《機械》〈照明〉[R06:問6]照明に関係する物理量とそれぞれの関係に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,光の諸量に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

放射は電磁波として伝搬するエネルギーであり,ある面を単位時間に通過する放射エネルギーは放射束と呼ばれ,単位は\( \ \mathrm {W} \ \)である。一方,光は目を通して得られる感覚の強さであり,光に関する諸量は,一般的な物理量とは異なり,心理物理量と呼ばれる。

放射を,目の感度に基づくフィルタ(標準比視感度)を通して計測されたものは光束と呼ばれ,単位は\( \ \mathrm {lm} \ \)が用いられる。波長を\( \ \lambda \ \mathrm {[nm]} \ \)とすると,光束\( \ \varphi \ \mathrm {[lm]} \ \)は次式で表される。
\[
\begin{eqnarray}
\varphi &=& K_{\mathrm {m}}\int _{\lambda _{1}} ^{\lambda _{2}}V\left( \lambda \right) P\left( \lambda \right) \mathrm {d}\lambda   \ ・・・・・・・・・・・ ① \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ここで,\( \ \lambda _{1} \ \mathrm {[nm]} \ \),\( \ \lambda _{2} \ \mathrm {[nm]} \ \)はそれぞれ可視波長領域の短波長端と長波長端,\( \ P\left( \lambda \right) \ \mathrm {[W / nm]} \ \)は分光放射束(放射束の単位波長当たりのパワー),\( \ V\left( \lambda \right) \ \)は標準比視感度,\( \ K_{\mathrm {m}} \ \)は\( \ V\left( \lambda \right) \ \)が最大となる波長における放射束と光束の換算係数\( \ \left( 683 \ \mathrm {lm / W} \right) \ \)である。また,\( \ V\left( \lambda \right) \ \)のグラフは\( \ \fbox {  (1)  } \ \)のようになる。

光を出す物体(光源)からは様々な方向に光束が放射される。点とみなすことのできる光源(点光源)から,ある方向の単位立体角内に放射される光束は\( \ \fbox {  (2)  } \ \)と呼ばれ,単位は\( \ \mathrm {cd} \ \)が用いられる。一つの光源からあらゆる方向に放射される光束の合計は全光束と呼ばれ,全光束を\( \ \mathit {\Phi } \ \mathrm {[lm]} \ \)とすると,この光源の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の平均値\( \ I_{\mathrm {o}} \ \mathrm {[cd]} \ \)は次式のようになる。
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {o}} &=& \ \fbox {  (3)  } \ \  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ② \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] また,ある面に入射する光束の密度は照度と呼ばれ,単位は\( \ \mathrm {lx} \ \)である。点光源\( \ ( \ \fbox {  (2)  } \ I \ \mathrm {[cd]} ) \ \)から\( \ l \ \mathrm {[m]} \ \)離れた位置で,入射する光束に正対する面の照度\( \ E_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[lx]} \ \)は次式のようになる。
\[
\begin{eqnarray}
E_{\mathrm {n}} &=& \ \fbox {  (4)  } \  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ③ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] 次に,この面が光束に対して角度\( \ \theta \ \)だけ傾くと,面の照度\( \ E_{\theta } \ \mathrm {[lx]} \ \)は次式のようになる。
\[
\begin{eqnarray}
E_{\theta } &=& \ \fbox {  (5)  } \  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \frac {4\pi I}{l^{2}}     &(ロ)& E_{\mathrm {n}}\cos \theta      &(ハ)& \frac {\mathit {\Phi }}{2\pi } \\[ 5pt ] &(ニ)& E_{\mathrm {n}}\sin \theta      &(ホ)& \frac {\mathit {\Phi }}{\pi }     &(ヘ)& 光束発散度 \\[ 5pt ] &(ト)& E_{\mathrm {n}}     &(チ)&  輝度     &(リ)& \frac {I}{l^{2}} \\[ 5pt ] &(ヌ)& 光度     &(ル)& \frac {\mathit {\Phi }}{4\pi }     &(ヲ)& \frac {2\pi I}{l^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

照明に関係する物理量の知識を問う問題です。
\( \ 3 \ \)種では計算問題も出題されやすい照明分野ですが,\( \ 2 \ \)種では計算問題が少なくなり,その分幅広い知識を必要とする問題が出題されやすい傾向があります。
本問の内容はいずれも重要な内容となりますので,理解しておくようにして下さい。

1.光束\( \ F \ \)
光源から出る可視光の量(エネルギー)で,単位は\( \ \mathrm {[lm]} \ \)となります。
電磁気の分野の電束に似たようなイメージで良いです。

2.立体角の定義
図2のように球体があり,半径\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \)の錐体が球面を切り取った時の面積を\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)とすると,立体角\( \ \omega \ \mathrm {[sr]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\omega &=&\frac {S}{r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,平面角\( \ \theta \ \mathrm {[rad]} \ \)で表すと,
\[
\begin{eqnarray}
\omega &=&2\pi \left( 1-\cos \theta \right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。球全体の立体角は\( \ \theta = \pi \ \)の時であり,\( \ \omega =4\pi \ \)となります。

3.光度\( \ I \ \)
ある方向に向かう光束\( \ F \ \mathrm {[lm]} \ \)を立体角\( \ \omega \ \mathrm {[sr]} \ \)で割ったもので,光度\( \ I \ \mathrm {[cd]} \ \)を式で表すと,
\[
\begin{eqnarray}
I &=&\frac {F}{\omega } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

4.照度\( \ E \ \)
図4のように,光源からある方向へ向かう光度が\( \ I \ \mathrm {[cd]} \ \)であるとき,光源からの距離\( \ l \ \mathrm {[m]} \ \)離れた垂直面の照度\( \ E \ \mathrm {[lx]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E&=&\frac {I}{l^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。このように,一般に物理量が\( \ 2 \ \)乗に反比例する法則を逆\( \ 2 \ \)乗の法則といいます。

5.輝度\( \ L \ \)
図5のように,ある方向から見た光源のまぶしさを表す指標で,光源からある方向へ向かう光度が\( \ I \ \mathrm {[cd]} \ \)であるとき,輝度\( \ L \ \mathrm {[cd/m^{2}]} \ \)は,同じ方向から照明を見た投影面積を\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
L&=&\frac {I}{S} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

6.光束発散度\( \ M \ \)
光源・反射面・透過面等の単位面積あたりから発散する光束をいい,面積\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)から発散する光束を\( \ F \ \mathrm {[lm]} \ \)とすると,光束発散度\( \ M \ \mathrm {[lm/m^{2}]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
M&=&\frac {F}{S} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

7.水平面照度\( \ E_{\mathrm {h}} \ \)
図7のように,点光源から光度\( \ I \ \mathrm {[cd]} \ \)で\( \ \mathrm {C} \ \)点に向かって光が照射されているとき,法線照度\( \ E_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[lx]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E_{\mathrm {n}} &=&\frac {I}{r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で表され,水平面照度\( \ E_{\mathrm {h}} \ \mathrm {[lx]} \ \)は,\( \ E_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[lx]} \ \)の余弦であるから,
\[
\begin{eqnarray}
E_{\mathrm {h}} &=&E_{\mathrm {n}}\cos \theta \\[ 5pt ] &=&\frac {I}{r^{2}}\cdot \frac {h}{r} \\[ 5pt ] &=&\frac {hI}{r^{3}}
\end{eqnarray}
\] となります。

7.標準比視感度
人間の光に対する感度を表したものです。図8のように約\( \ 555 \ \mathrm {nm} \ \)を最大値として,波長によって異なる心理物理量の割合を示しています。

【解答】

(1)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ワ)のグラフ,(カ)のグラフ,(ヨ)のグラフ,になると思います。
ワンポイント解説「8.標準比視感度」の通り,標準比視感度は約\( \ 555 \ \mathrm {nm} \ \)を最大値とした(ヨ)のようなグラフとなります。

(2)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ヘ)光束発散度,(チ) 輝度,(ヌ)光度,になると思います。
ワンポイント解説「3.光度\( \ I \ \)」の通り,点光源からある方向の単位立体角内に放射される光束を光度といいます。

(3)解答:ル
題意より解答候補は,(ハ)\( \ \displaystyle \frac {\mathit {\Phi }}{2\pi } \ \),(ホ)\( \ \displaystyle \frac {\mathit {\Phi }}{\pi } \ \),(ル)\( \ \displaystyle \frac {\mathit {\Phi }}{4\pi } \ \),になると思います。
ワンポイント解説「2.立体角の定義」及び「3.光度\( \ I \ \)」の通り,全光束を\( \ \mathit {\Phi } \ \mathrm {[lm]} \ \)とすると,球全体の立体角は\( \ 4\pi \ \mathrm {sr} \ \)なので,この光源の光度の平均値は\( \ I_{\mathrm {o}}=\displaystyle \frac {\mathit {\Phi }}{4\pi } \ \mathrm {[cd]} \ \)となります。

(4)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)\( \ \displaystyle \frac {4\pi I}{l^{2}} \ \),(リ)\( \ \displaystyle \frac {I}{l^{2}} \ \),(ヲ)\( \ \displaystyle \frac {2\pi I}{l^{2}} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「4.照度\( \ E \ \)」の通り,光度\( \ I \ \mathrm {[cd]} \ \)で\( \ l \ \mathrm {[m]} \ \)離れた場所に入射する光束に正対する面の照度\( \ E_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[lx]} \ \)は\( \ \displaystyle \frac {I}{l^{2}} \ \)となります。

(5)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)\( \ E_{\mathrm {n}}\cos \theta \ \),(ニ)\( \ E_{\mathrm {n}}\sin \theta \ \),(ト)\( \ E_{\mathrm {n}} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「7.水平面照度\( \ E_{\mathrm {h}} \ \)」の通り,光束に対して角度\( \ \theta \ \)だけ傾いたときの面の照度\( \ E_{\theta } \ \mathrm {[lx]} \ \)は,\( \ E_{\theta }=E_{\mathrm {n}}\cos \theta \ \mathrm {[lx]} \ \)となります。



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