【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,火力発電所で用いられる集じん装置に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。
集じん装置には,\( \ \fbox { (1) } \ \),電気式,ろ過式,\( \ \fbox { (2) } \ \)がある。
\( \ \fbox { (1) } \ \)は単純な構造であるが,電気式と比較して微粒子の補集性能は劣る。ろ過式は圧力損失が大きく,\( \ \fbox { (2) } \ \)は多量の水を必要とすることなどから,近年の火力発電所では,一般的に電気式集じん装置を採用している。
電気式集じん装置では\( \ \fbox { (3) } \ \)を利用して含じんガス中の粒子に電荷を与え,\( \ \fbox { (4) } \ \)によって粒子を分離・補集する。電気式集じん装置は粒径\( \ \fbox { (5) } \ \)の微粒子まで捕集が可能である。
〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& アーク放電 &(ロ)& 酸化還元反応 &(ハ)& 0.1 \ \mathrm {\mu m} \ 以下 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 格子式 &(ホ)& 遠心式 &(ヘ)& 湿 式 \\[ 5pt ]
&(ト)& グロー放電 &(チ)& コロナ放電 &(リ)& クーロン力 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 吸着式 &(ル)& 10 \ \mathrm {\mu m} \ 程度 &(ヲ)& ファンデルワールス力 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 1 \ \mathrm {\mu m} \ 程度 &(カ)& 接触還元式 &(ヨ)& 電子線式 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
火力発電所における環境対策は非常に重要な分野となります。本問では電気式集塵装置以外の内容も出題されていますが,基本的には電気式集塵器を重点的に学習しておくと良いと思います。
【用語の解説】
(イ)アーク放電
気体中で放電することを言い,アーク溶接はアーク放電を利用した溶接技術です。
(ロ)酸化還元反応
化学反応のうちの一つで電験においては,電池の分野で出題されることが多いです。
(ニ)格子式
格子式の集じん装置はありませんが,石炭の燃焼方式としてストーカ式があります。
(ホ)遠心式
重量の違いによる遠心力の違いを利用して重いダストを回収する方式です。
(ヘ)湿式
液体を利用して排ガス中に含まれるダストや有害物質を回収する方式です。火力発電所では硫黄酸化物を除去するための冷却吸収塔に使用されます。
(ト)グロー放電
真空管などに電極を差し,直流電圧をかけると発生する放電で蛍光灯等に利用されます。
(チ)コロナ放電
電極間に電圧を印加すると発生する放電です。
(リ)クーロン力
クーロンの法則により,電荷間に発生する力です。\( \ \displaystyle F=\frac {Q_{1}Q_{2}}{4\pi \varepsilon _{0} r^{2}} \ \)は非常に重要な公式なので確実に覚えておきましょう。
(ヲ)ファンデルワールス力
分子間に働く力で日本語では分子間力とも呼ばれます。高校の化学で習います。
(カ)接触還元式
触媒により有害物質を回収する方法で,火力発電所ではアンモニア接触還元方式による\( \ \mathrm {NO_{x}} \ \)回収があります。
(ヨ)電子線式
電子線は様々に用途に利用されますが,火力発電所では一切利用はありません。
【解答】
(1)解答:ホ
(2)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ニ)格子式,(ホ)遠心式,(ヘ)湿式,(ヌ)吸着式,(カ)接触還元式,(ヨ)電子線式,となると思います。このうち,集じん装置にあるのは(ホ)遠心式と(ヘ)湿式ですが,問題文で「単純な構造であるが,電気式と比較して微粒子の補集性能は劣る。」となっているので(1)は(ホ)遠心式,「多量の水を必要とする」となっているので(2)は(ヘ)湿式となります。
(3)解答:チ
題意より,解答候補は(イ)アーク放電,(ト)グロー放電,(チ)コロナ放電となると思いますが,電気式集じん装置で利用するのはコロナ放電となります。
(4)解答:リ
題意より,解答候補は(リ)クーロン力,(ヲ)ファンデルワールス力となると思います。電気式集じん装置はクーロン力を利用して回収する装置です。
(5)解答:ハ
題意より,解答候補は(ハ)\( \ 0.1 \ \mathrm {\mu m} \ \)以下,(ル)\( \ 10 \ \mathrm {\mu m} \ \)程度,(ワ)\( \ 1 \ \mathrm {\mu m} \ \)程度になると思います。電気式集じん装置は非常に回収率が高く99%以上となっています。回収できる粒径も非常に小さい\( \ 0.1 \ \mathrm {\mu m} \ \)以下の粒子も回収することができます。