《機械》〈情報伝送及び処理〉[H24:問8]ラダー抵抗回路によるD-A変換回路に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,\( \ \mathrm {D-A} \ \)変換回路に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

計算機などの出力信号であるディジタル信号をアナログ信号に変換する回路は\( \ \mathrm {D-A} \ \)変換回路と呼ばれ,求められる変換の精度や変換時間などに応じて,さまざまな方式が採用される。

\( \ R-2R \ \)ラダー形は代表的な\( \ \mathrm {D-A} \ \)変換回路であり,二進数の各ビットに対して抵抗回路網のスイッチを切り換えて,出力電圧としてアナログ信号を得るものである。図の\( \ \mathrm {D-A} \ \)変換回路では,二進数\( \ \mathrm {[101]} \ \)は,\( \ \fbox {  (1)  } \ \mathrm {[V]} \ \)の出力を得ることになる。また,出力段の演算増幅器は\( \ \fbox {  (2)  } \ \)と呼ばれ,出力側からの干渉を防ぐためのバッファである。

さらに,スイッチの切換えに伴う望ましくない過渡電圧は\( \ \fbox {  (3)  } \ \)と呼ばれ,出力段には\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を設ける必要があるが,そのフィルタの時定数による大きな遅れを発生させる場合がある。そのため,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を出力段に設け,\( \ \mathrm {D-A} \ \)変換回路の入力を切り換える際の直前の出力を\( \ \fbox {  (5)  } \ \)で保持し,ノイズがなくなった時点で,その保持を解除させる制御を行う構成も採用される。

〔問8の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& パルス幅変調回路       &(ロ)& バッチ \\[ 5pt ] &(ハ)& 反転増幅回路       &(ニ)& グリッチ \\[ 5pt ] &(ホ)& ローパスフィルタ回路        &(ヘ)& 1.25 \\[ 5pt ] &(ト)& カルマンフィルタ回路     &(チ)& パルス \\[ 5pt ] &(リ)& 4.375     &(ヌ)& サンプルホールド回路 \\[ 5pt ] &(ル)& 高入力差動増幅回路     &(ヲ)& ハイパスフィルタ回路 \\[ 5pt ] &(ワ)& 周波数変換回路     &(カ)& ボルテージホロワ回路 \\[ 5pt ] &(ヨ)& 3.125 && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

ラダー抵抗回路は代表的な\( \ \mathrm {D-A} \ \)変換回路ですが,電験の教科書にはまず記載のない内容です。本問は選択問題なので,専門分野でない方は飛ばしても良いと思います。

1.ラダー抵抗回路の出力電圧
図1左のような回路があるとすると,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {o}}&=&V_{1}-2RI_{1} &・・・ ①& \\[ 5pt ] V_{\mathrm {o}}&=&V_{2}-2RI_{2} &・・・ ②& \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので\( (①+②)÷2 \)をすると,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {o}}&=&\frac {V_{1}+V_{2}}{2}-R\left( I_{1}+I_{2}\right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,図1右の回路に等価変換することができます。

これより,図2左のようなラダー回路の\( \ V_{\mathrm {C}} \ \)においても同様な変換をすることができ,図2右のような回路に変換できます。\( \ V_{\mathrm {B}} \ \),\( \ V_{\mathrm {A}} \ \)も同様に整理すると,出力\( \ V_{\mathrm {o}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {o}}&=&\frac {V_{\mathrm {A}}}{2}+\frac {V_{\mathrm {B}}}{4}+\frac {V_{\mathrm {C}}}{8} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

したがって,出力電圧の真理値表は下表のようになります。ただし,表において信号電圧は\( \ 5 \ \mathrm {V} \ \)が\( \ 1 \ \),\( \ 0 \ \mathrm {V} \ \)が\( \ 0 \ \)となります。
\[
\begin{array}{ccc|c}
\mathrm {A} & \mathrm {B} & \mathrm {C} & 出力 \ \mathrm {[V]} \\
\hline
0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0.625 \\
0 & 1 & 0 & 1.250 \\
0 & 1 & 1 & 1.875 \\
1 & 0 & 0 & 2.500 \\
1 & 0 & 1 & 3.125 \\
1 & 1 & 0 & 3.750 \\
1 & 1 & 1 & 4.375 \\
\end{array}
\]

【解答】

(1)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ヘ)1.25,(リ)4.375,(ヨ)3.125,になると思います。ワンポイント解説「1.ラダー抵抗回路の出力電圧」の通り,二進数\( \ \mathrm {[101]} \ \)の出力は,\( 3.125 \mathrm {V} \ \)となります。

(2)解答:カ
題意より解答候補は,(イ)パルス幅変調回路,(ハ)反転増幅回路,(ホ)ローパスフィルタ回路,(ト)カルマンフィルタ回路,(ヌ)サンプルホールド回路,(ル)高入力差動増幅回路,(ヲ)ハイパスフィルタ回路,(ワ)周波数変換回路,(カ)ボルテージホロワ回路,になると思います。出力段の回路はボルテージホロワ回路と呼ばれ,演算増幅器の性質である入力間の電圧差が\( \ 0 \ \)(バーチャルショート)であるため,増幅率\( \ 1 \ \)の回路であることがわかります。この回路により入力側と出力側を分離することができ,出力側からの干渉を防ぐことができます。

(3)解答:ニ
題意より解答候補は,(ロ)バッチ,(ニ)グリッチ,(チ)パルス,になると思います。スイッチの切換えに伴う過渡電圧をグリッチと呼びます。

(4)解答:ホ
題意より解答候補は,(イ)パルス幅変調回路,(ハ)反転増幅回路,(ホ)ローパスフィルタ回路,(ト)カルマンフィルタ回路,(ヌ)サンプルホールド回路,(ル)高入力差動増幅回路,(ヲ)ハイパスフィルタ回路,(ワ)周波数変換回路,(カ)ボルテージホロワ回路,になると思います。過渡電圧の周波数は高調波であり,高い周波数の電圧を除去するためのフィルタはローパスフィルタと呼ばれます。逆に低い周波数の電圧を除去するためのフィルタはハイパスフィルタと呼ばれます。カルマンフィルタは誤差のある観測値から状態を推定するフィルタです。

(5)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)パルス幅変調回路,(ハ)反転増幅回路,(ホ)ローパスフィルタ回路,(ト)カルマンフィルタ回路,(ヌ)サンプルホールド回路,(ル)高入力差動増幅回路,(ヲ)ハイパスフィルタ回路,(ワ)周波数変換回路,(カ)ボルテージホロワ回路,になると思います。入力を切り換える際の直前の出力を一定時間保持し,ノイズがなくなった時点で,その保持を解除させる制御を行うものをサンプルホールド回路と言います。



記事下のシェアタイトル