《電力》〈送電〉[R01:問7]直流送電方式の利点と課題に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,直流送電方式の利点と課題に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

洋上風力や離島と本土系統を直流送電で連系する場合には,交流送電における海底ケーブルの\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の制約を受けずに送電電力を高めることができ,誘電体損失も小さいという特徴がある。また,架空送電においては,直流は交流に比べ対地電圧を低くすることができ,一般に鉄塔の高さを低くすることができる。例えば,交流送電と直流送電において,送電電力及び送電損失がそれぞれ等しい場合,直流中性点接地\( \ 2 \ \)線式(双極式)における送電線の対地電圧は,交流三相\( \ 3 \ \)線式の対地波高電圧に比べて\( \ \fbox {  (2)  } \ \)倍となる。ただし,各導体の抵抗の値は同じで,交流の場合,力率は\( \ 1 \ \)とする。

一方で,交直変換装置を必要とし,交流系統の電圧で転流動作を行う\( \ \fbox {  (3)  } \ \)変換器を用いる場合には,常に\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を消費する。このため,交流側には\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を補償する設備が必要である。直流は交流のように電流零点を通過しないため,事故電流を抑制又は遮断するには,交直変換装置の制御により行うか,大容量高電圧の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が必要となる。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 有効電力     &(ロ)& 直流リアクトル     &(ハ)& ジュール熱 \\[ 5pt ] &(ニ)& 進み無効電力     &(ホ)& 充電電流     &(ヘ)& \frac {1}{\sqrt {2}} \\[ 5pt ] &(ト)& \frac {1}{2}     &(チ)& 電食     &(リ)& 直流遮断器 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 遅れ無効電力     &(ル)& 他励式     &(ヲ)& 周波数 \\[ 5pt ] &(ワ)& 直流断路器     &(カ)& \frac {\sqrt{3}}{2}     &(ヨ)& 自励式 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

直流送電は様々なメリットがあるため,長距離送電に向いているという特徴があります。日本では北海道-本州間,紀伊水道の海底ケーブル,周波数変換所等を含めると,新信濃周波数変換所等があります。

1.直流送電の得失
<直流送電のメリット>
・安定度の問題がないため,送電線の熱的許容電流まで送電容量を増やせます。したがって,大容量の送電に有利です。
・無効電流による損失がないので,送電損失が少ないです。したがって,長距離送電に有利です。
・同容量のケーブルで,交流に比べ\(\sqrt {2}\)倍までの電圧を送電できます。
・電圧最大値が実効値と等しいので,絶縁強度を低減が図れます。
・静電容量による充電電流が流れないため,誘電損が発生しません。
・送電線が2条で良いため,建設コストが下がります。

<直流送電のデメリット>
・交直変換装置が必要です。
・交流のように零点がないため,高電圧・大電流の遮断が難しいです。
・変換装置から高調波が発生するため,フィルタや調相設備の設置が必要です。
・大地帰路方式において,電食が発生しやすいです。
・変圧器で電圧の変成ができません。

【解答】

(1)解答:ホ
題意より,解答候補は(ハ)ジュール熱,(ホ)充電電流,(チ)電食,等になると思います。ケーブルは対地静電容量が大きいので交流の場合充電電流が大きくなりますが,直流の場合はその制約を受けることがありません。

(2)解答:カ
直流の電力を\( \ P_{\mathrm {d}} \ \),線路損失を\( \ P_{\mathrm {dl}} \ \),電圧を\( \ V_{\mathrm {d}} \ \),電流を\( \ I_{\mathrm {d}} \ \)とし,交流の電力を\( \ P_{\mathrm {a}} \ \),線路損失を\( \ P_{\mathrm {al}} \ \),電圧(相電圧)を\( \ E_{\mathrm {a}} \ \),電流を\( \ I_{\mathrm {a}} \ \)とする。また,送電線1回線あたりの抵抗はどちらも\( \ r \ \)とする。直流に関しては,中性点接地\( \ 2 \ \)線式であるから,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {d}}&=&2V_{\mathrm {d}}I_{\mathrm {d}} \\[ 5pt ] P_{\mathrm {dl}}&=&2rI_{\mathrm {d}}^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,交流に関しては,力率\( \ 1 \ \)の三相\( \ 3 \ \)線式であるから,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {a}}&=&3E_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] P_{\mathrm {al}}&=&3rI_{\mathrm {a}}^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。題意より,電力も電力損失も等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
2V_{\mathrm {d}}I_{\mathrm {d}}&=&3E_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} &・・・・・・・・・ ①& \\[ 5pt ] 2rI_{\mathrm {d}}^{2}&=&3rI_{\mathrm {a}}^{2} &・・・・・・・・・ ②& \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。②より,
\[
\begin{eqnarray}
2rI_{\mathrm {d}}^{2}&=&3rI_{\mathrm {a}}^{2} \\[ 5pt ] 2I_{\mathrm {d}}^{2}&=&3I_{\mathrm {a}}^{2} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {d}}^{2}&=&\frac {3}{2}I_{\mathrm {a}}^{2} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {d}}&=&\sqrt {\frac {3}{2}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,これを①に代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
2V_{\mathrm {d}}I_{\mathrm {d}}&=&3E_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] 2V_{\mathrm {d}}\cdot \sqrt {\frac {3}{2}}I_{\mathrm {a}}&=&3E_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] 2V_{\mathrm {d}}\cdot \sqrt {\frac {3}{2}}&=&3E_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] V_{\mathrm {d}}&=&\sqrt {\frac {3}{2}}E_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。\( \ E_{\mathrm {a}} \ \)は実効値であるので,その波高値\( \ e \ \)は\( \ e =\sqrt {2}E_{\mathrm {a}} \ \)であるから,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {d}}&=&\sqrt {\frac {3}{2}}E_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] &=&\frac {\sqrt {3}}{2}e \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)解答:ル
題意より,解答候補は(ル)他励式,(ヲ)周波数,(ヨ)自励式,になると思います。交直変換装置のうち交流系統の電圧で転流動作を行うものを他励式,自己消弧能力がある半導体素子を用いるものを自励式と呼びます。

(4)解答:ヌ
題意より,解答候補は(イ)有効電力,(ニ)進み無効電力,(ヌ)遅れ無効電力,になると思います。交直変換装置に他励式変換器を用いる場合,遅れ無効電力を常に消費します。

(5)解答:リ
題意より,解答候補は(ロ)直流リアクトル,(リ)直流遮断器,(ワ)直流断路器,になると思います。直流の事故電流の遮断には直流遮断器が必要となります。



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