《電力》〈火力〉[H24:問1]ガスタービンに使用される部品の材料及び劣化状況に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,コンバインドサイクル発電プラントの主要構成設備であるガスタービンに使用される部品の材料及び劣化状況に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

コンバインドサイクル発電プラントを構成する設備のうち,ガスタービンは\( \ \fbox {  (1)  } \ \)条件で使用されるため,材料の選定,保守には様々な配慮が必要となる。

ガスタービン部品のうちタービン翼など\( \ \fbox {  (1)  } \ \)にさらされ,かつ高い強度が求められる部分には,鉄\( \ \left( \mathrm {Fe}\right) \ \),ニッケル\( \ \left( \mathrm {Ni}\right) \ \),コバルト\( \ \left( \mathrm {Co}\right) \ \)をベースとした\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が用いられる。

ガスタービンの部品の劣化・損傷の形態としては,一定の温度,応力条件下において組織材料が時間とともに変化して材料固有の破断時間に達すると生じる\( \ \fbox {  (3)  } \ \)破断や,起動停止が繰り返し行われることで材料に熱的な負荷の増加減少が加わり,熱\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が生じることによる材料表面の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の発生がある。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 軽合金鋼     &(ロ)& 疲 労     &(ハ)& 伝 導 \\[ 5pt ] &(ニ)& 亀 裂     &(ホ)& 高 圧     &(ヘ)& 減 肉 \\[ 5pt ] &(ト)& 延 性     &(チ)& 高 温      &(リ)& 湿 り \\[ 5pt ] &(ヌ)& 超合金     &(ル)& クリープ     &(ヲ)& 形状記憶合金 \\[ 5pt ] &(ワ)& 腐 食     &(カ)& 変 形     &(ヨ)& 落 差 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

コンバインドサイクル発電におけるガスタービンの温度上昇は熱効率上昇に直結するため,タービン翼の材料に関しては非常に重要な要件となっています。しかしながら,機械的・材料的内容なので,電験としては少し厳しい問題かなという印象があります。

1.ガスタービン翼の開発
ガスタービン発電におけるタービン翼は非常に高温化にさらされる中で回転するため,日々その耐熱性に対する研究が進められています。
一般に鉄\( \ \left( \mathrm {Fe}\right) \ \),ニッケル\( \ \left( \mathrm {Ni}\right) \ \),コバルト\( \ \left( \mathrm {Co}\right) \ \)やモリブデン,その他レアメタル等も含め合金を作ります。その配合を検討したり,翼の冷却方式に対しても翼の空洞化させ空気冷却効率を上げたり,空気以上に冷却効果がある水冷却を検討したりしつつコストが上がりすぎないようにする等タービン翼に関する研究は日々続けられている状況です。


出典:NEDO実用化ドキュメント HP
https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201205mitsubishi_j/index.html

【解答】

(1)解答:チ
題意より解答候補は,(ホ)高圧,(チ)高温,(ワ)腐食,になると思います。ワンポイント解説「1.ガスタービン翼の開発」の通り,ガスタービン翼は\( \ 1500 \ \)℃級の高温条件で使用されます。

(2)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)軽合金鋼,(ヌ)超合金,(ヲ)形状記憶合金,になると思います。
軽合金とは鋼より軽い金属のことで,例えばアルミニウム\( \ \left( \mathrm {Al}\right) \ \),マグネシウム\( \ \left( \mathrm {Mg}\right) \ \),チタン\( \ \left( \mathrm {Ti}\right) \ \)等になります。
超合金とは耐熱性が求められる合金のことで鉄\( \ \left( \mathrm {Fe}\right) \ \),ニッケル\( \ \left( \mathrm {Ni}\right) \ \),コバルト\( \ \left( \mathrm {Co}\right) \ \)等になります。
形状記憶合金とはその名の通り,形状を記憶する合金で,ある温度以上になった時に元の形に戻る合金です。
したがって,適当なのは超合金となります。

(3)解答:ル
題意より解答候補は,(ト)延性,(ル)クリープ,等になると思います。延性破断は常温の状態において,荷重がかかり材料の変形を伴い破断する現象で,クリープ破断は高温の状態で応力(ガスタービンでいうと回転による応力)がかかり破断する現象です。

(4)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)疲労,(ロ)伝導,(ハ)落差,等になると思います。温度変化に伴う材料に加わる負荷を熱疲労と言います。熱伝導は同じ物質内を熱が伝わる熱の移動現象の一つで,熱落差は蒸気タービン等で用いられる,タービン入口蒸気と復水器温度の落差等を言います。

(5)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)亀裂,(ヘ)減肉,(ワ)腐食,(カ)変形,になると思います。熱により変形したり,蒸気タービンにおいては湿り蒸気となることで,減肉したり腐食したり等は考えられますが,熱疲労により生じるのは亀裂となります。



記事下のシェアタイトル