《機械》〈誘導機〉[H19:問5]特殊かご形誘導電動機に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,特殊かご形誘導電動機に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

かご形誘導電動機の始動特性を改良するために考案された特殊かご形誘導電動機は,二次\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が自動的に始動時には大きくなり,運転時には小さくなるような構造となっている。

\( \ \fbox {  (2)  } \ \)かご形誘導電動機の回転子は,表面に近い外側導体に高抵抗材料を用い,中心に近い内側導体に低抵抗材料を用いている。始動時の二次周波数が高い間は,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)は外側のかご形導体に比べて,内側のかご形導体の方がはるかに大きいため,大部分の二次電流は高抵抗の外側導体を流れる。速度が上昇し,二次周波数が低くなると,大部分の二次電流は低抵抗の内側導体を流れるようになる。

\( \ \fbox {  (4)  } \ \)かご形誘導電動機の回転子は,スロットの形が半径方向に細長い構造となっている。始動時の二次周波数が高い間は,スロットの底に近い導体部分ほど多くの磁束と鎖交し,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)が大きくなる。したがって,導体中の電流は外周の近くに集中し,あたかも導体の断面が小さくなったのと同様の作用をして,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が増加する。速度が上昇するにしたがって二次周波数は低くなり,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)は次第に底部へ広がる。やがて同期速度付近では電流は導体中に一様に分布するようになるので,普通のかご形誘導電動機として動作する。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 漏れ電流       &(ロ)& 浅 溝     &(ハ)& 高抵抗 \\[ 5pt ] &(ニ)& 漏れ抵抗     &(ホ)& 深 溝     &(ヘ)& 始動抵抗 \\[ 5pt ] &(ト)& 内 外     &(チ)& 電流分布       &(リ)& 磁束分布 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 二 重     &(ル)& 有効電力     &(ヲ)& 電 界 \\[ 5pt ] &(ワ)& 実効抵抗     &(カ)& 細 溝     &(ヨ)& 漏れリアクタンス \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

特殊かご形誘導電動機の種類と特徴に関する問題です。
\( \ 3 \ \)種の頃から出題されてきた内容ですが,少し選択肢が絞りにくく分かっていても間違えてしまいそうな空欄があります。
(2)と(4)の空欄だけは間違えないようにしましょう。

1.特殊かご形電動機
三相誘導電動機のトルク\( \ T \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
T &=& \frac {1}{\omega _{\mathrm {s}}}\frac {3V_{1}^{2}\displaystyle \frac {r_{2}^{\prime }}{s}}{\left( r_{1}+\displaystyle \frac {r_{2}^{\prime }}{s}\right) ^{2}+\left( x_{1}+x_{2}^{\prime }\right) ^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求めることができ,その特性をグラフで表すと図1のようになります。
始動時は始動電流は大きいですが,図1より始動トルクが小さいことがわかります。特殊かご形電動機は始動電流を抑制した上で,適切な始動トルクを得るために回転子側の形状を工夫した電動機です。

①深溝かご形電動機
深溝かご形回転子の概要を図2に示します。図2に示すように深溝かご形回転子は回転子に深いスロットを設け,そこに導体を入れたような構造となっています。始動時回転子内の漏れ磁束は外側ほど小さくなり,始動時ほとんどの電流が導体の外側を流れ,抵抗が大きくなります。その後回転数が上がると,電流は一様に分布するようになり,抵抗が小さくなります。

②二重かご形電動機
二重かご形回転子の概要を図3に示します。図に示すように,二重かご形回転子は,内側と外側に二つの導体を入れ,外側の方を小さく,すなわち高抵抗となるようにします。始動時,深溝かご形回転子と同様に,外側ほど漏れ磁束が小さいので,ほとんどの電流が外側を流れます。その後,回転数が大きくなると,低抵抗である内側の導体を流れるようになります。

【解答】

(1)解答:ワ
題意より,解答候補は(イ)漏れ電流,(ニ)漏れ抵抗,(ワ)実効抵抗,(ヨ)漏れリアクタンス,等になると思います。
ワンポイント解説「1.特殊かご形電動機」の通り,特殊かご形誘導電動機は,二次実効抵抗が自動的に始動時には大きくなり,運転時には小さくなるような構造としています。後半の空欄の文章の方がより正答を導き出しやすいかもしれません。

(2)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ロ)浅溝,(ホ)深溝,(ト)内外,(ヌ)二重,(カ)細溝,等になると思います。
ワンポイント解説「1.特殊かご形電動機」の通り,表面に近い外側導体に高抵抗材料を用い,中心に近い内側導体に低抵抗材料を用いた構造としているのは二重かご形誘導電動機となります。

(3)解答:ヨ
題意より,解答候補は(イ)漏れ電流,(ヘ)始動抵抗,(ニ)漏れ抵抗,(ヲ)電界,(ワ)実効抵抗,(ヨ)漏れリアクタンス,等になると思います。
ワンポイント解説「1.特殊かご形電動機」の通り,始動時の二次周波数が高い間は,漏れ磁束による漏れリアクタンスは外側のかご形導体に比べて,内側のかご形導体の方がはるかに大きいです。

(4)解答:ホ
題意より,解答候補は(ロ)浅溝,(ホ)深溝,(ト)内外,(ヌ)二重,(カ)細溝,等になると思います。
ワンポイント解説「1.特殊かご形電動機」の通り,スロットの形が半径方向に細長い構造となっているのは深溝かご形誘導電動機となります。

(5)解答:チ
題意より,解答候補は(チ)電流分布,(リ)磁束分布,(ル)有効電力,(ヲ)電界,等になると思います。
ワンポイント解説「1.特殊かご形電動機」の通り,回転速度が上昇するにしたがって二次周波数は低くなり,電流分布が次第に底部へ広がっていきます。



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