《機械》〈電気化学〉[R04:問6]リチウムイオン電池の特徴と反応に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電池に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

一つの電解質に接した\( \ 2 \ \)種類の電極を導線で結ぶと,一方の電極で酸化,もう一方の電極で還元反応が起こる。このように酸化還元反応に伴って\( \ \fbox {  (1)  } \ \)エネルギーを電気エネルギーに変える装置を電池(化学電池)という。

リチウムイオン電池は,携帯電話やノートパソコン,電気自動車などさまざまな用途に用いられる小型,軽量で起電力が高い\( \ \fbox {  (2)  } \ \)である。代表的なものとして,負極に黒鉛\( \ \mathrm {C} \ \)に取り込まれたリチウム,正極にはコバルト(Ⅲ)酸リチウム\( \ \mathrm {LiCoO_{2}} \ \)を用い,電解質としてはエチレンカーボネート(\( \ \mathrm {\left( CH_{2}O\right) _{2}CO} \ \))などの有機化合物にヘキサフルオロリン酸リチウム(\( \ \mathrm {LiPF_{6}} \ \))などの\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を溶かしたものを用いたものがある。

放電時には負極の活物質の電子が\( \ \fbox {  (4)  } \ \)して\( \ \mathrm {Li}^{+} \ \)が生じ,電解質を通り正極内の層間に入る。充放電の反応は次のとおりである。
 [負極]     \( \ \displaystyle \mathrm {LiC_{6} \array { 放電 \\ ⇄ \\ 充電 } Li^{+} + C_{6}+ e^{-}} \ \)
 [正極]     \( \ \displaystyle \mathrm {CoO_{2}+Li^{+} + e^{-}\array { 放電 \\ ⇄ \\ 充電 }LiCoO_{2}} \ \)
 [全体の反応] \( \ \displaystyle \mathrm { \ \fbox {  (5)  } \ \array { 放電 \\ ⇄ \\ 充電 }LiCoO_{2} + C_{6}} \ \)
である。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 化学     &(ロ)& アルカリ     &(ハ)& \displaystyle \mathrm {LiC_{6}+CoO_{2}+Li^{+}} \\[ 5pt ] &(ニ)& 一次電池       &(ホ)& クーロン     &(ヘ)& \displaystyle \mathrm {LiC_{6}+CoO_{2}+Li^{+}+ e^{-}} \\[ 5pt ] &(ト)& 熱       &(チ)& \displaystyle \mathrm {LiC_{6}+CoO_{2}}     &(リ)& 奪われて酸化 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 塩     &(ル)& 酸     &(ヲ)& 付加されて酸化 \\[ 5pt ] &(ワ)& 二次電池     &(カ)& 燃料電池     &(ヨ)& 奪われて還元 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

充電池であるリチウムイオン電池に関する問題です。
リチウムイオン電池は日常的に使用されていることから電験でも出題が多くなっています。
化学反応式が出題されたのは意外でしたが,反応式自体を覚えていなければならない問題はこれまで出題されていないため,正極と負極の反応から消去できる項を削除する形で正答を求めるようにしましょう。

1.リチウムイオン電池
リチウムイオンが移動することにより充放電を行うことから「リチウムイオン電池」と呼ばれます。エネルギー密度が非常に高く高い起電力を得ることができ,常温で使用可能なので,パソコンや携帯電話等日常的に扱うものにも多く採用されています。

①化学反応式(反応式は暗記不要です)
 正 極:\( \ \displaystyle \mathrm {CoO_{2}+Li^{+} + e^{-}\array { 放電 \\ ⇄ \\ 充電 }LiCoO_{2}} \ \)
 負 極:\( \ \displaystyle \mathrm {LiC_{6} \array { 放電 \\ ⇄ \\ 充電 } C_{6} + Li^{+}+ e^{-}} \ \)
 全 体:\( \ \displaystyle \mathrm {LiC_{6}+CoO_{2} \array { 放電 \\ ⇄ \\ 充電 }LiCoO_{2} + C_{6}} \ \)

②特徴
・エネルギー密度が高く(鉛蓄電池の約\( \ 5 \ \)倍),公称電圧も\( \ 3.6~3.7 \ \mathrm {V} \ \)と高い。
・浅い充電と放電を繰り返すことで電池の容量が減ってしまうメモリー効果という現象が発生しない。
・\( \ 500 \ \)回以上の充放電が可能で,高寿命である。
・高速充電が可能で,充放電効率も良い。
・液体を使用せず凍ることがないため,氷点下から\( \ 60 \ \)℃の高温まで使用可能である。
・充放電時における材料の不安定化により,発火・爆発等の危険性があるため,充放電時の監視保護が別に必要となる。

【解答】

(1)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)化学,(ホ)クーロン,(ト)熱,等になると思います。
電池は酸化還元反応で化学エネルギーを電気エネルギーに変える装置です。

(2)解答:ワ
題意より解答候補は,(ニ)一次電池,(ワ)二次電池,(カ)燃料電池,になると思います。
リチウムイオン電池のように,充放電可能な電池を二次電池と言います。一般的なマンガン乾電池やアルカリ乾電池等の充電ができない電池を一次電池と言います。

(3)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ロ)アルカリ,(ヌ)塩,(ル)酸,になると思います。
リチウムイオン電池の電解質を構成するヘキサフルオロリン酸リチウム(\( \ \mathrm {LiPF_{6}} \ \))は(えん)とよばれます。

(4)解答:リ
題意より解答候補は,(リ)奪われて酸化,(ヲ)付加されて酸化,(ヨ)奪われて還元,になると思います。
一般に電子を失う反応を酸化反応,電子を受け取る反応を還元反応と言い,負極の放電時の反応式を見ると,電子が失われているので奪われて酸化されていることが分かります。

(5)解答:チ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ \displaystyle \mathrm {LiC_{6}+CoO_{2}+Li^{+}} \ \),(ヘ)\( \ \displaystyle \mathrm {LiC_{6}+CoO_{2}+Li^{+}+ e^{-}} \ \),(チ)\( \ \displaystyle \mathrm {LiC_{6}+CoO_{2}} \ \),になると思います。
正極と負極の反応から,まとめるとリチウムイオン\( \ \displaystyle \mathrm {Li^{+}} \ \)と電子\( \ \displaystyle \mathrm { e^{-}} \ \)が消去されて,左辺が\( \ \displaystyle \mathrm {LiC_{6}+CoO_{2}} \ \)となることがわかります。



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