《電力》〈送電〉[R06:問5]送電端と受電端における電圧の関係に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,送電端と受電端における電圧の関係に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

負荷の力率は,一般的には遅れ力率であるから,大きな負荷がかかっているときは,電流は電圧より位相が遅れている。一方,送電線のこう長が長く,負荷が非常に小さい場合,特に無負荷の場合には線路の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の影響が大きく,電流は進み電流,受電端電圧は送電端電圧\( \ \fbox {  (2)  } \ \)なる。この現象を\( \ \fbox {  (3)  } \ \)といい,送電線の単位長当たりの静電容量が大きいほど,また送電線のこう長が長いほどこの現象が著しくなる。これをベクトル図で表すと図\( \ \fbox {  (4)  } \ \)となる。

\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の防止対策としては,一般的に受電端で\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を投入することがあげられる。


〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 有効電流     &(ロ)& 分路リアクトル     &(ハ)& \mathrm {A} \\[ 5pt ] &(ニ)& 自己励磁現象     &(ホ)& と同じ大きさに       &(ヘ)& \mathrm {C} \\[ 5pt ] &(ト)& 直列リアクトル     &(チ)& 抵抗損失     &(リ)& 充電電流 \\[ 5pt ] &(ヌ)& フェランチ効果       &(ル)& よりも低く     &(ヲ)& 接地抵抗 \\[ 5pt ] &(ワ)& 外部過電圧     &(カ)& よりも高く     &(ヨ)& \mathrm {B} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

受電端電圧が送電端電圧よりも高くなる現象の原理とその対策に関する問題です。
\( \ 3 \ \)種の頃から何度も登場している内容なので,多くの受験生が完答したと考えられます。
本問に関しては二次試験で出題されても対応できるぐらいのレベルまで引き上げておきましょう。

1.フェランチ効果
送電線の受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象で,夜間・休日等軽負荷時,ケーブル等の静電容量が影響して,送電線電流が進み電流となった場合に生じることが多い現象です。
図2のように,通常時であれば,負荷はほぼ遅れ力率であるため,電流は電圧より位相が遅れ,青線のようなベクトル図となります。しかし,電流が進み電流になると,ベクトル図が赤線のような形となり,送電端電圧\( \ {\dot V}_{\mathrm {s}} \ \)が受電端電圧\( \ {\dot V}_{\mathrm {r}} \ \)よりも小さくなる現象が発生することがあります。

2.調相設備の種類
代表的な無効電力の調相設備には次の4種類があり,それぞれ下表のような特徴があります。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}
\hline
& 電力用コンデンサ & 分路リアクトル & 同期調相機 & 静止形無効電力補償装置\\
& & & & \mathrm {SVC}\\
\hline
調整能力 & \displaystyle {進相電力を吸収}\atop \displaystyle {(電流を進ませる)} & \displaystyle {遅相電力を吸収}\atop \displaystyle {(電流を遅らせる)} & 遅れから進みまで調整 & 遅れから進みまで調整 \\
\hline
調整 & 段階的 & 段階的 & 連続的 & 連続的 \\
\hline
コスト & 安 & 安 & 高 & 高 \\
\hline
保守性 & 容易 & 容易 & 頻雑 & 容易 \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

(1)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)有効電流,(チ)抵抗損失,(リ)充電電流,(ヲ)接地抵抗,になると思います。
ワンポイント解説「1.フェランチ効果」の通り,負荷が非常に小さい場合に影響が大きいのは対地静電容量であり,対地静電容量を流れる電流を充電電流といいます。

(2)解答:カ
題意より解答候補は,(ホ)と同じ大きさに,(ル)よりも低く,(カ)よりも高く,になると思います。
ワンポイント解説「1.フェランチ効果」の通り,負荷が非常に小さい場合には電流が進み電流になり,受電端電圧は送電端電圧よりも高くなります。

(3)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ニ)自己励磁現象,(ヌ)フェランチ効果,(ワ)外部過電圧,になると思います。
ワンポイント解説「1.フェランチ効果」の通り,軽負荷時に受電端電圧が送電端電圧よりも高くなる現象をフェランチ効果といいます。自己励磁現象も重要な内容で\( \ 3 \ \)種となりますが3種平成24年問6に出題されていますので,忘れてしまった方は確認しておいて下さい。外部過電圧は雷に起因する過電圧で,最近では法規科目となりますが令和5年法規科目問2で出題されています。

(4)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ \mathrm {A} \ \),(ヘ)\( \ \mathrm {C} \ \),(ヨ)\( \ \mathrm {B} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.フェランチ効果」の通り,フェランチ効果発生時のベクトル図は\( \ {\dot E}_{\mathrm {S}} \ \)が\( \ {\dot E}_{\mathrm {R}} \ \)より短いこと,\( \ \dot I \ \)が\( \ {\dot E}_{\mathrm {R}} \ \)より進みであること等から図\( \ \mathrm {A} \ \)となります。

(5)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)分路リアクトル,(ト)直列リアクトル,(ヲ)接地抵抗,になると思います。
ワンポイント解説「2.調相設備の種類」の通り,フェランチ効果の防止対策として,受電端に分路リアクトルを投入し,力率を改善することが有効となります。



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