《電力》〈電気材料〉[R07下:問14]磁性材料の種類と損失に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

磁性材料に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 鉄,ニッケル,コバルト及びこれらの合金は強磁性体である。

(2) 強磁性体に交番磁界を加えると,ヒステリシス損と渦電流損とを含む鉄損が生じて発熱する。

(3) 交番磁界に対して,強磁性体中の磁束の周りに起電力が生じることでヒステリシス損が発生する。

(4) ヒステリシス損は,交番磁界の大きさと強磁性体中の磁束密度の大きさとの関係を示す軌跡曲線の囲む面積と交番磁界の周波数に比例する。

(5) 渦電流損は,厚さが薄く,表面を電気絶縁処理した強磁性体を,磁束方向に対して平行に積層する構造とすることで低減することができる。

【ワンポイント解説】

強磁性体の種類と特徴に関する問題です。内容としては理論科目や機械科目に出題されやすい内容と思います。
ヒステリシスループの内容や積層鉄心の内容は科目を跨いで出題される可能性がありますので,ここで合わせて理解しておきましょう。
本問は平成12年問9とほぼ同じ問題です。

1.強磁性体の磁化特性
鉄,ニッケル,コバルトのように外部の磁場により磁化されやすい物質を強磁性体と呼び,強磁性体の鉄心にコイルを巻き,交流電源に接続すると,磁界の変化により図1に示すような曲線を描きます。
この曲線をヒステリシス曲線(ヒステリシスループ)といい,磁界の大きさ\( \ H \ \mathrm {[A / m]} \ \)を大きくしてもこれ以上磁束密度\( \ B \ \mathrm {[T]} \ \)が増えない最大の磁束密度を飽和磁束密度\( \ B_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[T]} \ \),磁界の大きさ\( \ H \ \mathrm {[A / m]} \ \)を零にしても残る磁束密度を残留磁束密度(残留磁気)\( \ B_{\mathrm {r}} \ \mathrm {[T]} \ \),強磁性体の磁束密度\( \ B \ \mathrm {[T]} \ \)を零にするための磁界の大きさを保持力\( \ H_{\mathrm {c}} \ \mathrm {[A / m]} \ \)といいます。
このヒステリシス曲線を移動する際にヒステリシス損と呼ばれる面積に比例したエネルギーが消費され,その大きさ\( \ P_{\mathrm {h}} \ \mathrm {[W / kg]} \ \)は,比例定数\( \ K \ \),周波数\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \),最大磁束密度\( \ B_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[T]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {h}}&=&Kf{B_{\mathrm {m}}}^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

2.渦電流損
強磁性体内で交番磁界の磁束変化が起きると強磁性体内に起電力が生じ渦電流が生じます。これに伴って発生する損失を渦電流損と言い,以下の式で求められます。
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {e}} &≒& K_{\mathrm {e}}\left( tfB_{\mathrm {m}}\right) ^{2} \\[ 5pt ] &=& K_{\mathrm {e}}^{\prime }V^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
&&K_{\mathrm {e}},K_{\mathrm {e}}^{\prime }:比例定数, f:周波数 \\[ 5pt ] &&B_{\mathrm {m}}:最大磁束密度,V:電源電圧,t:鉄板の厚さ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] したがって,\( \ B_{\mathrm {m}} \ \)一定の時\( \ P_{\mathrm {e}} \ \)は\( \ f \ \)の\( \ 2 \ \)乗に比例し,\( \ V \ \)一定の時\( \ P_{\mathrm {e}} \ \)は\( \ f \ \)に関係なく一定となります。

【解答】

解答:(3)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.強磁性体の磁化特性」の通り,鉄,ニッケル,コバルト及びこれらの合金は強磁性体です。

(2)正しい
ワンポイント解説「1.強磁性体の磁化特性」及び「2.渦電流損」の通り,強磁性体に交番磁界を加えると,ヒステリシス損と渦電流損が生じます。ヒステリシス損と渦電流損を合わせて鉄損と呼び,これにより強磁性体は発熱します。

(3)誤り
ワンポイント解説「2.渦電流損」の通り,交番磁界に対して,強磁性体中の磁束の周りに起電力が生じることで発生する損失は渦電流損となります。

(4)正しい
ワンポイント解説「1.強磁性体の磁化特性」の通り,ヒステリシス損は,交番磁界の大きさと強磁性体中の磁束密度の大きさとの関係を示す軌跡曲線の囲む面積と交番磁界の周波数に比例します。

(5)正しい
ワンポイント解説「2.渦電流損」の通り,渦電流損は強磁性体中の磁束の周りに起電力が生じることで発生する損失なので,図3に示すように,厚さが薄く表面を電気絶縁処理した強磁性体を,磁束方向に対して平行に積層する構造とすることで低減することができ,積層鉄心と呼ばれます。