《機械》〈変圧器〉[H25:問2]三相変圧器の原理や特性に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,三相変圧器に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

定格容量\( \ 100 \ \mathrm {[kV\cdot A]} \ \),定格一次電圧\( \ 6 \ 600 \ \mathrm {[V]} \ \),定格二次電圧\( \ 200 \ \mathrm {[V]} \ \),定格周波数\( \ 50 \ \mathrm {[Hz]} \ \)の\( \ \mathrm {Y – \Delta } \ \)結線の三相変圧器がある。この変圧器を定格で使用したときの二次巻線の相電流は,\( \ \fbox {  (1)  } \ \mathrm {[A]} \ \)である。一次電圧と二次電圧との位相差は\( \ \fbox {  (2)  } \ \mathrm {[rad]} \ \)である。変圧器の励磁電流には,鉄心の非線形特性のために,高調波成分が含まれる。この内,電源周波数の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)倍の周波数成分は,三つの相で同相であり,二次巻線で還流する。

この変圧器の二次端子に\( \ 2 \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)の抵抗器\( \ 3 \ \)台を星形結線で接続し,一次端子に定格電圧を印加した。変圧器の短絡インピーダンス及び励磁電流を無視したとき,一次電流は,\( \ \fbox {  (4)  } \ \mathrm {[A]} \ \)となる。

この変圧器を同じ定格電圧の\( \ 60 \ \mathrm {[Hz]} \ \)で使用することは\( \ \fbox {  (5)  } \ \)。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 1.75     &(ロ)& できる     &(ハ)& \frac {\pi }{3} \\[ 5pt ] &(ニ)& 2     &(ホ)& 3     &(ヘ)& \frac {\pi }{6} \\[ 5pt ] &(ト)& 3.03     &(チ)& できない     &(リ)& 5 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 5.25     &(ル)& 167     &(ヲ)& 289 \\[ 5pt ] &(ワ)& 500     &(カ)& \frac {\pi }{4}     &(ヨ)& できるが容量が \ \frac {1}{1.2} \ 倍になる \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

\( \ 3 \ \)種受験者だと正答率が悪くやや難しいレベルの問題となりますが,\( \ 2 \ \)種受験者だと二次試験対策も行っているので,正答率が高くなる典型的な問題と言えると思います。変圧器は二次試験においても難解な計算が少ないので,本問の内容はよく理解しておくようにしましょう。

1.\( \ \mathrm {Y – \Delta } \ \)結線方式の特徴
\( \ \mathrm {Y – \Delta } \ \)結線方式は図1に示すような結線方式で,以下のような特徴があります。
① \( \ \Delta \ \)結線で第三調波成分を還流することができるので,二次側の電圧はひずみの少ない正弦波に近い波形となる。
② 一次,二次間の電圧で\( \ 30° \ \)の位相差がある。

2.変圧器の誘導起電力
一次側の巻数を\( \ N_{1} \ \),二次側の巻数を\( \ N_{2} \ \),電源の周波数を\( \ f \ \),磁束の最大値を\( \ \phi \ \)とすると,一次及び二次の誘導起電力\( \ E_{1} \ \)及び\( \ E_{2} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E_{1}&=&\frac {2\pi }{\sqrt {2}}fN_{1}\phi &=&4.44fN_{1}\phi \\[ 5pt ] E_{2}&=&\frac {2\pi }{\sqrt {2}}fN_{2}\phi &=&4.44fN_{2}\phi \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

(1)解答:ル
定格容量\( \ P_{\mathrm {n}} = 100 \ \mathrm {[kV\cdot A]} \ \),定格二次電圧\( \ V_{\mathrm {2n}} = 200 \ \mathrm {[V]} \ \)であるので,二次側の線電流\( \ I_{\mathrm {2n}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {2n}}&=&\frac {P_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}V_{\mathrm {2n}}} \\[ 5pt ] &=&\frac {100\times 10^{3}}{\sqrt {3}\times 200} \\[ 5pt ] &≒&288.68 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,相電流は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {I_{\mathrm {2n}}}{\sqrt {3}}&=&\frac {288.68}{\sqrt {3}} \\[ 5pt ] &≒&166.67 → 167 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(2)解答:ヘ
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {Y – \Delta } \ \)結線方式の特徴」の通り,一次電圧と二次電圧の位相差は\( \ 30° \ \)すなわち\( \ \displaystyle \frac {\pi }{6} \ \)となります。

(3)解答:ホ
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {Y – \Delta } \ \)結線方式の特徴」の通り,電源周波数の\( \ 3 \ \)倍の周波数成分は\( \ \Delta \ \)結線で還流することができます。

(4)解答:イ
問題文に沿って図を描くと図2のようになる。
二次側の負荷にかかる電圧\( \ E_{\mathrm {2n}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E_{\mathrm {2n}}&=&\frac {V_{\mathrm {2n}}}{\sqrt {3}} \\[ 5pt ] &=&\frac {200}{\sqrt {3}} \\[ 5pt ] &≒&115.47 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,二次側の線電流\( \ I_{\mathrm {2}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {2}}&=&\frac {E_{\mathrm {2n}}}{2} \\[ 5pt ] &=&\frac {115.47}{2} \\[ 5pt ] &≒&57.735 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。変圧器の巻数比を\( \ a \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
a&=&\frac {N_{1}}{N_{2}}=\frac {\displaystyle \frac {V_{\mathrm {1n}}}{\sqrt {3}}}{V_{\mathrm {2n}}}=\frac {\displaystyle \frac {I_{2}}{\sqrt {3}}}{I_{1}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があるから,
\[
\begin{eqnarray}
I_{1}&=&\frac {V_{\mathrm {2n}}}{\displaystyle \frac {V_{\mathrm {1n}}}{\sqrt {3}}}\cdot \displaystyle \frac {I_{2}}{\sqrt {3}} \\[ 5pt ] &=&\frac {V_{\mathrm {2n}}}{V_{\mathrm {1n}}}I_{2} \\[ 5pt ] &=&\frac {200}{6600}\times 57.735 \\[ 5pt ] &≒&1.7495 → 1.75 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ロ
ワンポイント解説「2.変圧器の誘導起電力」より,
\[
\begin{eqnarray}
E_{1}&=&\frac {2\pi }{\sqrt {2}}fN_{1}\phi &=&4.44fN_{1}\phi \\[ 5pt ] E_{2}&=&\frac {2\pi }{\sqrt {2}}fN_{2}\phi &=&4.44fN_{2}\phi \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] すなわち,
\[
\begin{eqnarray}
\phi &=&\frac {E_{1}}{4.44fN_{1}} \\[ 5pt ] \phi &=&\frac {E_{2}}{4.44fN_{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があり,変圧器の鎖交磁束は周波数に反比例する。したがって,周波数が大きくなる分には鉄心の磁気飽和は発生せず,使用上問題はない。



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