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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,同期電動機の始動法に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
同期電動機には以下のような始動法がある。
自己始動法は,回転子に施されている\( \ \fbox { (1) } \ \)巻線を,誘導電動機の二次巻線として始動トルクを発生させ,同期速度付近に達したとき,界磁巻線に直流励磁を与えて,\( \ \fbox { (2) } \ \)トルクによって同期化する方法である。始動時には,回転磁束により界磁巻線に高電圧を誘導し,その絶縁破壊の恐れがあるため,適当な抵抗を通じて界磁巻線を短絡しておく必要がある。この始動法の場合,定格電圧,定格周波数の電源電圧を直接加えて始動する全電圧始動と,始動時に始動電流を抑制するために,電動機電機子電圧を低減して始動する低減電圧始動がある。
始動電動機法は,主機と同軸に設備した小形の始動電動機によって主機を同期速度まで加速してから交流電源に接続して同期化させる方法である。始動電動機として\( \ \fbox { (3) } \ \)を用いる場合は,主機よりも\( \ 2~4 \ \)極程度極数が\( \ \fbox { (4) } \ \)ものが使われる。
\( \ \fbox { (5) } \ \)始動法は,始動用電源として可変周波数の電源を使用し,定格周波数の\( \ 25~30 \ \mathrm {%} \ \)の周波数で同期化し,その後,定格周波数まで周波数を上昇させてから主電源に同期投入する方法である。
〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 直流 &(ロ)& プルアップ &(ハ)& 多い \\[ 5pt ]
&(ニ)& 制動 &(ホ)& 直流機 &(ヘ)& スロット \\[ 5pt ]
&(ト)& 停動 &(チ)& 少ない &(リ)& 補償 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 可変周波 &(ル)& 交流整流子機 &(ヲ)& 低周波 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 引入れ &(カ)& 誘導機 &(ヨ)& 脱出 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
同期電動機の始動法に関する問題です。
同期電動機は回転数が低いとき,磁束が\( \ 180° \ \)回転する毎にトルクの向きが反転するため全体としてトルクが零となってしまい,始動時同期速度に到達するまでは何らかの形でトルクを発生させる必要があります。
\( \ 3 \ \)種にも比較的出題されている内容なので,できるだけ多く得点しておきたい問題です。
1.自己始動法
回転子の磁極面に施した制動巻線を利用して始動する方式です。制動巻線に発生するトルクにより始動させ,制動巻線はかご形誘導電動機の回転子と同じ原理で始動させます。
2.始動電動機法
三相同期電動機に直結した誘導電動機や直流電動機を用いて同期速度付近まで加速した後,界磁電流を流して励磁し同期する方法です。始動用の誘導電動機は,同期電動機よりも磁極数を\( \ 2 \ \)極少ないものを選定して,同期速度以上に加速できるようにします。
3.サイリスタ始動法
同期電動機をあらかじめ励磁しておき,サイリスタ変換装置により電動機の周波数を変化させることにより始動する方法です。
4.同期始動法
同期電動機と同期発電機を停止状態で接続し,同期発電機を始動して同期速度まで回転数を上昇させる方式です。ほかの同期発電機が使用できる場合に限り適用されます。
5.低周波始動法
周波数を可変させることができる電源を使用して始動する方式です。低周波のうちに同期化した後,励磁を与えて加速していきます。
【解答】
(1)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)制動,(リ)補償,等になると思います。
ワンポイント解説「1.自己始動法」の通り,自己始動法は回転子に施されている制動巻線を用いて始動する方法です。
(2)解答:ワ
題意より解答候補は,(ニ)制動,(ト)停動,(ワ)引入れ,(ヨ)脱出,等になると思います。
自己始動法にて始動し,回転子が同期速度付近に到達すると,回転磁界との速度差が小さくなるため,誘導電圧が小さくなります。このときに界磁巻線の短絡を開放し直流電流を流し,直流励磁すると回転子は同期速度に引入れされます。これを引入れトルクといいます。
停動トルクは誘導電動機で,トルクが一番大きくなる時のトルクで,本問とは関係ありませんが用語としては重要なので覚えておきましょう。
(3)解答:カ
題意より解答候補は,(ホ)直流機,(ル)交流整流子機,(カ)誘導機,になると思います。
ワンポイント解説「2.始動電動機法」の通り,始動電動機法で用いられるのは直流機と誘導機がありますが,同期機と極数を変えるのは誘導機となります。
(4)解答:チ
題意より解答候補は,(ハ)多い,(チ)少ない,になると思います。界磁磁束の同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)は,周波数\( \ f \ \),極数\( \ p \ \)を用いて
\[
\begin{eqnarray}
N_{\mathrm {s}}&=&\frac {120f}{p} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で求められるので,同期速度まで加速させるためには極数\( \ p \ \)が少ないものを選定する必要があります。
(5)解答:ヲ
題意より解答候補は,(イ)直流,(ヌ)可変周波,(ヲ)低周波,になると思います。
ワンポイント解説「5.低周波始動法」の通り,「始動用電源として可変周波数の電源を使用し,定格周波数の\( \ 25~30 \ \mathrm {%} \ \)の周波数で同期化し,その後,定格周波数まで周波数を上昇させてから主電源に同期投入する方法」は低周波始動法の説明そのものとなっています。