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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,アーク加熱に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
アーク加熱は電極間に発生させたアーク放電を熱源とするもので,被加熱物を電極の一部とする場合には,被加熱物を流れる電流によるジュール熱も熱源として加わる。アーク放電によって\( \ \fbox { (1) } \ \)程度の温度が得られるため,各種金属やセラミックスなどの溶融に用いられる。
アーク加熱の代表的な例に,鉄スクラップを溶解する製鋼用アーク炉がある。これには三相交流をそのまま用いる交流アーク炉と,整流した直流を用いる直流アーク炉とがある。両者とも被加熱物である鉄スクラップを電極の一部とし,他方の電極には\( \ \fbox { (2) } \ \)を用いている。アーク電流は数\( \ \mathrm {kA} \ \)以上となり,この電流領域では,アーク放電路の長さ(アーク長)を一定とすると,アーク放電路の電圧(アーク電圧)はアーク電流に依存せず,ほぼ一定で,アーク電圧はアーク長に\( \ \fbox { (3) } \ \)。
製鋼用アーク炉では,鉄スクラップの溶解過程において,炉内の鉄スクラップの崩落による電極間短絡やアーク長の不規則かつ頻繁な変動によって,アーク電流が大きく変動する。このため,アーク長を制御して投入電力をなるべく一定にするため,炉内における\( \ \fbox { (2) } \ \)電極の位置を高速に調整する自動電極昇降装置を備えている。
また,アーク電流の変動に伴い,電源系統側の主に\( \ \fbox { (4) } \ \)成分に応じた電圧フリッカが発生する。同容量のアーク炉の場合,交流アーク炉における電圧フリッカの発生は直流アーク炉より多い。電圧フリッカを抑制するために\( \ \fbox { (5) } \ \)などが設置される。
〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 銅 &(ロ)& 数千\sim 数万 \ {}^{\circ}\mathrm {C} &(ハ)& ほぼ反比例する \\[ 5pt ]
&(ニ)& ほぼ比例する &(ホ)& 数万\sim 数十万 \ {}^{\circ}\mathrm {C} &(ヘ)& 無関係である \\[ 5pt ]
&(ト)& 抵抗 &(チ)& 数十万\sim 数百万 \ {}^{\circ}\mathrm {C} &(リ)& キャパシタンス \\[ 5pt ]
&(ヌ)& インダクタンス &(ル)& タングステン &(ヲ)& 黒鉛 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
\[
\begin{eqnarray}
&(ワ)& 無効電力補償装置 \\[ 5pt ]
&(カ)& 高頻度開閉形遮断器 \\[ 5pt ]
&(ヨ)& 負荷時タップ切替変圧器 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
アーク加熱の特徴や電源系統への影響に関する問題です。
わりと受験生の勉強が手薄になる分野ですが,(1)と(2)は電験でもよく出題される印象がありますので,ここで覚えておいて下さい。
1.アーク加熱
アークを黒鉛電極と被加熱物との間に発生させて数千℃~2万℃程度まで温度を上げ加熱・溶解する方法で,直接加熱方式と間接加熱方式があります。そして加える電流の種類として,三相交流をそのまま用いる交流アーク炉と直流に整流して用いる直流アーク炉があります。主に鉄くずや還元鉄による電気製鋼等に使用される加熱です。
アークの特性として,大電流の領域では,アーク電圧が電流に依存せずほぼ一定となりアーク長にほぼ比例する,という特徴があります。
また,アーク炉は一般に大容量の負荷であり,負荷変動や波形ひずみが電圧フリッカや高調波等の電源障害の発生源となる可能性があるので,無効電力補償装置等の対策を施す必要があります。

【解答】
(1)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)数千\( \sim \)数万\( \ {}^{\circ}\mathrm {C}\),(ホ)数万\( \sim \)数十万\( \ {}^{\circ}\mathrm {C}\),(チ)数十万\( \sim \)数百万\( \ {}^{\circ}\mathrm {C}\),になると思います。
ワンポイント解説「1.アーク加熱」の通り,アーク放電によって得られる温度は数千\( \sim \)数万\( \ {}^{\circ}\mathrm {C} \ \)程度です。
(2)解答:ヲ
題意より解答候補は,(イ)銅,(ル)タングステン,(ヲ)黒鉛,になると思います。
ワンポイント解説「1.アーク加熱」の通り,アーク加熱の電極に用いるのは黒鉛となります。
(3)解答:ニ
題意より解答候補は,(ハ)ほぼ反比例する,(ニ)ほぼ比例する,(ヘ)無関係である,になると思います。
ワンポイント解説「1.アーク加熱」の通り,アーク電流が数\( \ \mathrm {kA} \ \)以上の領域では,アーク電圧はアーク長にほぼ比例します。
(4)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ト)抵抗,(リ)キャパシタンス,(ヌ)インダクタンス,になると思います。
アーク電流の変動に伴い,電源系統側の主にインダクタンス成分に応じた電圧フリッカが発生します。
(5)解答:ワ
題意より解答候補は,(ワ)無効電力補償装置,(カ)高頻度開閉形遮断器,(ヨ)負荷時タップ切替変圧器,になると思います。
ワンポイント解説「1.アーク加熱」の通り,電圧フリッカを抑制するために用いられるのは無効電力補償装置となります。