《電力》〈水力〉[R08:問5]水力発電所の設備全体での建設コスト低減に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,水力発電所の設計に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

水力発電所の新設計画を検討する際には,土木設備を含めた設備全体でのコスト低減を図ることが求められる。その一例として,負荷遮断時の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を低く抑えることによって,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の肉厚を薄くする場合がある。

フランシス水車などの\( \ \fbox {  (3)  } \ \)水車を用いる発電所で,この検討を具体化する場合には,ガイドベーン閉鎖時間を\( \ 10\sim 20 \ \)秒程度に意図的に長くしなければならず,負荷遮断時の水車・発電機の速度上昇は避けられない。この際,発電機のはずみ車効果\( \ \left({GD}^{2}\right) \ \)は\( \ \fbox {  (4)  } \ \)とし,負荷遮断時の回転速度を\( \ \fbox {  (5)  } \ \)又はそれに近い速度まで許容する設計を採用することが一般的である。これにより,水車・発電機の強度を高める必要はあるが,土木設備も含めた水力発電所全体でコスト低減を図ることができる。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 系統要求     &(ロ)& 水圧鉄管     &(ハ)& 無拘束速度 \\[ 5pt ] &(ニ)& 衝動     &(ホ)& 速度変動率     &(ヘ)& ヘッドタンク \\[ 5pt ] &(ト)& 臨界速度     &(チ)& 水車要求     &(リ)& 半衝動 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 水圧上昇     &(ル)& 反動     &(ヲ)& 制水門 \\[ 5pt ] &(ワ)& 定格速度        &(カ)& 発電機固有        &(ヨ)& 電圧変動率 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

水力発電所の設計に対する考え方の一部を問う問題です。
水力発電所の設計においては,どの部分を強化するかで建設コスト及びランニングコストが大きく変わるため,様々な内容を総合的に考慮し検討を行っていく必要があります。
非常に面白い内容とはなりますが,電験としては専門性が高くやや厳しい問題と言えるでしょう。

1.水力発電所での負荷遮断時に対する建設コスト低減の考え方
基本的な考え方は負荷遮断時の水車入口のガイドベーンの閉止を早め回転速度の上昇を抑えるか,閉止を遅くし水圧管路の水圧上昇を抑えるかの検討です。

水力発電所で送電線事故などにより負荷遮断が発生すると,水車が急激に加速するため,調速機がガイドベーンに急閉指令を出し流入水量を絞ります。このとき,流量の急激な変化によって水圧管内には大きな水圧上昇に伴う水撃作用が発生します。

水圧上昇値を高く許容すると,管路の最大内圧に耐えられるよう水圧鉄管の肉厚を厚くする必要があり,土木・管路コストが増大します。逆に,負荷遮断時の水圧上昇を低く抑えることができれば,水圧鉄管の設計耐圧を下げて肉厚を薄くできるため,大幅な建設コスト低減が可能となります。したがって,フランシス水車等の反動水車において,水圧管路内の水圧上昇を抑える最も直接的な方法は,ガイドベーンの閉鎖時間を長く\( \ 10\sim 20 \ \)秒程度に設定することです。

しかし,閉鎖時間を長くすると水車に水が流れ続けるため,発電機が無負荷状態で回され続け,回転速度の大幅な上昇を招くことになります。回転速度の急激な上昇を抑えるための一般的な手段として,回転子のはずみ車効果\( \ \left( {GD}^{2}\right) \ \)(≒慣性モーメント)を大きく設計する方法があります。しかし,はずみ車効果を大きく設計することは,発電機の寸法・重量の増加を招きコストが増加します。

そこで,設備全体のコストミニマム化を図る設計では,発電機のはずみ車効果は特別な増大設計を行わず,標準的なはずみ車効果にとどめ,その代わりに負荷遮断時の最高回転速度を無負荷運転時にガイドベーンを全開のまま回転し続けたときの速度である無拘束速度またはそれに近い速度まで許容できるようにします。これにより,回転子などの遠心力に対する機械的強度を高める追加設計は必要となりますが,水圧鉄管の薄肉化やサージタンクの縮小など,土木設備全体のコスト削減効果の方が大きいため,総合的な建設コストを低減させることができます。

【解答】

(1)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ホ)速度変動率,(ヌ)水圧上昇,(ヨ)電圧変動率,等になると思います。
ワンポイント解説「1.水力発電所での負荷遮断時に対する建設コスト低減の考え方」の通り,後半の文章で肉厚を薄くとなっていることから,配管等の管路であることがわかり,水圧上昇が適切であることがわかります。

(2)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)水圧鉄管,(ヘ)ヘッドタンク,(ヲ)制水門,になると思います。
ワンポイント解説「1.水力発電所での負荷遮断時に対する建設コスト低減の考え方」の通り,負荷遮断時の水圧上昇を抑えることにより,水圧鉄管の肉厚を薄くすることが可能となります。

(3)解答:ル
題意より,解答候補は(ニ)衝動,(リ)半衝動,(ル)反動,になると思います。
フランシス水車は反動水車に分類されます。ペルトン水車等は衝動水車に分類されます。わからない場合はテキスト等で復習しておくようにして下さい。

(4)解答:カ
題意より,解答候補は(イ)系統要求,(チ)水車要求,(カ)発電機固有,になると思います。
ワンポイント解説「1.水力発電所での負荷遮断時に対する建設コスト低減の考え方」の通り,発電機のはずみ車効果は特別な増大設計を行わず,標準的なはずみ車効果,すなわち発電機固有とします。

(5)解答:ハ
題意より,解答候補は(ハ)無拘束速度,(ト)臨界速度,(ワ)定格速度,になると思います。
ワンポイント解説「1.水力発電所での負荷遮断時に対する建設コスト低減の考え方」の通り,負荷遮断時の回転速度は無拘束速度又はそれに近い速度まで許容する設計を採用します。



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