《機械》〈情報伝送及び処理〉[H22:問8]電子計算機の固定磁気ディスク装置に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電子計算機の固定磁気ディスク装置に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選びなさい。

電子計算機の補助記憶装置として,固定磁気ディスク装置は広く使用されている。データは,表面に磁性体を塗ったアルミニウムやガラス製の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)と呼ばれる磁気ディスクを磁化させ,その磁化の方向で\( \ 0 \ \)と\( \ 1 \ \)の情報として記録される。読み書きの命令を受けてから読み書きの動作が終了するまでの時間をアクセス時間と呼び,次式で求められる。

  アクセス時間=\( \ \fbox {  (2)  } \ \)+データ転送時間+サーチ時間

最近では,補助記憶装置のアクセス速度の高速化や,耐障害性を確保することを目的として,複数台の固定磁気ディスク装置をまとめて管理するディスクアレイシステムが利用されている。これは\( \ \mathrm {RAID} \ \)システムとも呼ばれ,各種のレベルがあり,次のような主要なものがある。

\( \ \mathrm {RAID0} \ \):一連のデータを複数の固定磁気ディスク装置に分割して書き込む\( \ \fbox {  (3)  } \ \)と呼ばれる方法で,並行してデータの転送ができるのでアクセス時間を短縮できる。これは,高速化だけを目的としたレベルである。

\( \ \mathrm {RAID1} \ \):並列的に接続された\( \ 2 \ \)台の固定磁気ディスク装置に同じデータを同時に書き込む\( \ \fbox {  (4)  } \ \)と呼ばれる方法で,アクセス速度の向上は図れないものの,信頼性を確保できるレベルである。

\( \ \fbox {  (5)  } \ \):データを複数の装置に分割するとともに,データ回復用のパリティビットをそれぞれの装置に持ち合うことで,データの検証ができ,高速化だけでなく,信頼性も確保できるレベルである。

〔問8の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& セクタ     &(ロ)& リカバー     &(ハ)& チェーン \\[ 5pt ] &(ニ)& ストライピング       &(ホ)& プラッタ        &(ヘ)& クロック時間 \\[ 5pt ] &(ト)& サイクル時間     &(チ)& \mathrm {RAID5}     &(リ)& シーク時間 \\[ 5pt ] &(ヌ)& ミラーリング     &(ル)& \mathrm {RAID2}       &(ヲ)& シリンダ \\[ 5pt ] &(ワ)& \mathrm {RAID3}     &(カ)& ツリー     &(ヨ)& ポイント・ツー・ポイント \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電子計算機に使用される固定磁気ディスク装置(ハードディスク)に関する問題です。
基本情報技術者試験等を勉強されている方は比較的理解している内容かと思います。近年はパソコンの記憶装置も\( \ \mathrm {HDD} \ \)から\( \ \mathrm {SSD} \ \)に切り替わってきている印象がありますし,電験では出題されても選択問題なので,情報の勉強をされていない方は飛ばしてしまっても良いかもしれません。

1.固定磁気ディスク装置\( \ \left( \mathrm {HDD}\right) \ \)
パソコン等に搭載される記憶装置で,プラッタ(磁気ディスク)や磁気ヘッド等で構成されています。
大容量の記憶を比較的安価で実現することが可能ですが,回転しながら読み込むため近年主流の\( \ \mathrm {SSD} \ \)に比べ読み込みに時間がかかる,動作音がある,衝撃に弱い,寿命が短い,等の欠点があります。

2.固定磁気ディスク装置のアクセス時間
磁気ディスクにデータを読み書きするのに要する時間で,以下の3つの時間の合計となります。図と合わせて理解しておきましょう。

①シーク時間
磁気ヘッドがデータが存在する場所(トラック)に移動するまでに要する時間です。

②サーチ時間
磁気ディスクが回転し,必要なデータがある場所(セクタ)に移動するまでに要する時間です。平均サーチ時間はディスクが\( \ 0.5 \ \)回転するのに要する時間となります。

③データ転送時間
データを読み取るのにかかる時間です。データの量により長さが変わります。

3.\( \ \mathrm {RAID} \ \)システム
複数台の固定磁気ディスク装置\( \ \left( \mathrm {HDD}\right) \ \)をまとめて管理するディスクアレイシステムで,記憶の高速化及び冗長化を図るためのシステムです。

①\( \ \mathrm {RAID0} \ \)
データを複数の固定磁気ディスク装置に分散して記憶させることで読み込み速度・書き込み速度を上げるシステムです。ストライピングと呼ばれます。
冗長化されていないことから,\( \ 1 \ \)台でも磁気ディスクが故障した場合には読み込み・書き込みができなくなります。

②\( \ \mathrm {RAID1} \ \)
同じデータを\( \ 2 \ \)台の固定磁気ディスク装置に同時に記憶させるシステムで,例えどちらか\( \ 1 \ \)台が故障しても記憶が失われない特徴があります。ミラーリングと呼ばれます。
信頼性は向上しますが,容量が\( \ 2 \ \)倍必要となります。

③\( \ \mathrm {RAID5} \ \)
データを複数の固定磁気ディスク装置に分散し,それぞれの装置にパリティビットを設け,故障が発生してもパリティビットからデータを復元することができるシステムです。
高速性と信頼性をともに向上できる特長があります。

④\( \ \mathrm {RAID6} \ \)
\( \ \mathrm {RAID5} \ \)と同様の記憶方法でさらに各装置にパリティビット\( \ 1 \ \)つ追加したシステムで,\( \ \mathrm {RAID5} \ \)では\( \ 2 \ \)台の装置が故障した場合には復旧できなくなりますが,\( \ \mathrm {RAID6} \ \)では復旧可能となり,信頼性がさらに向上することになります。
信頼性が向上する分,高速性は\( \ \mathrm {RAID5} \ \)に劣り,容量も多く必要とします。

【解答】

(1)解答:ホ
題意より解答候補は,(イ)セクタ,(ホ)プラッタ,(ヲ)シリンダ,等になると思います。
ワンポイント解説「1.固定磁気ディスク装置\( \ \left( \mathrm {HDD}\right) \ \)」の通り,磁気ディスクはプラッタと呼ばれます。

(2)解答:リ
題意より解答候補は,(ヘ)クロック時間,(ト)サイクル時間,(リ)シーク時間,になると思います。
ワンポイント解説「2.固定磁気ディスク装置のアクセス時間」の通り,アクセス時間はシーク時間,サーチ時間,データ転送時間の合計となります。

(3)解答:ニ
題意より解答候補は,(ロ)リカバー,(ハ)チェーン,(ニ)ストライピング,(ヌ)ミラーリング,(カ)ツリー,(ヨ)ポイント・ツー・ポイント,等になると思います。
ワンポイント解説「3.\( \ \mathrm {RAID} \ \)システム」の通り,\( \ \mathrm {RAID0} \ \)において複数の固定磁気ディスク装置に分割して書き込む方法をストライピングといいます。

(4)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ロ)リカバー,(ハ)チェーン,(ニ)ストライピング,(ヌ)ミラーリング,(カ)ツリー,(ヨ)ポイント・ツー・ポイント,等になると思います。
ワンポイント解説「3.\( \ \mathrm {RAID} \ \)システム」の通り,\( \ \mathrm {RAID1} \ \)において\( \ 2 \ \)台の固定磁気ディスク装置に同じデータを同時に書き込む方法をミラーリングといいます。

(5)解答:チ
題意より解答候補は,(チ)\( \ \mathrm {RAID5} \ \),(ル)\( \ \mathrm {RAID2} \ \),(ワ)\( \ \mathrm {RAID3} \ \),等になると思います。
ワンポイント解説「3.\( \ \mathrm {RAID} \ \)システム」の通り,データを複数の装置に分割するとともに,データ回復用のパリティビットをそれぞれの装置に持ち合う\( \ \mathrm {RAID} \ \)システムは\( \ \mathrm {RAID5} \ \)となります。



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