《電力・管理》〈送電〉[H23:問5]電力系統の周波数変動に関する空欄穴埋・計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

電力系統の周波数変動に関し,次の問に答えなさい。

(1) 文中の\( \ \mathrm {A} \ \),\( \ \mathrm {B} \ \),\( \ \mathrm {C} \ \)及び\( \ \mathrm {D} \ \)の記号を付した空欄に当てはまる適切な語句を答案用紙に記入しなさい。

電力系統の周波数変動は,同期発電機における回転子の速度変動によって生じるが,回転子の速度は,原動機からの機械入力エネルギーと系統負荷への電気出力エネルギーとの不均衡によって変動する。例えば,入力エネルギーが出力エネルギーを上回った場合,発電機の回転子は\( \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {A}$ $\hskip 1em $} \ \)され,これにより系統周波数は\( \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {B}$ $\hskip 1em $} \ \)する。

電力系統の発電機は,回転速度が変動すると,\( \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {C}$ $\hskip 1em $} \ \)の働きにより原動機の機械入力を調節し,回転速度の変動を抑制しようとする機能がある。

一方,系統負荷は,周波数が上昇すると消費電力が\( \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {D}$ $\hskip 1em $} \ \)する性質がある。

この双方の作用により発電機の回転子のエネルギー不均衡は解消されて,電力系統の周波数は定常状態になる。

(2) 周波数変動\( \ \Delta f \ \)に対して,系統の発電電力が\( \ \Delta P_{\mathrm {G}} \ \)だけ調整されて定常状態になるとすれば,\( \ \Delta f \ \)と\( \ \Delta P_{\mathrm {G}} \ \)は①式の直線特性で表される。
\[
\begin{eqnarray}
\Delta P_{\mathrm {G}}&=&-K_{\mathrm {G}}\cdot \Delta f ・・・ ① \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ここで,\( \ K_{\mathrm {G}} \ \)を発電機の周波数特性定数といい,電力変化量を並列発電機の定格容量の和に対する百分率\( \ \mathrm {[%]} \ \)で表した\( \ % K_{\mathrm {G}} \ \)の値は,わが国の電力系統では\( \ 0.7~1.2 \ \mathrm {[%MW / 0.1Hz]} \ \)程度である。

周波数が\( \ \Delta f \ \)変動すると,系統負荷の消費電力が\( \ \Delta P_{\mathrm {L}} \ \)変動するものとすれば,\( \ \Delta f \ \)と\( \ \Delta P_{\mathrm {L}} \ \)は②式の直線特性で近似的に表される。
\[
\begin{eqnarray}
\Delta P_{\mathrm {L}}&=&K_{\mathrm {L}}\cdot \Delta f ・・・ ② \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ここで,\( \ K_{\mathrm {L}} \ \)を負荷の周波数特性定数といい,電力変化量を系統の総負荷容量に対する百分率\( \ \mathrm {[%]} \ \)で表した\( \ % K_{\mathrm {L}} \ \)の値は,わが国の電力系統では\( \ 0.2~0.4 \ \mathrm {[%MW / 0.1Hz]} \ \)程度である。

ある電力系統において,並列発電機の\( \ % K_{\mathrm {G}} \ \)が\( \ 1.0 \ \mathrm {[%MW / 0.1Hz]} \ \)であり,系統負荷の\( \ % K_{\mathrm {L}} \ \)が\( \ 0.2 \ \mathrm {[%MW / 0.1Hz]} \ \)であるとする。この系統の総発電容量の\( \ 5 \ \mathrm {[%]} \ \)の発電機が脱落した場合,残りの発電機で出力調整し,負荷電力が変動して安定状態となったときの系統周波数\( \ \mathrm {[Hz]} \ \)を求めなさい。ただし,脱落前の系統周波数を\( \ 50.0 \ \mathrm {[Hz]} \ \)とし,答の数値は小数点以下第\( \ 3 \ \)位までを求めることとする。

【ワンポイント解説】

(1)は知識を問う問題,(2)は速度調定率に関して文章を読解しながらその場で考え解く問題となっています。
どちらかというと\( \ 1 \ \)種に出題されやすい傾向の問題ですが,きちんと読解して正答を導けるようにしましょう。

1.速度調定率\( \ R \ \)
発電機の定格回転数\( \ N_{\mathrm {n}} \ \),回転速度の変化量\( \ \Delta N \ \)もしくは定格周波数\( \ f_{\mathrm {n}} \ \),周波数変化量\( \ \Delta f \ \)としたときの定格出力\( \ P_{\mathrm {n}} \ \),出力変化量\( \ \Delta P \ \)の比を速度調定率\( \ R \ \)と言い,
\[
\begin{eqnarray}
R &=& \frac {\displaystyle \frac {\Delta N}{N_{\mathrm {n}}}}{\displaystyle \frac {\Delta P}{P_{\mathrm {n}}}} \\[ 5pt ] &=& \frac {\displaystyle \frac {\Delta f}{f_{\mathrm {n}}}}{\displaystyle \frac {\Delta P}{P_{\mathrm {n}}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

(1)\( \ \mathrm {A} \ \),\( \ \mathrm {B} \ \),\( \ \mathrm {C} \ \)及び\( \ \mathrm {D} \ \)に当てはまる語句
(ポイント)
・基本的に発電機の入力エネルギーと出力エネルギーは常に一致し,回転数一定で運転する必要がありますが,事故等により急激な負荷変動が発生することがあります。
・入力エネルギーが出力エネルギーを上回ると回転子の回転速度が上昇するため,周波数も上昇します。一方,入力エネルギーが出力エネルギーを下回ると回転子の回転速度が減少するため,周波数も低下します。

(試験センター解答)
\( \ \mathrm {A} \ \):加速
\( \ \mathrm {B} \ \):上昇
\( \ \mathrm {C} \ \):調速機(ガバナ)
\( \ \mathrm {D} \ \):増加

(2)問題の条件において負荷電力が変動して安定状態となったときの系統周波数\( \ \mathrm {[Hz]} \ \)
発電機脱落後,発電電力は脱落直後の合計出力\( \ P_{\mathrm {G}} \ \)から\( \ \Delta P_{\mathrm {G}} \ \),負荷の消費電力は事故発生前の\( \ P_{\mathrm {L}} \ \)から\( \ \Delta P_{\mathrm {L}} \ \)変化して平衡状態となる。すなわち,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {G}} +\Delta P_{\mathrm {G}}&=& P_{\mathrm {L}}+\Delta P_{\mathrm {L}} \\[ 5pt ] P_{\mathrm {G}} -K_{\mathrm {G}}\cdot \Delta f&=& P_{\mathrm {L}}+K_{\mathrm {L}}\cdot \Delta f \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があり,発電機脱落前の平衡状態は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {G}}+5 &=& P_{\mathrm {L}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {G}} -K_{\mathrm {G}}\cdot \Delta f&=& P_{\mathrm {L}}+K_{\mathrm {L}}\cdot \Delta f \\[ 5pt ] P_{\mathrm {G}} -K_{\mathrm {G}}\cdot \Delta f&=& P_{\mathrm {G}}+5+K_{\mathrm {L}}\cdot \Delta f \\[ 5pt ] -K_{\mathrm {G}}\cdot \Delta f&=& 5+K_{\mathrm {L}}\cdot \Delta f \\[ 5pt ] -1.0 \Delta f&=& 5+0.2\Delta f \\[ 5pt ] -1.2\Delta f&=& 5 \\[ 5pt ] \Delta f&=& -\frac {5}{1.2} \\[ 5pt ] &≒& -4.17 \ \mathrm {[0.1 \ Hz]} \\[ 5pt ] &≒& -0.417 \ \mathrm {[Hz]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,安定後の系統周波数は\( \ 50.0-0.417=49.583 \ \mathrm {[Hz]} \ \)と求められる。

【本問に関する質疑応答】

  質問者様の解法がまずい理由



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