《電力》〈水力〉[H29:問1] 水力発電所の発電機の耐熱クラスとその特性に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,水力発電所の発電機の耐熱クラスに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

近年の水力発電所の発電機には,定格で連続運転したときに許容できる最高温度として,耐熱クラス\( \ 155 \ \)(\( \ \fbox {  (1)  } \ \))の電気絶縁システムが採用されている。これにより,耐熱クラス\( \ 130 \ \)(\( \ \mathrm {B} \ \))と比べて最高温度が高くできるため,巻線の電流密度を\( \ \fbox {  (2)  } \ \)ことができ,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を小さくできる。また,直列巻回数を増やし出力係数を大きくすることにより鉄心寸法を小さくできる。
その結果,発電機の小形化・軽量化が可能となり,建屋の小形化と,天井クレーンの吊り上げ荷重の減少化が図れる。また,発電効率は,負荷損の増加により\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の効率は低下するが,無負荷損の減少で\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の効率は向上する。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \mathrm {E}     &(ロ)& 電圧変動率     &(ハ)& 上げる \\[ 5pt ] &(ニ)& 同じにする     &(ホ)& 下げる     &(ヘ)& 全負荷時 \\[ 5pt ] &(ト)& 導体断面積     &(チ)& \mathrm {F}     &(リ)& オフピーク時 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 頂上電圧     &(ル)& 部分負荷時     &(ヲ)& ピーク時 \\[ 5pt ] &(ワ)& 冬季     &(カ)& 夏季     &(ヨ)& \mathrm {H}
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

内容は水力発電というより,機械科目の発電機そのものというような問題です。以下の耐熱クラスと負荷損・無負荷損を理解しておけば,比較的解きやすい問題と言えそうです。

1.耐熱クラス
耐熱クラスは\( \ \mathrm {JIS} \ \)で規定されており,下の通りとなります。
\( \ \mathrm {Y} \ \):\( \ 90 \ \)℃以上\( \ 105 \ \)℃未満
\( \ \mathrm {A} \ \):\( \ 105 \ \)℃以上\( \ 120 \ \)℃未満
\( \ \mathrm {E} \ \):\( \ 120 \ \)℃以上\( \ 130 \ \)℃未満
\( \ \mathrm {B} \ \):\( \ 130 \ \)℃以上\( \ 155 \ \)℃未満
\( \ \mathrm {F} \ \):\( \ 155 \ \)℃以上\( \ 180 \ \)℃未満
\( \ \mathrm {H} \ \):\( \ 180 \ \)℃以上\( \ 200 \ \)℃未満
私は「やあ,エビフライほしい?(\( \ \mathrm {YA,EBFH?} \ \))」と油温度をイメージしながら,語呂合わせで覚えています。

2.負荷損・無負荷損
三種は負荷損≒銅損,無負荷損≒鉄損でOKでしたが,二種ではもう少し細かい所まで理解しておいた方が無難です。
ⅰ.負荷損
 負荷電流の2乗に比例して増加する損失。大きいのは以下の2つ。
  銅損   :電機子巻線の抵抗による損失
  漂遊負荷損:漏れ磁束によって発生する損失
ⅱ.無負荷損
 負荷によらず一定の損失。主に鉄損でその内訳は以下の通り。
  ヒステリシス損:鉄心中の磁束の時間変化による磁区の方向変化により生じる損失
  渦電流損   :鉄心中の変化により渦電流が流れることによる損失

【解答】

(1)解答:チ
文脈から解答候補は(イ)\( \ \mathrm {E} \ \),(チ)\( \ \mathrm {F} \ \),(ヨ)\( \ \mathrm {H} \ \),になると思います。ワンポイント解説の「1.耐熱クラス」より,解答は\( \ \mathrm {F} \ \)の\( \ 155 \ \)℃となります。

(2)解答:ハ
文脈から解答候補は(ハ)上げる,(ニ)同じにする,(ホ)下げる,になると思います。耐熱温度が上がるということは,電流をより流せるようになるということなので,解答は(ハ)上げるとなります。

(3)解答:ト
文脈から解答候補は(ロ)電圧変動率,(ト)導体断面積,(ヌ)頂上電圧,になると思います。電流密度を大きくすることで,設備が小型化され,導体断面積が小さくなります。一方,外乱による電圧変動率は大きくなります。頂上電圧は関係ありません。

(4)解答:ヘ
(5)解答:ル
文脈から解答候補は(ヘ)全負荷時,(リ)オフピーク時,(ル)部分負荷時,(ヲ)ピーク時,(ワ)冬季,(カ)夏季,になると思います。このうち,(リ)オフピーク時,(ヲ)ピーク時,は一日の電力需要に関する話,(ワ)冬季,(カ)夏季,は季節変動に関する話なので,発電機単体では関係ありません。無負荷損が増加すると,低負荷時(部分負荷時)の損失割合が高くなります。逆に負荷損が増加すると高負荷時(定格負荷時)での損失が増大することになります。



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