《理論》〈電子理論〉[R03:問6]ホール効果測定のメカニズムに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,ホール効果測定に関する記述である。文中の  に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

図のように,板状の半導体(長さ L ,幅 W ,厚さ t )の A 面と B 面の間に電圧 V(0) を印加する。半導体中のキャリヤが電界から力を受けて一定速度 v で運動している状況を考える。キャリヤが正の電荷量 q を持つ正孔の場合,正孔の濃度を p ,移動度を μh と仮定すると,運動の方向は x 軸の正方向となり, v=  (1)  と表されることから,回路を流れる電流 I は, I=  (2)  と表される。

この半導体に,図の z 軸の正方向に磁束密度 Bz(0) の磁界を印加すると,正孔がローレンツ力を受けることで, C 面の電位が D 面に対して  (3)  くなる。この電位差をホール電圧 VH と定義する。定常状態では, VH による電界から受ける力と,ローレンツ力が釣り合うことから, VH=  (4)  と表される。以上の関係を用いると, VH  I を実測することにより μh  p が得られ, p=  (5)  と算出される。

〔問6の解答群〕
             μhVW qpμhVL            qBztIVH μhVL      qμhVBzWL      μhVBzWL BzqtIVH      BzqtVHI      qpμhVtWL qpμhVtLW      μhLV      μhVBzWLt

【ワンポイント解説】

ホール効果測定に関する問題です。
ホール効果は半導体に電流を流し,さらに電流に直角の磁界をかけたとき,電流と磁界に直角の方向に電圧が生じる現象で,本問はそのメカニズムを説明している内容となっています。
電荷の偏りによる起電力の発生がポイントとなり,電子理論の範囲ですが電磁気の知識を使用する問題となります。

1.電界により電荷に働く力の大きさ
一様な電界 E が電荷 q にかかっているとき,この電荷 q に働く力の大きさ F は,
F=qE

となります。

2.フレミングの左手の法則
中指を電流の向き,人差し指を磁界の向きに合わせると,親指の方向に力が働くという法則で,頭文字を取って「電磁力」と覚えます。
磁束密度の大きさ B ,電子の速度 v ,電荷を q とすると,電荷にかかるローレンツ力 F は,
F=qvB

となります。

3.正孔と電子の移動度と電流密度
電界 E が加わっている電界中に正孔と電子があるとすると,正孔は電界と同方向に,電子は電界と反対方向に動きます。その時の正孔と電子の速度を vh  ve ,正孔と電子の移動度を μh  μe とすると,
vh=μhEve=μeE

の関係があります。ここで,正孔の電荷量が q ,電子の電荷量が q で,正孔と電子の濃度が p  n であるとすると,正孔と電子の電流密度 Jh  Je は,
Jh=qpvh=qpμhEJe=qnve=qnμeE
となります。

【解答】

(1)解答:ト
ワンポイント解説「3.正孔と電子の移動度と電流密度」の通り,正電荷の速度 v は,電源 V による電界を E とすると,
v=μhE=μhVL

と求められる。

(2)解答:ヲ
ワンポイント解説「3.正孔と電子の移動度と電流密度」の通り,半導体内の電流密度 J は,
J=qpv=qpμhVL

であり, A 面と B 面の面積 S=Wt であるから,回路を流れる電流 I は,
I=JS=qpμhVLWt=qpμhVtWL
と求められる。

(3)解答:イ
 z 軸の正方向に磁束密度 Bz が印加されると,ワンポイント解説「2.フレミングの左手の法則」の通り,図2のようにローレンツ力が加わる。すると,正電荷が C 面側に引き寄せられ, C 面の電位が D 面に対してくなる。

(4)解答:リ
 VH による電界 EH は,
EH=VHW

であり,その力の大きさ FH は,ワンポイント解説「1.電界により電荷に働く力の大きさ」の通り,
FH=qEH=qVHW
となる。定常状態においては,ローレンツ力と等しいので,
FH=qVHW=qvBzqVHW=qμhVLBzVHW=μhVBzLVH=μhVBzWL
と求められる。

(5)解答:ヌ
(2),(4)解答式より,
μhVWL=Iqpt=VHBz

となるから,これを p について整理すると,
Iqpt=VHBzp=BzqtIVH
と求められる。



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