【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,電気鉄道の電力回生車の導入に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。
直流電気鉄道においては,ブレーキ時に電動機を発電機として動作させ,電力を架線に戻す電力回生車の導入が増えている。しかしながら,通常の直流電気鉄道の変電所では,ダイオード整流器は直流側から交流側への\( \ \fbox { (1) } \ \)ができないため,電力回生車のブレーキの電力を\( \ \fbox { (2) } \ \)で消費しきれない場合には\( \ \fbox { (3) } \ \)を招くことになって,エネルギーの有効活用が阻害される。\( \ \fbox { (3) } \ \)防止策としては,自励整流装置やインバータなどを設備し,交流側へ\( \ \fbox { (1) } \ \)させる方法のほか,直流側に電力貯蔵装置を適用する方法がある。日本では電力貯蔵装置としてフライホイール,二次電池,\( \ \fbox { (4) } \ \)が実用化されている。
首都圏のように電車密度の稠密(ちゅうみつ)な路線では,回生車の電力は\( \ \fbox { (2) } \ \)で有効利用され,貯蔵装置は設置されていない。貯蔵装置は,電車の\( \ \fbox { (5) } \ \)が5~10分程度の都市近郊区間を中心に設置が進められている。現在我が国の直流電気鉄道では,変電所や鉄道沿線に20か所程度の電力貯蔵装置が設備されている(2013年度末)。
〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 単独運転 &(ロ)& 沿線配電負荷 &(ハ)& 燃料電池 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 停車時間 &(ホ)& 連続制御 &(ヘ)& 逆変換 \\[ 5pt ]
&(ト)& 回生失効 &(チ)& キャパシタ &(リ)& 電圧低下 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 力行車 &(ル)& 力行時間 &(ヲ)& 運行間隔 \\[ 5pt ]
&(ワ)& \mathrm {SMES} &(カ)& トロリ線 &(ヨ)& ブレーキ故障
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
電車線に関する問題ですが,実質用語に関する問題と言えると思います。本問にて初めて知る用語もあると思いますので,理解しておくようにしておいて下さい。
【用語の解説】
(イ)単独運転
電車の単独運転という言葉があるかわかりませんが,発電所で単独運転というと,事故等で系統と切り離された状態において発電所の運転を継続することを言います。
(ハ)燃料電池
負極に燃料(水素),正極に空気(酸素)を供給して,化学反応により電気エネルギーを取り出す電池です。
(ヘ)逆変換
直流から交流に変換することを逆変換,交流から直流に変換することを順変換と言います。
(ト)回生失効
回生制動をかける時に負荷(力行車)が足りずにブレーキができなくなることを言います。
(チ)キャパシタ
コンデンサのことで蓄電器です。
(ヌ)力行車,(ル)力行時間
力行は車でいうとアクセルをかけている状態のことです。
(ワ)\( \ \mathrm {SMES} \ \)
ある特定の材料を低温にした際に抵抗がほぼ零になる超伝導現象を利用した電力貯蔵装置です。
(カ)トロリ線
電車の上に通っている架線のことを言います。
【解答】
(1)解答:ヘ
用語の解説の通り,直流から交流に変換することを逆変換と言います。
(2)解答:ヌ
題意より解答候補は(ロ)沿線配電負荷,(ヌ)力行車,(ル)力行時間,となると思います。沿線配電負荷には逆変換には供給することができません。また,制動をかけた時の電気がそのまま力行として使用されなければ,ブレーキがかからなくなるので,力行車が正答となります。
(3)解答:ト
題意より解答候補は(イ)単独運転,(ト)回生失効,(リ)電圧低下,(ヨ)ブレーキ故障,になると思いますが,回生制動をかける際力行車が足りずブレーキがきかなくなることを回生失効と言います。
(4)解答:チ
題意より解答候補は(ハ)燃料電池,(チ)キャパシタ,(ワ)\( \ \mathrm {SMES} \ \),になると思います。このうち,実用化されているのはキャパシタです。燃料電池は常時水素を供給する必要があり,蓄電機能を持っているわけではありません。また,\( \ \mathrm {SMES} \ \)はこれから実現・実用化されるかもしれませんが,試験出題時には実用化されていません。
(5)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ニ)停車時間,(ヲ)運行間隔,になると思います。電力貯蔵装置は首都圏では常に多数の電車が走っているので不要であり,郊外ではコストメリットの関係で設置されていないことが多いです。したがって,運行間隔が5~10分程度の都市近郊区間で設置が進められています。