かる。

また,増幅回路の出力電圧に,ひずみに相当する電圧 vd が図2のように加わるとき, vout  A を用いて,
vout=  (1)  vin+  (5)  vd と表される。このことから負帰還増幅回路は出力電圧に生じるひずみを  (5)  倍にすることが分かる。

〔問7の解答群〕
 102      11+Aβ      1+Aβ 11+Aβ      1β      A01+jffc A1+Aβ      11+A0βA01+jf(1+A0β)fc      A1+Aβ β      106      β1+Aβ 1β      104      (1+A0β)A01+jf11+A0βfc

【ワンポイント解説】

二次試験によく出題される機械制御の自動制御に近い問題なので,1種受験生にとっては比較的取り組みやすい内容ではないかと思います。B問題は配点が大きいので,計算間違いには十分に注意しましょう。

1.負帰還増幅回路の電圧増幅率
問題図において,入力電圧を vin ,入力電圧を vout とすると,
(vinβvout)A=vout の関係があるので,式を整理すると,全体の増幅率 voutvin は,
AvinAβvout=voutvout+Aβvout=Avin(1+Aβ)vout=Avinvoutvin=A1+Aβ と求められます。さらに, A1 であるとすると,
voutvin=A1+Aβ=11A+β1β となります。

2.負帰還増幅回路を導入する効果
負帰還増幅回路を導入することにより以下のような効果があります。
①増幅回路 A が大きい場合,増幅回路の利得を帰還率 β のみでコントロールすることが可能
②電源電圧の変動に対して安定的となる
③増幅回路で発生するひずみや外乱が抑制される
④増幅回路の利得が一定となる帯域幅が大きくなる

【解答】

(1)解答:ト
ワンポイント解説「1.負帰還増幅回路の電圧増幅率」と同様に求めると, A1+Aβ と求められる。

(2)解答:ワ
ワンポイント解説「1.負帰還増幅回路の電圧増幅率」と同様に求めると, 1β と求められる。

(3)解答:チ
(1)の解答式に, A=A01+jffc を代入すると,
AF=voutvin=A1+Aβ=A01+jffc1+A01+jffcβ=A01+jffc+A0β=A01+A0β+jffc=11+A0βA01+jf(1+A0β)fc と求められる。

(4)解答:カ
題意より, A0f=106 及び A0=100 であるから,
f=A0fA0=106100=104 [Hz] と求められる。

(5)解答:ニ
図2より,
(vinβvout)A+vd=voutAvinAβvout+vd=voutvout+Aβvout=Avin+vd(1+Aβ)vout=Avin+vdvout=A1+Aβvin+11+Aβvd と求められる。



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