《法規》〈電気設備技術基準〉[R4上:問11]低圧電線路の絶縁耐力試験に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

定格容量\( \ 50 \ \mathrm {kV\cdot A} \ \),一次電圧\( \ 6 \ 600 \ \mathrm {V} \ \),二次電圧\( \ 210 / 105 \ \mathrm {V} \ \)の単相変圧器の二次側に接続した単相\( \ 3 \ \)線式架空電線路がある。この低圧電線路に最大供給電流が流れたときの絶縁性能が「電気設備技術基準」に適合することを確認するため,低圧電線の\( \ 3 \ \)線を一括して大地との間に使用電圧\( \ \left( 105 \ \mathrm {V}\right) \ \)を加える絶縁性能試験を実施した。

次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) この試験で許容される漏えい電流の最大値\( \ \mathrm {[A]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ 0.119 \ \)  (2) \( \ 0.238 \ \)  (3) \( \ 0.357 \ \)  (4) \( \ 0.460 \ \)  (5) \( \ 0.714 \ \)

(b) 二次側電線路と大地との間で許容される絶縁抵抗値は,\( \ 1 \ \)線当たりの最小値\( \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ 295 \ \)  (2) \( \ 442 \ \)  (3) \( \ 883 \ \)  (4) \( \ 1 \ 765 \ \)  (5) \( \ 3 \ 530 \ \)

【ワンポイント解説】

低圧電線路の絶縁耐力試験に関する問題です。
電気設備技術基準の知識が必須であること,また\( \ 3 \ \)線一括で電圧を加えており受験生を引っ掛けていること等かなり難解な問題となっています。
また図が一切与えられていないので,まずは落ち着いて図1に示すように出題されている内容を図に整理するようにして考えるようにしましょう。

1.低圧電線路の絶縁性能
低圧電線路の絶縁性能の値は電気設備に関する技術基準を定める省令(電気設備技術基準)に定められています。

<電気設備に関する技術基準を定める省令第22条>
低圧電線路中絶縁部分の電線と大地との間及び電線の線心相互間の絶縁抵抗は、使用電圧に対する漏えい電流が最大供給電流の\( \ 2 \ 000 \ \)分の\( \ 1 \ \)を超えないようにしなければならない。

【解答】

(a)解答:(3)
題意に沿って図を描くと図1のようになる。
図1において,二次側の最大供給電流\( \ I_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[A]} \ \)は,定格容量\( \ P_{\mathrm {n}}=50 \ \mathrm {[kV\cdot A]} \ \),定格二次電圧\( \ V_{\mathrm {2n}}=210 \ \mathrm {[V]} \ \)であるから,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {m}} &=&\frac {P_{\mathrm {n}}}{V_{\mathrm {2n}}} \\[ 5pt ] &=&\frac {50\times 10^{3}}{210} \\[ 5pt ] &≒&238.1 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,各線で許容される漏れ電流\( \ I_{\mathrm {l}} \ \mathrm {[A]} \ \)は,ワンポイント解説「1.低圧電線路の絶縁性能」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {l}} &=&\frac {I_{\mathrm {m}}}{2000} \\[ 5pt ] &=&\frac {238.1}{2 \ 000} \\[ 5pt ] &≒&0.1191 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。したがって,試験時に許容される漏えい電流は,図1の電流計に流れる電流値\( \ I_{\mathrm {t}} \ \mathrm {[A]} \ \)であるから,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {t}} &=&3I_{\mathrm {l}} \\[ 5pt ] &=&3\times 0.1191 \\[ 5pt ] &≒&0.357 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(3)
図1より,二次側電線路と大地との間で許容される絶縁抵抗値\( \ R_{\mathrm {g}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
R_{\mathrm {g}} &=&\frac {V_{\mathrm {t}}}{I_{\mathrm {l}}} \\[ 5pt ] &=&\frac {105}{0.1191} \\[ 5pt ] &≒&882 \ \mathrm {[\Omega ]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。