《電力》〈変電〉[H27:問2]変圧器投入時の励磁突入電流に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,変圧器の励磁突入電流に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

変圧器充電時における鉄心内の磁束は印加電圧の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)で表されるので,例えば電圧零の時点で電源が投入されると,最初の1サイクルの間に磁束は定常状態の磁束最大値の2倍に達し,飽和磁束密度を超えるので,過渡的に大きな電流が流入する。この電流を励磁突入電流という。変圧器投入時に鉄心内に\( \ \fbox {  (2)  } \ \)があり,それが印加電圧による磁束の変化と同一方向の場合には,両者が加算されるため更に大きな励磁突入電流となる。

このようにシフトした磁束は徐々に定常状態に戻っていき,それとともに励磁突入電流も落ち着くが,この継続時間は回路のインダクタンスと抵抗によって決まり,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)ほど長く,数十秒以上に及ぶことがある。

このように大きな突入電流による比率差動リレーの誤動作を防止するため,変圧器投入後,一定時間リレーをロックする方法や,突入電流に\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が多く含まれているので\( \ \fbox {  (4)  } \ \)抑制機能付比率差動リレーを用いる方法がとられる。

また,励磁突入電流による電圧変動を抑制するため,変圧器投入時の抵抗投入や\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の制御などを行うことがある。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 系統電圧     &(ロ)& 残留磁束     &(ハ)& 躯体が小さくなる \\[ 5pt ] &(ニ)& 振 動     &(ホ)& 積 分     &(ヘ)& 容量が大きくなる \\[ 5pt ] &(ト)& 過電流     &(チ)& 第三高調波     &(リ)& 投入位相 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 微 分     &(ル)& 鉄心が小さくなる      &(ヲ)& 負荷力率 \\[ 5pt ] &(ワ)& 第二高調波     &(カ)& 平 均     &(ヨ)& 第五高調波
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

励磁突入電流の最大の特徴は,第二調波が発生するというところで,これは励磁突入電流特有の特徴になります。したがって,励磁突入電流によるリレー誤動作防止のためには,時限措置を設けることと,第二調波成分に反応しないようにすることが有効となります。

1.励磁突入電流
変圧器に電源を投入する時に発生する突入電流で,以下の特徴があります。
 ・残留磁束と印加電圧の合成により発生する。
 ・第二調波成分を多く含む。
 ・残留磁束と同極性の電圧が位相差がなく印加された時最大となる。
 ・励磁突入電流の大きさは最大で定格の10倍以上となることがある。
 ・励磁突入電流の継続時間は小容量で数秒程度,大容量では10秒以上にもなる。

【関連する「電気の神髄」記事】

  励磁突入電流の理論

【解答】

(1)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)積分,(ヌ)微分,(カ)平均,になると思います。誘導起電力が磁束の微分になるので,変圧器充電時はその逆であり,鉄心内の磁束は印加電圧の積分となります。

(2)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)残留磁束,(ニ)振動,(ト)過電流,になると思いますが,ワンポイント解説「1.励磁突入電流」の通り,励磁突入電流の発生の原因は残留磁束と印加電圧の合成となります。

(3)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ハ)躯体が小さくなる,(ヘ)容量が大きくなる,(ル)鉄心が小さくなる,となりますが,ワンポイント解説「1.励磁突入電流」の通り大容量になるほど時間が長くなります。他の二つはどちらかというと,時間が短くなる方に働くと思います。

(4)解答:ワ
題意より,解答候補は(チ)第三高調波,(ワ)第二高調波,(ヨ)第五高調波,になると思います。励磁突入電流は第二調波成分を多く含みます。

(5)解答:リ
題意より,解答候補は(イ)系統電圧,(リ)投入位相,(ヲ)負荷力率,となりますが,最も有効なのは投入位相の制御で残留磁束と位相差が大きくなれば,励磁突入電流は小さくなります。



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