《電力》〈配電〉[R01:問4]配電線の高低圧混触に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,配電線の高低圧混触に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

一般に低圧電路は,変圧器の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)や電線等の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)故障の際に高圧電路と混触を起こし,高圧側の電圧が低圧側に現れて危険となるおそれがあるため,変圧器には\( \ \mathrm {B} \ \)種接地工事を施して,発生する電位上昇を抑制している。

図1に示すように,線間電圧の大きさが\( \ V \ \)の三相\( \ 3 \ \)線式電線路に接続された単相変圧器において,高低圧巻線間に混触が生じた際の低圧側電線の対地電圧\( \ {\dot V}_{\mathrm {R}} \ \)の大きさを\( \ V_{1} \ \)以下にするための接地抵抗\( \ R \ \)の最大値\( \ R_{\mathrm {M}} \ \)を以下のように求める。ただし,\( \ C \ \)は三相線路の電線\( \ 1 \ \)条の対地静電容量,\( \ \omega \ \)は電源の角周波数である。また,変圧器のインピーダンスは無視する。

図2に示す高低圧混触時のテブナンの定理による等価回路より,接地抵抗\( \ R \ \)に流れる電流\( \ {\dot I}_{\mathrm {R}} \ \)の大きさは\( \ \fbox {  (3)  } \ \)で表される。ここで,\( \ \displaystyle R≪\frac {1}{3\omega C} \ \)とすると,最大値\( \ R_{\mathrm {M}} \ \)は\( \ \fbox {  (4)  } \ \)で表される。なお,柱上変圧器の高圧巻線と低圧巻線の混触は,配電用変電所の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)で検出され,配電用変電所の遮断器で遮断される。


〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 過熱     &(ロ)& 過負荷     &(ハ)& 励磁突入 \\[ 5pt ] &(ニ)& 地絡保護リレー     &(ホ)& 内部故障     &(ヘ)& 過電流保護リレー \\[ 5pt ] &(ト)& カットアウトヒューズ     &(チ)& アーク放電     &(リ)& 断線 \\[ 5pt ] &(ヌ)& \frac {3\sqrt {3}V_{1}}{V\omega C}     &(ル)& \frac {3V_{1}}{V\omega C}     &(ヲ)& \left| \frac {\displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}}}{\displaystyle R+\frac {1}{\mathrm {j}3\omega C}}\right| \\[ 5pt ] &(ワ)& \left| \frac {\sqrt {3}V}{\displaystyle R+\frac {1}{\mathrm {j}3\omega C}}\right|     &(カ)& \frac {V_{1}}{\sqrt {3}V\omega C}     &(ヨ)& \left| \frac {V}{\displaystyle R+\frac {1}{\mathrm {j}3\omega C}}\right| \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

本問は電力科目からの出題となっていますが,そのまま法規科目の電気施設管理に出題されてもおかしくない問題です。そういう意味でも出題される確率が高い内容と言えるので,確実に理解しておくようにして下さい。

【用語の解説】

(ハ)励磁突入
変圧器に電源を投入した時に発生する可能性がある大きな電流で,第\( \ 2 \ \)調波電流を多く含まれるという特徴があります。

(ト)カットアウトヒューズ
高圧の配電線の開閉や過負荷保護に使用されるヒューズです。電柱の上部等についている場合が多いです。

(チ)アーク放電
電位差のある電極同士を近づけた時,空気の絶縁強度を超えた際に発生する放電です。アークホーンはその原理を利用してがいしをバイパスするように設置され雷撃からがいしを守る装置です。

【解答】

(1)解答:ホ
(2)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)過熱,(ロ)過負荷,(ハ)励磁突入,(ホ)内部故障,(チ)アーク放電,(リ)断線になると思います。問題文の通り変圧器に\( \ \mathrm {B} \ \)種接地工事を施すのは,発生する電位上昇を抑制するためであり,電位上昇するのは(ホ)内部故障と(リ)断線になります。文脈から(1)が(ホ)内部故障,(2)が(リ)断線となります。

(3)解答:ヲ
高圧線の対地電圧は相電圧であるから,その大きさは\( \ \displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}} \ \)であり,コンデンサは並列なので,その合成静電容量は\( \ 3C \ \)となる。したがって,図2より接地抵抗\( \ R \ \)に流れる電流\( \ {\dot I}_{\mathrm {R}} \ \)の大きさ\( \ I_{\mathrm {R}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {R}}&=&\left| \frac {\displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}}}{\displaystyle R+\frac {1}{\mathrm {j}3\omega C}}\right| \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:カ
\( \ \displaystyle R≪\frac {1}{3\omega C} \ \)とすると,\( \ I_{\mathrm {R}} \ \)は
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {R}}&≃&\left| \frac {\displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}}}{\displaystyle \frac {1}{\mathrm {j}3\omega C}}\right| \\[ 5pt ] &=&\frac {\displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}}}{\displaystyle \frac {1}{3\omega C}} \\[ 5pt ] &=&\sqrt {3}V\omega C \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。また,図1より,変圧器の低圧側対地電圧\( \ {\dot V}_{\mathrm {R}} \ \)の大きさ\( \ V_{\mathrm {R}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {R}}&=&R_{\mathrm {M}}I_{\mathrm {R}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,
\[
\begin{eqnarray}
R_{\mathrm {M}}&=&\frac {V_{\mathrm {R}}}{I_{\mathrm {R}}} \\[ 5pt ] &=&\frac {V_{\mathrm {R}}}{\sqrt {3}V\omega C} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ニ
題意より,解答候補は(ニ)地絡保護リレー,(ヘ)過電流保護リレー,(ト)カットアウトヒューズになると思います。柱上変圧器の高圧巻線と低圧巻線の混触は,低圧側の電位上昇が発生するので,配電用変電所の地絡保護リレーで検出され,配電用変電所の遮断器で遮断されます。過電流保護である過電流保護リレー,カットアウトヒューズでは動作しません。



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