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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は, 図1に示すバイポーラトランジスタを用いた増幅回路に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる数値を解答群の中から選びなさい。ただし,図1は,増幅回路の交流成分のみを考慮しており,バイポーラトランジスタの交流等価回路は図2で表されるものとする。また,\( \ \beta \ \)はエミッタ接地電流増幅率であり,ベース電流の\( \ \beta \ \)倍がコレクタ電流となることを表している。
図1の電流\( \ i_{\mathrm {in}} \ \)はバイポーラトランジスタのベース電流\( \ i_{\mathrm {b}} \ \)に等しく,また,図2のバイポーラトランジスタの交流等価回路から\( \ \beta =99\ \)なので,抵抗\( \ R_{\mathrm {L}} \ \)に流れる電流\( \ i_{\mathrm {L}} \ \)は\( \ i_{\mathrm {in}} \ \)の\( \ \fbox { (1) } \ \)倍であることがわかる。このこととベース抵抗\( \ r_{\mathrm {b}} \ \)と抵抗\( \ R_{\mathrm {L}} \ \)が共に\( \ 1.0 \ \mathrm {[k\Omega ]} \ \)であることから,図1の増幅回路の入力抵抗は\( \ \displaystyle \frac {v_{\mathrm {in}}}{i_{\mathrm {in}}}= \ \fbox { (2) } \ \mathrm {[k\Omega ]} \ \)であることがわかる。同じく,\( \ i_{\mathrm {L}} \ \)は\( \ i_{\mathrm {in}} \ \)の\( \ \fbox { (1) } \ \)倍であることから,ベース抵抗\( \ r_{\mathrm {b}} \ \)に生じる電圧\( \ v_{\mathrm {b}} \ \)は抵抗\( \ R_{\mathrm {L}} \ \)に生じる電圧\( \ v_{\mathrm {out}} \ \)の\( \ \fbox { (3) } \ \)倍である。したがって,電圧利得\( \ \displaystyle \frac {v_{\mathrm {out}}}{v_{\mathrm {in}}} \ \)は\( \ \fbox { (4) } \ \)倍となる。さらに,\( \ \beta \ \)を\( \ 99 \ \)よりも大きくしていくと,電圧利得\( \ \displaystyle \frac {v_{\mathrm {out}}}{v_{\mathrm {in}}} \ \)は\( \ \fbox { (5) } \ \)倍に近づいていく。
〔問8の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& -101 &(ロ)& 101 &(ハ)& \frac {1}{100} \\[ 5pt ]
&(ニ)& \frac {1}{99} &(ホ)& 99 &(ヘ)& -\frac {99}{100} \\[ 5pt ]
&(ト)& 1 &(チ)& 0 &(リ)& \frac {100}{101} \\[ 5pt ]
&(ヌ)& -1 &(ル)& \frac {99}{101} &(ヲ)& -100 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 100 &(カ)& \frac {1}{101} &(ヲ)& -99 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
バイポーラトランジスタを用いたコレクタ接地増幅回路に関する問題です。
キルヒホッフの法則以外には特別な公式は使用しませんので,マスターしてしまうと得点源になる問題です。
あまり勉強をしない受験生も多いので,狙い目の問題とも言えるかと思います。
【解答】
(1)解答:ワ
図1と図2を組み合わせた小信号等価回路は図3のようになる。
図3にキルヒホッフの法則(電流則)を適用すると,\( \ R_{\mathrm {L}} \ \)に流れる電流\( \ i_{\mathrm {L}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
i_{\mathrm {L}} &=&i_{\mathrm {b}}+\beta i_{\mathrm {b}} \\[ 5pt ]
&=&\left( 1+\beta \right) i_{\mathrm {b}} \\[ 5pt ]
&=&\left( 1+99 \right) i_{\mathrm {in}} \\[ 5pt ]
&=&100 i_{\mathrm {in}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。
(2)解答:ロ
図4に示す閉回路にキルヒホッフの法則を適用すると,
\[
\begin{eqnarray}
v_{\mathrm {in}} &=&r_{\mathrm {b}}i_{\mathrm {b}}+R_{\mathrm {L}} i_{\mathrm {L}} \\[ 5pt ]
&=&1.0\times i_{\mathrm {in}}+1.0\times 100i_{\mathrm {in}} \\[ 5pt ]
&=&101i_{\mathrm {in}} \\[ 5pt ]
\frac {v_{\mathrm {in}}}{i_{\mathrm {in}}}&=&101 \ \mathrm {[k\Omega ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。
(3)解答:ハ
それぞれの抵抗についてオームの法則を適用すると,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {v_{\mathrm {b}}}{v_{\mathrm {out}}} &=&\frac {r_{\mathrm {b}}i_{\mathrm {b}}}{R_{\mathrm {L}} i_{\mathrm {L}}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {1.0\times i_{\mathrm {b}}}{1.0\times 100 i_{\mathrm {b}}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {1}{100} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。
(4)解答:リ
図4に示す閉回路について,各電圧の関係式より,
\[
\begin{eqnarray}
v_{\mathrm {in}} &=&v_{\mathrm {b}}+v_{\mathrm {out}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {1}{100}v_{\mathrm {out}}+v_{\mathrm {out}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {101}{100}v_{\mathrm {out}} \\[ 5pt ]
\frac {v_{\mathrm {out}}}{v_{\mathrm {in}}}&=&\frac {100}{101} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。
(5)解答:ト
\( \ \beta \ \)の値を大きくしていくと,\( \ r_{\mathrm {b}} \ \)に流れる電流は十分に小さく,電圧降下はほぼないと考えることができるので,\( \ v_{\mathrm {in}}≒v_{\mathrm {out}} \ \)と考えることができる。したがって,\( \ \displaystyle \frac {v_{\mathrm {out}}}{v_{\mathrm {in}}} \ \)は\( \ 1 \ \)倍に近づいていく。