【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,電圧安定性に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
電圧安定性は負荷の様相に大きく依存する。電圧に対する負荷特性は,定電力特性,定電流特性,定インピーダンス特性の三つに分類される。定電力特性の負荷の代表例として挙げられるのは\( \ \fbox { (1) } \ \)である。負荷全体に対する定電力負荷の割合が\( \ \fbox { (2) } \ \)場合,電圧維持が厳しくなる。
電圧安定性を表す特性として,負荷の有効電力\( \ P \ \)と負荷端の電圧\( \ V \ \)の関係を表した\( \ P-V \ \)曲線が一般に用いられ,その形からノーズカーブともいわれる。下の図において,誘導性の負荷が定電力特性(\( \ P=P_{\mathrm {L}} \ \)で一定)である場合,安定な運用点は\( \ \fbox { (3) } \ \)である。
負荷の有効電力が増加すると電圧安定性が低下するおそれがあることから,負荷端に\( \ \fbox { (4) } \ \)を投入することで,\( \ P-V \ \)曲線の潮流限界点が図の\( \ \fbox { (5) } \ \)方向に移動し,電圧の安定性を向上できる。
〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 蛍光灯 &(ロ)& 分路リアクトル &(ハ)& \mathrm {C} \\[ 5pt ]
&(ニ)& 制動抵抗 &(ホ)& 電熱体 &(ヘ)& 小さい \\[ 5pt ]
&(ト)& 大きい &(チ)& インバータエアコン &(リ)& 右上 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 電力用コンデンサ &(ル)& \mathrm {B} &(ヲ)& ゼロの \\[ 5pt ]
&(ワ)& 右下 &(カ)& 左上 &(ヨ)& \mathrm {A} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
ノーズカーブを含む系統の電圧安定性に関する問題です。
電験において,ノーズカーブの導出をすることは現実的ではないため,本問の内容は暗記して対応していく必要があります。
電験のテキストでは記載が少ない内容も多いので多くの受験生が悩んだ問題と予想されますが,重要な概念となりますので,ここで理解しておくようにして下さい。
1.受電端電圧の大きさ\( \ V_{\mathrm {r}} \ \)と受電端有効電力\( \ P \ \)の間の関係(\( \ P-V \ \)カーブ)
図1のような無限大母線(電圧\( \ {\dot V}_{\mathrm {s}}=V_{\mathrm {s}}∠\delta \ \))からリアクタンス\( \ X \ \)及び受電側母線(電圧\( \ {\dot V}_{\mathrm {r}}=V_{\mathrm {r}}∠0 \ \))を介して抵抗負荷に電力\( \ P \ \)を供給している系統を考えます。
(ここでは,簡単のため抵抗負荷を使用していますが,ノーズカーブの形は抵抗負荷以外でも同じとなります。さらに詳しく知りたい方は専門書を探して見て下さい。)
リアクタンスを流れる電流を\( \ \dot I \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
{\dot V}_{\mathrm {s}}-{\dot V}_{\mathrm {r}}&=&\mathrm {j}X\dot I \\[ 5pt ]
\dot I&=&\frac {V_{\mathrm {s}}∠\delta -V_{\mathrm {r}}}{\mathrm {j}X} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,受電端複素電力\( \ P \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P&=&{\dot V}_{\mathrm {r}}\overline {\dot I} \\[ 5pt ]
&=&V_{\mathrm {r}}\cdot \frac {V_{\mathrm {s}}∠\left( -\delta \right) -V_{\mathrm {r}}}{-\mathrm {j}X} \\[ 5pt ]
&=&\mathrm {j}V_{\mathrm {r}}\cdot \frac {V_{\mathrm {s}}∠\left( -\delta \right) -V_{\mathrm {r}}}{X} \\[ 5pt ]
&=&\frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}∠\left( -\delta +\displaystyle \frac {\pi }{2}\right) -\mathrm {j}V_{\mathrm {r}}^{2}}{X} \\[ 5pt ]
P+\mathrm {j}\frac {V_{\mathrm {r}}^{2}}{X}&=&\frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}∠\left( -\delta +\displaystyle \frac {\pi }{2}\right) }{X} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。両辺の大きさ(絶対値)は等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
P^{2}+\left( \frac {V_{\mathrm {r}}^{2}}{X}\right) ^{2}&=&\left( \frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}}{X}\right) ^{2} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,これを\( \ V_{\mathrm {r}} \ \)について整理して\( \ V_{\mathrm {r}} \ \)を求めると,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {V_{\mathrm {r}}^{4}}{X^{2}}-\frac {V_{\mathrm {s}}^{2}V_{\mathrm {r}}^{2}}{X^{2}}+P^{2}&=&0 \\[ 5pt ]
V_{\mathrm {r}}^{4}-V_{\mathrm {s}}^{2}V_{\mathrm {r}}^{2}+X^{2}P^{2}&=&0 \\[ 5pt ]
V_{\mathrm {r}}^{2}&=&\frac {V_{\mathrm {s}}^{2}±\sqrt {V_{\mathrm {s}}^{4}-4X^{2}P^{2}}}{2} \\[ 5pt ]
V_{\mathrm {r}}&=&\sqrt {\frac {V_{\mathrm {s}}^{2}±\sqrt {V_{\mathrm {s}}^{4}-4X^{2}P^{2}}}{2}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められます。上式について,受電端母線の電圧\( \ V_{\mathrm {r}} \ \)と受電端電力\( \ P \ \)の間の関係(\( \ P-V \ \)カーブ)を描くと図2のようになり,これをノーズカーブと呼びます。
図2より,同じ電力において電圧が\( \ 2 \ \)点ある(上式の\( \ 2 \ \)つの解)ことが分かり,電圧が高い方を高め解(安定),電圧が低い方を低め解(不安定)と言います。


2.\( \ P-V \ \)カーブにおける定電力,定電流,定インピーダンス特性
定電力特性はその名の通り\( \ P \ \)一定の特性なので,図3の青線のような特性となり,定電流特性は\( \ \displaystyle V∝\frac {P}{I} \ \)の関係より図3の緑線のような特性,定インピーダンス特性は,\( \ \displaystyle P∝\frac {V^{2}}{Z} \ \)すなわち\( \ V∝\sqrt {ZP} \ \)の関係があるので,図3の赤線のような特性となり,それぞれ以下の特徴があります。
定電力特性
電圧\( \ V \ \)が低下すると,消費電力を維持しようとして負荷電流\( \ I \ \)が増加するため,線路の電圧降下や無効電力損失がさらに増大していきます。したがって,定電力負荷の割合が大きいほど系統の電圧維持は厳しくなります。定電力負荷にはインバータエアコン等のインバータ機器があります。
定電流特性
電圧にかかわらず電流が一定となる特性です。電力が電圧にほぼ比例して大きくなっていきます。定電流負荷には蛍光灯等があります。
定インピーダンス特性
インピーダンス\( \ X \ \)が一定で、消費電力が電圧の\( \ 2 \ \)乗に比例する特性で,電圧が下がると消費電力が大きく減少し,系統の電圧安定性には有利に働きます。定インピーダンス負荷にはヒーター(電熱体)や白熱電灯等があります。
【解答】
(1)解答:チ
題意より,解答候補は(イ)蛍光灯,(ホ)電熱体,(チ)インバータエアコン,になると思います。
ワンポイント解説「2.\( \ P-V \ \)カーブにおける定電力,定電流,定インピーダンス特性」の通り,定電力特性の負荷の代表例として挙げられるのはインバータエアコンがあります。
(2)解答:ト
題意より,解答候補は(ヘ)小さい,(ト)大きい,(ヲ)ゼロの,になると思います。
ワンポイント解説「2.\( \ P-V \ \)カーブにおける定電力,定電流,定インピーダンス特性」の通り,負荷全体に対する定電力負荷の割合が大きいほど,電圧維持が厳しくなります。
(3)解答:ヨ
題意より,解答候補は(ハ)\( \ \mathrm {C} \ \),(ル)\( \ \mathrm {B} \ \),(ヨ)\( \ \mathrm {A} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.受電端電圧の大きさ\( \ V_{\mathrm {r}} \ \)と受電端有効電力\( \ P \ \)の間の関係(\( \ P-V \ \)カーブ)」の通り,安定な運用点は\( \ \mathrm {A} \ \)となります。
(4)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ロ)分路リアクトル,(ニ)制動抵抗,(ヌ)電力用コンデンサ,になると思います。
詳細計算は専門性が高いので割愛しますが,電力用コンデンサを投入することで,\( \ P-V \ \)カーブは図4のように変化し電圧の安定性を向上できます。その他,送電端電圧を高くすることでも電圧の安定性を向上させることができます。
(5)解答:リ
題意より,解答候補は(リ)右上,(ワ)右下,(カ)左上,になると思います。
図4に示すように,電力用コンデンサを投入すると\( \ P-V \ \)曲線の潮流限界点が右上方向に移動します。




【令和8年度版2種一次試験】






