《電力・管理》〈送電〉[H27:問2]静止形無効電力補償装置(SVC,STATCOM)に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

電力用半導体を用いた静止形無効電力補償装置(SVC,STATCOM)について,次の問に答えよ。

(1) SVCは具体的にどのような目的に用いられるか,系統側,需要側の事例をそれぞれ一つずつ挙げよ。

(2) SVCの代表的な方式であるTCRとTSCについて,それぞれの動作原理と制御の特徴を簡潔に述べよ。

(3) STATCOM(自励式SVCあるいはSVG)の動作原理を述べよ。あわせて,TCR方式のSVCと比較した制御の特徴を簡潔に述べよ。

【ワンポイント解説】

二次受験者であればSVCと同期調相機や電力用コンデンサ,分路リアクトルとの比較ではほとんどの受験者が解けてしまうため,もう一歩突っ込んだ内容となっています。本問のように二次試験対策としては,テキスト+αの知識が求められますが,計算問題に自信があれば,論説問題は部分点狙いでも良いかもしれません。

1.静止形無効電力補償装置(SVC)
①TSC
 コンデンサと直列にサイリスタを接続して,サイリスタで開閉を行う方式で,コンデンサの個数単位による段階的な無効電力制御を行います。

②TCR
 図2のようにサイリスタを用いてリアクトル電流の位相制御をする方式です。コンデンサを並列に接続することで,進みから遅れまで連続的に変化させることができます。

③STATCOM
 図3のようにインバータを用いることにより,進みから遅れまで連続的に制御する方式で,PWM制御により低次高調波の抑制を図ることができます。
 

【解答】

(1)SVCの目的,系統側,需要側の事例
(ポイント)
・どちらも電圧変動に対する対策であるが,系統側では負荷変動や事故時の電圧維持,需要側では大型負荷に起動停止等の負荷変動に伴う電圧維持が求められる。

(試験センター解答例)
系統側:
設置点の送電系統の事故時の電圧維持による同期安定性を向上させるため。
配電系統の末端など,電源系統の弱い地域において,負荷変動などに起因する電圧変動を抑制するため。

需要側:
アーク炉,採石場のクラッシャー等の変動負荷による急激な電圧変動を抑制するため。
負荷で発生する無効電力をキャンセルして力率を改善するため。

(2)TCRとTSCの動作原理と制御の特徴
(ポイント)
・ワンポイント解説の通り。

(試験センター解答例)
・TCR は,サイリスタを用いてリアクトル電流の位相制御を行う方式で,誘導性(遅れ)の無効電力を連続的に制御できる。また,並列にコンデンサを接続することにより,進みから遅れの領域にわたる無効電力を連続的に変化させることができる。
・TSC は,サイリスタを用いてコンデンサの開閉を行う方式で,容量性(進み)の無効電力を制御できる。突入電流が流れない位相でオンオフ制御を行うため,無効電力は段階的にしか制御できない。

(3)STATCOMの動作原理と制御の特徴
(ポイント)
・ワンポイント解説の通り。

(試験センター解答例)
STATCOM は,自己消弧素子を用いた自励式変換器を用いることにより,進みから遅れまでの幅広い無効電力補償を,連続かつ高速で行うことができる。TCR 方式の SVC に比較して,系統電圧の低下時にも高い補償能力が得られるため,電圧安定性を高める効果に優れる。



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