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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
架空地線付き送電線路において発生する雷事故に関し,次の問に答えよ。
(1) 雷事故は,発生メカニズムの違いにより,遮へい失敗事故と逆フラッシオーバ事故に大別される。それぞれの事故の発生メカニズムを簡潔に説明せよ。
(2) 架空送電線路において発生する雷事故の防止効果を高める対策を三つ挙げ,それぞれについて簡潔に述べよ。
【ワンポイント解説】
落雷により発生する過電圧に関する問題です。
\( \ 3 \ \)種の頃から何度も登場している内容なので,内容は頭に入っている方も多いと思います。しかしながら,いざ\( \ 1 \ \)から書き込んでみると意外と書けないこともあるので,普段の学習からご自身の文字で実際にノート等に書いてみる練習や他の人に説明するような練習をすることをお勧めします。
1.雷過電圧の種類
①直撃雷
図1のように送電線や機器に直接落雷する現象です。
過電圧の大きさは非常に大きく\( \ 100 \ \)万\( \ \mathrm {V} \ \)以上になり,がいしの絶縁耐力を超えフラッシオーバが発生します。
フラッシオーバをしないと機器に過電圧が加わるので,がいしの連結個数は適切にする必要があります。
②誘導雷
図2のように,帯電した雷雲(一般に夏季雷は負極性)が送電線に近づくと静電誘導により反対の極性の電荷が雷雲付近に集まり,落雷等で放電されると送電線に蓄えられていた電荷が一気に解放され,大きな電荷の移動が起こる現象です。
雷過電圧の中で最も発生数が多い特徴があります。
③逆フラッシオーバ
図3のように鉄塔や架空地線に落雷したときに,がいしの絶縁耐力を超え,送電線側に過電圧が侵入する現象です。
2.架空地線
<架空地線の役割>
架空地線は電線の上部、主に鉄塔の一番上に設ける裸電線で,以下のような役割があります。
①送電線への直撃雷を防止する。
②誘導雷を軽減する。
③通信線への電磁誘導障害を軽減する。
<架空地線落雷時の対策>
また,架空地線や鉄塔に落雷した際の逆フラッシオーバに対する対策として,以下のような対策が取られます。
①埋設地線で鉄塔と大地の接地抵抗を小さくする。
②アークホーンでがいしの損傷を防止する。(逆フラッシオーバ自体の対策ではありません。)
③2回線送電線におけるがいしの連結個数に差をつけて,両回線同時事故を防ぐ。
【解答】
(1)遮へい失敗事故と逆フラッシオーバ事故の発生メカニズム
(ポイント)
・遮へい失敗事故とは,架空地線による遮へいができず,送電線に直接落雷してしまう事故です。図4の遮へい角が大きいと遮へい失敗事故の可能性が高くなります。
・逆フラッシオーバは,ワンポイント解説「1.雷過電圧の種類」の通りです。
(試験センター解答例)
遮へい失敗事故:雷が電力線を直撃してアークホーンにフラッシオーバが発生する。
逆フラッシオーバ事故:架空地線あるいは鉄塔への雷撃によって架空地線あるいは鉄塔の電位が上昇し,架空地線と導体間,又はアークホーンにフラッシオーバが発生する。
(2)雷事故の防止効果を高める対策を三つとその説明
(ポイント)
・ワンポイント解説「2.架空地線」を含む雷事故の防止効果を高める対策を記載します。
・架空地線は重要な送電線には\( \ 2 \ \)条以上布設して,遮へい角を負にする対策等も取られます。
(試験センター解答例)
①架空地線の弛度を電力線のそれより小さくすることで,架空地線と導体間のフラッシオーバを低減する。
②埋設地線,深打ち電極及び接地シートなどにより鉄塔の塔脚接地抵抗を低減することで,鉄塔の電位上昇による逆フラッシオーバを低減する。
③架空地線を多条化することで,鉄塔の電位上昇による逆フラッシオーバを低減する。
④系統に過電圧が侵入した場合に,フラッシオーバが継続して送電線が遮断されるのを防止するため,送電用避雷装置を設置する。