《電力・管理》〈水力〉[H26:問1]フランシス水車における水撃作用に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

フランシス水車を設置するダム水路式水力発電所における水撃作用について,次の問に答えよ。

(1) 水撃作用が発生する主な原因を説明せよ。

(2) 設計段階で水撃作用に対する機械的強度の確保や対策設備の設置を考慮しなかった場合,水車及び水路のどのような部分に被害の発生が考えられるか説明せよ。

(3) この発電所で水撃作用による被害を避けるため,機械的強度の確保とは別に採用される,設備による対策事例を二つ挙げ,その設備名称,設備の設置場所及びその仕組みを説明せよ。

【ワンポイント解説】

水力発電所のフロー図とそれぞれの目的を理解していれば,比較的容易に解ける問題であるため,本問を選択した受験生は多いと思います。

1.水力発電所の主要設備
①取水口
 水を取り入れる設備です。
②沈砂池
 流速を下げ,流水中に含まれる土砂を沈殿させ,水車への土砂の流入を防止します。
③導水路
 取水口からヘッドタンク(水槽)までの水路で水路式では無圧水路,ダム式では圧力水路が一般的です。
④ヘッドタンクもしくはサージタンク
 水量供給変動を吸収する働きがあり,サージタンクにはさらに緊急遮断等で生じる水撃圧を吸収する働きがあります。
⑤水圧管路
 ヘッドタンクから水車へ導く管路で有圧管路となります。
⑥発電所
 水車と発電機からなる水力発電所の心臓部なる設備です。
⑦放水路及び放水口
 水車から出た水を河川に戻す水路です。


出典:東京発電株式会社HP
https://tokyohatsuden.co.jp/service/hydro/

【解答】

(1)水撃作用が発生する主な原因
(ポイント)
・送電線事故等により負荷の需給バランスが取れなくなると,タービン発電機が回転数が乱れる。負荷が少なくなった場合は周波数が上昇し,タービン発電機の回転数が上昇する。
・発電所において,タービンや発電機の損傷は甚大な事故に繋がるため,定格回転数の111%以上となると非常調速機が働き,入口のガイドベーンを急閉する仕組みになっている。
・入口ガイドベーンが閉じるとそれまでタービンに流れていた水の運動エネルギーが圧力エネルギーとなり,水圧管路等を損傷させる可能性がある。

(試験センター解答例)
発電機や発電所構内事故あるいは送電線事故などにより,保護装置が発電機の負荷を自動遮断した場合,水車・発電機が危険な速度まで速度上昇しないよう,(調速機及び保護装置により)ガイドベーンを急速閉止する。この場合,流水を急激に停止させたことにより,運動エネルギー(水流による慣性)が圧力エネルギー(高圧力)となって,水撃が発生する。

(2)水撃作用により水車及び水路のどのような部分に被害の発生
(ポイント)
・ワンポイント解説のフローから,サージタンクがなかった場合,どの辺りに被害が生じるかを考えれば良い。

(試験センター解答例)
水撃作用の圧力変動により,水車のケーシング,水圧管路あるいは圧力トンネルを損傷するおそれがある。

(3)機械的強度の確保とは別に採用される,設備による対策事例を二つ挙げ,その設備名称,設備の設置場所及びその仕組みを説明
(ポイント)
・水撃作用の対策として,第一にサージタンクを圧力トンネルの途中又は末端に取り付ける。
・サージタンクとは別に,水圧調整装置としてペルトン水車にはデフレクタ,フランシス水車には制圧機を設ける。

(試験センター解答例)
① サージタンクを圧力トンネルの末端付近に設置し,水撃作用による圧力変動を吸収させる。
② 制圧機をケーシングあるいは水圧管路の末端に設置し,水圧が危険圧力まで上昇しないよう,調速機(ガバナー)によるガイドベーンの急速閉止に連動して,この制圧機の弁体を開放し,ケーシング及び水圧管路内の水圧を逃がす。



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