《電力》〈送電〉[H23:問4]保護リレーの考え方や試験時の対策に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,保護リレーに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

図のような系統に,通常時において図中の一点鎖線で示した保護範囲を持つ保護リレーが設置されている場合について考える。三相短絡事故が発生する位置を変化させていった場合,変電所\( \ \mathrm {A} \ \)に設置されている保護リレーがみる電圧\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)の変化のグラフは\( \ \fbox {  (1)  } \ \)のようになり,電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)の変化は\( \ \fbox {  (2)  } \ \)のようになる。グラフの横軸の\( \ \mathrm {X} \ \),\( \ \mathrm {Y} \ \),\( \ \mathrm {Z} \ \)は図の母線\( \ \mathrm {X} \ \),\( \ \mathrm {Y} \ \),\( \ \mathrm {Z} \ \)の位置を表している。このように事故点により,保護リレーがみる電圧\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \),電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)は変化するため,送電線保護リレーの設置者は保護リレーに入力される電圧,電流を計算したうえで,適切な保護範囲となるようにする必要がある。

また,図の変圧器保護リレーを試験等により装置ロックした状態で送電を継続する場合,可搬型のリレーの設置や,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を変更するなどの措置によりロックされた変圧器保護リレーの保護範囲が無保護にならないようにする必要がある。その際には保護リレーの\( \ \fbox {  (5)  } \ \)をチェックすることが重要である。ただし,変圧器のインピーダンスは送電線のインピーダンスに比べて大きいものとし,各保護範囲のリレーの\( \ \mathrm {CT} \ \),\( \ \mathrm {VT} \ \)の設置点は以下のとおりとし,遮断点は\( \ \mathrm {CT} \ \)に隣接する遮断器とする。

(送電線保護\( \ \mathrm {1} \ \)) \( \ \mathrm {CT} \ \):送電線\( \ \mathrm {1} \ \)(変電所\( \ \mathrm {A} \ \)構内),\( \ \mathrm {VT} \ \):母線\( \ \mathrm {X} \ \)
(変圧器保護)   \( \ \mathrm {CT} \ \):変圧器の一次側と二次側
(母線保護)    \( \ \mathrm {CT} \ \):変圧器の二次側及び送電線\( \ \mathrm {2} \ \)の各線路(変電所\( \ \mathrm {B} \ \)構内)
          \( \ \mathrm {VT} \ \):母線\( \ \mathrm {Z} \ \)
(送電線保護\( \ \mathrm {2} \ \)) \( \ \mathrm {CT} \ \):送電線\( \ \mathrm {2} \ \)の各線路(変電所\( \ \mathrm {B} \ \)構内),\( \ \mathrm {VT} \ \):母線\( \ \mathrm {Z} \ \)

〔問4の解答群〕

\[
\begin{eqnarray}
&(ト)& 遮断点       &(チ)& 整定値      &(リ)& 遮断点の抜けがないこと \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
&(ヌ)& 母線保護      &(ル)& 送電線保護 \ 2 \ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
&(ヲ)& リレー入力(\mathrm {VT},\mathrm {CT})配線の共用がないこと            &(ワ)& 送電線保護 \ 1 \ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
&(カ)& リレー入力(\mathrm {VT},\mathrm {CT})の配線         &(ヨ)& 時限協調が取れていること \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

保護リレーの考え方に関する問題です。
電験\( \ 1 \ \)種に出題されやすいような内容で,電験\( \ 2 \ \)種の内容としてはやや高度な内容であったかと思います。
考え方はそれほど難しくないので,一度マスターしておくと二次試験にも役立つ内容となるかと思います。

1.三相短絡電流\( \ I _{\mathrm {S}} \ \)の大きさ
系統のある地点における三相短絡電流\( \ I _{\mathrm {S}} \ \mathrm {[A]} \ \)の大きさは,系統の電圧を\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \),事故点から電源側を見たインピーダンスを\( \ Z \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
I _{\mathrm {S}}&=&\frac {\displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}}}{Z} \\[ 5pt ] &=&\frac {V}{\sqrt {3}Z} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

【解答】

(1)解答:ロ
電源の相電圧\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \),\( \ \mathrm {X} \ \)から電源側のインピーダンスを\( \ Z_{1} \ \),\( \ \mathrm {X} \ \)から事故点までのインピーダンスを\( \ Z_{2} \ \)とすると,\( \ \mathrm {X} \ \)点の電圧は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {Z_{2}}{Z_{1}+Z_{2}}E \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,短絡事故点の位置が\( \ \mathrm {X} \ \)から離れれば離れるほど,\( \ Z_{2} \ \)が大きくなり,保護リレーがみる電圧\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)も大きくなります。
また,題意より変圧器のインピーダンスが送電線のインピーダンスより大きいので,\( \ \mathrm {Y} \ \)の位置から傾きが大きくなる(ロ)が正答となります。

(2)解答:ニ
ワンポイント解説「1.三相短絡電流\( \ I _{\mathrm {S}} \ \)の大きさ」の通り,三相短絡電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)は事故点から電源側を見たインピーダンスに反比例して大きくなります。
また,変圧器のインピーダンスが送電線のインピーダンスより大きいことから,\( \ \mathrm {Y} \ \)の位置から一気に減少していきます。したがって,(ニ)が正答となります。

(3)解答:ワ
題意より,解答候補は(ヌ)母線保護,(ル)送電線保護\( \ 2 \ \),(ワ)送電線保護\( \ 1 \ \),になると思います。
変圧器保護リレーをロックする場合には,その上位系統にある送電線保護\( \ 1 \ \)で変圧器を保護する必要があります。

(4)解答:チ
題意より,解答候補は(ト)遮断点,(チ)整定値,(カ)リレー入力(\( \ \mathrm {VT} \ \),\( \ \mathrm {CT} \ \))の配線,になると思います。
保護リレーをロックする場合には,その上位系統のリレーの整定値を変更することで,保護範囲を適切にすることが可能となります。

(5)解答:ヨ
題意より,解答候補は(リ)遮断点の抜けがないこと,(ヲ)リレー入力(\( \ \mathrm {VT} \ \),\( \ \mathrm {CT} \ \))配線の共用がないこと ,(ヨ)時限協調が取れていること,になると思います。
保護リレー設置の目的は事故の迅速除去と極小化にあり,保護協調として最も気を付けるのは時限協調が取れていることとなります。



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