《電力》〈水力〉[H26:問1]揚水発電所の総合効率に関する計算問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,揚水発電所の総合効率に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

上池,下池の水面標高差が\( \ 210 \ \mathrm {m} \ \),発電時,揚水時の損失水頭がともに\( \ 10 \ \mathrm {m} \ \),発電使用水量,揚水量とも\( \ 50 \ \mathrm {m^{3}/s} \ \),水車効率,ポンプ効率がともに\( \ 88 \ % \ \),発電機効率,電動機効率ともに\( \ 98 \ % \ \)の同期発電電動機を設置する揚水発電所がある。

ここで,運転による水位変動は標高差に比べ小さく,無視できるものとし,重力加速度を\( \ 9.8 \ \mathrm {m/s^{2}} \ \)とすれば,この発電所の発電運転時の発電機出力は\( \ \fbox {  (1)  } \ \mathrm {MW} \ \)である。揚水運転時の全揚程は\( \ \fbox {  (2)  } \ \mathrm {m} \ \)である。揚水発電所においては,発電と揚水のモードを変更するときは,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)により,主回路を切替える。この発電所の揚水運転時の電動機入力は\( \ \fbox {  (4)  } \ \mathrm {MW} \ \)となり,したがって,この揚水発電所の総合効率は,\( \ \fbox {  (5)  } \ % \ \)となる。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 210     &(ロ)& 114     &(ハ)& 220 \\[ 5pt ] &(ニ)& 200     &(ホ)& 12.8     &(ヘ)& 93 \\[ 5pt ] &(ト)& 68     &(チ)& 並列遮断器      &(リ)& 85 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 同期投入装置      &(ル)& 78     &(ヲ)& 125 \\[ 5pt ] &(ワ)& 相反転断路器     &(カ)& 74     &(ヨ)& 8.6 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

平成26年の問題は難しい問題が多い反動か,この問題は非常に易しい問題となっています。三種でも出題されるレベルの問題なので,確実に完答できるようにしておきたいところです。

1.揚水発電所の諸公式
本問に与えられている各値を用いると,各値は下記のように求められます。

①発電電力
有効落差 :\(H=H_{0}-h_{\mathrm {G}}\mathrm {[ m ] }\)
発電機出力:\(P_{\mathrm {G}}=9.8Q_{\mathrm {G}}H\eta _{\mathrm {G}}\eta _{\mathrm {T}} \mathrm {[ kW ] }\)
総発電量 :\(W_{\mathrm {G}}=P_{\mathrm {G}}T_{\mathrm {G}}\mathrm {[ kWh ] }\)

②揚水動力
必要揚程 :\(\displaystyle H_{\mathrm {P}}=H_{0}+h_{\mathrm {P}}\mathrm {[ m ] }\)
所要動力 :\(\displaystyle P_{\mathrm {M}}=\frac { 9.8Q_{\mathrm {P}}H_{\mathrm {P}}}{\eta _{\mathrm {M}} \eta _{\mathrm {P}}} \mathrm {[ kW ] }\)
所要電力量:\(W_{\mathrm {M}}=P_{\mathrm {M}}T_{\mathrm {M}}\mathrm {[ kWh ] }\)

③揚水総合効率
\[
\eta =\frac {W_{\mathrm {G}}}{W_{\mathrm {M}}}\times 100\mathrm {[ % ] }
\]

本問においては,発電使用水量と揚水量が等しいので,発電時間と揚水時間が等しくなります。

【解答】

(1)解答:リ
発電時の有効落差\( \ H \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
H&=&H_{0}-h_{\mathrm {G}} \\[ 5pt ] &=&210-10 \\[ 5pt ] &=&200 \ \mathrm {[ m ] } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,発電機出力\( \ P_{\mathrm {G}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {G}}&=&9.8Q_{\mathrm {G}}H\eta _{\mathrm {G}}\eta _{\mathrm {T}} \\[ 5pt ] &=&9.8\times 50 \times 200 \times 0.98 \times 0.88 \\[ 5pt ] &≒&84515 \ \mathrm {[ kW ] } → 85 \ \mathrm {[ MW ] } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(2)解答:ハ
揚水運転時の全揚程\( \ \displaystyle H_{\mathrm {P}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
H&=&H_{0}+h_{\mathrm {P}} \\[ 5pt ] &=&210+10 \\[ 5pt ] &=&220 \ \mathrm {[ m ] } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)解答:ワ
発電と揚水のモードを変更するときは,(ワ)相反転断路器を使用します。(チ)並列遮断器(ヌ)同期投入装置は系統と並列する時に使用します。

(4)解答:ヲ
この発電所の揚水運転時の電動機入力\( \ \displaystyle P_{\mathrm {M}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {M}}&=&\frac { 9.8Q_{\mathrm {P}}H_{\mathrm {P}}}{\eta _{\mathrm {M}} \eta _{\mathrm {P}}} \\[ 5pt ] &=&\frac { 9.8\times 50\times 220}{0.98\times 0.88} \\[ 5pt ] &=&125000 \ \mathrm {[ kW ] } → 125 \ \mathrm {[ MW ] } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ト
発電時の時間と揚水時の時間が等しいので,総合効率\( \ \eta \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\eta &=&\frac {P_{\mathrm {G}}}{P_{\mathrm {M}}}\times 100 \\[ 5pt ] &=&\frac {84515}{125000}\times 100 \\[ 5pt ] &≒&67.6 \ \mathrm {[ % ] } → 68 \ \mathrm {[ % ] } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



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