《電力・管理》〈送電〉[H22:問5]送電線路の自動再閉路方式に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章及び表は,送電線路の自動再閉路方式の概要に関する記述である。表中の\( \ \mathrm {A} \ \),\( \ \mathrm {B} \ \),\( \ \mathrm {C} \ \),\( \ \mathrm {D} \ \),\( \ \mathrm {E} \ \)及び\( \ \mathrm {F} \ \)の記号を付した空欄に記入すべき適切な語句又は文を答案用紙に記入しなさい。

ただし,\( \ \mathrm {A} \ \),\( \ \mathrm {B} \ \),\( \ \mathrm {C} \ \),\( \ \mathrm {D} \ \),\( \ \mathrm {E} \ \)及び\( \ \mathrm {F} \ \)は,各々同一語句又は文ではないこと。

送電線路の再閉路方式は,その目的と無電圧時間によって,表1のように区分される。また,遮断する相と再閉路の実施方法により,表2のように区分される。これらの各方式は送電線路の重要度,再閉路の目的,主保護方式の故障相判別性能などから最適な方式が選択適用される。

                  表 1
\[
\begin{array}{|c|l|l|}
\hline
再閉路方式 &    目 的 &       無電圧時間 \\
\hline
低速度再閉路 & ・ \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {A}$ $\hskip 1em $} \ & ・数秒~ \ 1 \ 分程度の無電圧時間をもって \\
& &  再閉路する。 \\
\hline
中速度再閉路 & ・ \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {A}$ $\hskip 1em $} \ & ・数秒~ \ 25 \ 秒程度の無電圧時間をもって \\
& &  再閉路する。 \\
& ・高速度再閉路条件 & ・無電圧時間の設定は,タービン発電 \\
&  不成立時の系統連 &  機軸振動の減衰や誘導電動機の残留 \\
&  系の維持 &  電圧減衰及び風雪害による \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {B}$ $\hskip 1em $} \ \\
& &  の減衰等を考慮する。 \\
\hline
高速度再閉路 & ・系統連系の維持 & ・ \ 0.4 \ 秒~ \ 1.0 \ 秒程度の無電圧時間を \\
& &  もって再閉路する。 \\
& ・ \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {C}$ $\hskip 1em $} \ & ・無電圧時間の設定は, \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {D}$ $\hskip 1em $} \ 時間 \\
& &  などを考慮する。 \\
\hline
\end{array}
\]

                  表 2
\[
\begin{array}{|c|l|}
\hline
再閉路方式 &         遮断相と再閉路実施方法 \\
\hline
三相再閉路 & ・事故様相にかかわらず,当該回線の故障により三相一括で \\
&  遮断し,再閉路条件成立により回線単位で再閉路する方式 \\
&  である。 \\
\hline
单相再閉路 & ・回線毎の \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {E}$ $\hskip 1em $} \ 故障に対し故障相のみ遮断し,残り \\
&  二相で電力の送受を行い,同期を保ちながら,故障後の \\
&  一定無電圧時間をもって再閉路する方式である。 \\
\hline
多相再閉路 & ・ \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {F}$ $\hskip 1em $} \ のみ遮断し, \ 2 \ 回線合計で二相以上の連系に \\
&  より電力の送受を行い,同期を保ちながら,故障後の一定 \\
&  無電圧時間をもって再閉路する方式である。 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

送電線路の自動再閉路方式に関する問題です。
電験のテキストには掲載が少なく専門書では掲載がある内容ですが,空欄穴埋問題で部分点も考慮されないため,受験生にとってはかなり厳しい問題であったかなと思います。

1.再閉路方式の速度による分類
①低速度再閉路
数秒から\( \ 1 \ \)分程度の無電圧時間をもって再閉路する方式です。すべて三相再閉路方式となります。系統復旧の自動化や迅速化を目的としています。

②中速度再閉路
数秒から\( \ 25 \ \)秒程度の無電圧時間をもって再閉路する方式です。三相再閉路方式もしくは単相再閉路方式があります。高速度再閉路条件不成立時の系統連系維持と系統復旧の自動化を目的としています。
無電圧時間の設定は,タービン発電機軸振動の減衰や誘導電動機の残留電圧減衰,風雪害による電線振動の減衰等を考慮します。

③高速度再閉路
\( \ 0.4 \ \)秒から\( \ 1.0 \ \)秒程度の無電圧時間をもって再閉路する方式です。三相再閉路方式,単相再閉路方式,多相再閉路方式があります。系統連系維持と系統の過渡安定度向上を目的としています。
無電圧時間の設定は,消アークイオン時間等を考慮します。

2.高速再閉路方式の種類とその特徴
①三相再閉路方式
 事故相,健全相関係なく回線毎に遮断と再閉路を行う方式です。再閉路時に同期を確認する必要があります。
 健全相からの誘導がないため,無電圧時間を短くできる,装置の構成が単純にできるという特徴があります。平行二回線では健全な回線の潮流や位相角の検出を行うことで高速再閉路は可能となりますが,一回線送電線では各系統の同期を確認して再閉路を行う必要があるため,高速再閉路にすることはできません。

②単相再閉路方式
 \( \ 1 \ \)線地絡事故時に事故相のみを遮断し,事故収束後再閉路する方式です。再閉路時の同期検定を必要としませんが,健全相が残っているためその誘導により消イオン時間が長くなり,再閉路に時間を要します。
 装置がやや複雑になりますが,一回線送電線にも適用でき,三相再閉路方式よりも\( \ 1 \ \)線地絡事故時の過渡安定度が高くなります。

③多相再閉路方式
 あらゆる事故に対し事故相のみを遮断し,再閉路する方式です。過渡安定度の面で信頼性が高いため主幹系統で利用されていますが,事故相のみを確実に遮断するという高い信頼性が求められ,保護形式が複雑になります。一般に再閉路の条件は,二回線六相のうち健全相の相数が二相以上かつ両回線の異なる相が残っていることとなっています。

【解答】

\( \ \mathrm {A} \ \):系統の自動復旧(系統復旧の自動化)
\( \ \mathrm {B} \ \):電線振動
\( \ \mathrm {C} \ \):系統(過渡)安定度の向上
\( \ \mathrm {D} \ \):消アークイオン(アーク及びイオン消滅)
\( \ \mathrm {E} \ \):一相地絡(一線地絡)
\( \ \mathrm {F} \ \):\( \ 2 \ \)回線にわたる一相以上の故障に対し故障相



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