《電力・管理》〈火力〉[H25:問1]自然循環ボイラに関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

汽力発電所で用いられている自然循環ボイラについて,次の問に答えよ。

(1) このボイラの原理を説明し,さらに使用圧力の適用範囲と理由を説明せよ。

(2) ボイラ給水ポンプから供給される給水が蒸気としてタービンに供給されるまでの流体のフローを以下の用語を用いて説明せよ。

(用語)
 ボイラ給水ポンプ,過熱器,降水管,節炭器,水管(水冷壁),汽水ドラム,蒸気タービン

(3) 貫流ボイラと比較した場合の自然循環ボイラの長所を二つ述べよ。

【ワンポイント解説】

汽力発電所で用いられているボイラには強制循環,自然循環,貫流のボイラがあります。本問は自然循環ボイラの内容でしたが,他の二つのボイラの特徴も理解しておくようにしましょう。

1.汽力発電所で用いられているボイラ
①自然循環ボイラ
 水と蒸気の比重差(水より蒸気が軽いので上に行く)を利用してボイラ水を循環させます。汽水ドラムで蒸気と水に分離されます。圧力が高くなると蒸気と水の比重差が小さくなるので,蒸気と水の比重差がなくなる臨界圧より低い圧力で採用されます。
②強制循環ボイラ
 ボイラの降水管に循環ポンプを設置して,ボイラ水を比重差のみでなくポンプの力も利用して循環させるボイラです。自然循環ボイラよりもボイラの高さを低くでき,管径も細くすることができます。その他の仕組みは自然循環ボイラと同じです。
③貫流ボイラ
 蒸気ドラムのような一旦ボイラ水を貯める場所がなく,給水から蒸発管,過熱器へと順次フローが進んでいくボイラです。超臨界圧での採用が可能となります。自然循環ボイラでは汽水ドラムのドレンとして不純物を排出することができますが,貫流ボイラでは蒸気ドラムがないため,給水の水質管理を厳格に行う必要があります。

【解答】

(1)自然循環ボイラの原理,使用圧力の適用範囲と理由
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.汽力発電所で用いられているボイラ」の通りです。

(試験センター解答例)
[原理]
汽水ドラムを有し,高温ガスから熱を吸収した水管内の汽水混合体と,火炉外部に設置された降水管内の水の密度差から生じる循環力を利用してボイラ水を循環させながら蒸気を得るボイラ。
[適用範囲]
自然循環ボイラは臨界圧力より低い亜臨界圧での適用となる。
[理由]
水管内の汽水混合体と降水管内の水の密度差は圧力が高くなると減少するため,蒸気圧力を高くするほど密度差のみで充分な循環力を得ることは難しくなる。このため,自然循環式の高圧大形ボイラにおいては,ボイラ高さを高くするとともに循環経路をできるだけ直管で構成し,水管径を比較的太くして管内抵抗を減少させることで循環力を確保する必要がある。更に,臨界圧力(22.06〔MPa〕)以上の圧力では水と蒸気の区別がなくなり,密度差もほとんどなくなることから循環させながら蒸気を得ることはできない。

(2)ボイラ給水ポンプから供給される給水が蒸気としてタービンに供給されるまでの液体のフロー
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.汽力発電所で用いられているボイラ」の図1の通りです。図1の内容を文章として記載すれば良いと思います。
・文章ではなく図として理解する方が良いと思います。

(試験センター解答)
ボイラ給水ポンプで供給される給水は煙道ガスの余熱を利用した節炭器で加熱され汽水ドラムに入る。水は火炉外部に設置された降水管によりボイラ下部に導かれて火炉内の水管(水冷壁)で燃焼ガスと熱交換し,水と蒸気の混合物になって汽水ドラムに戻る。汽水ドラムでは水と飽和蒸気を分離し,過熱器で飽和蒸気を過熱し蒸気タービンに供給する。分離された水は飽和蒸気になるまで循環する。

(3)貫流ボイラと比較した場合の自然循環ボイラの長所を二つ
(ポイント)
・汽水ドラムを持つメリットを記載すれば良いと思います。
・汽水ドラムを持つ分保有水量が多くなり,負荷変動に強い,水質管理が楽になる,ボイラの制御がしやすい等のメリットが挙げられると思います。

(試験センター解答例)
自然循環ボイラは貫流ボイラと比較して,
・構造が非常に単純なボイラ
・ボイラ制御が容易
・起動バイパス系統が不要
・ドラムでの給水処理(薬品注入やブロー)が可能なため,復水脱塩装置などの高度な水質管理対策が不要
・保有水量が多いのでボイラが万一消火しても各種パラメータに注意すれば若干の時間は低負荷による運転継続が可能
・保有水量が多いので負荷の急変などの変動に強い
・使用圧力が比較的低く,汽水の循環も自然対流によるので配管の圧力損失分の給水ポンプ動力が少なくてすむ



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