《電力》〈火力〉[R06:問5]火力発電所における蒸気タービンの運転方法に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,火力発電所における蒸気タービンの運転方法に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

蒸気タービンの運転方法として,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を負荷にかかわらず一定とし,タービン入口の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)開度を調整することで出力を制御する定圧運転と,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)開度を一定に保ち,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を変えることによって出力を制御する変圧運転がある。

変圧運転を採用する効果として,次のようなことが挙げられる。

・部分負荷における\( \ \fbox {  (2)  } \ \)での\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を低減できるため,熱効率が向上する。

・部分負荷における\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の吐出圧力を低減できるため,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の軸動力が低減でき,熱効率が向上する。

・高圧タービンの排気温度(\( \ \fbox {  (5)  } \ \)入口蒸気温度)を高く保持できるため,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)での必要熱吸収量が減少し,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)出口の蒸気温度が低負荷でも高く保持できる。

・低出力でもタービンの温度低下がないため,タービンケーシング温度を高く保ったまま停止でき,\( \ \fbox {  (6)  } \ \)を短縮できる。

・部分負荷で圧力を下げるため,\( \ \fbox {  (7)  } \ \)。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 復水器損失     &(ロ)& 排ガス損失 \\[ 5pt ] &(ハ)& 主蒸気止め弁     &(ニ)& 復水ポンプ \\[ 5pt ] &(ホ)& 再熱蒸気圧力     &(ヘ)& 火炉圧力が高くなる \\[ 5pt ] &(ト)& 絞り損失     &(チ)& 煙突効果が大きくなる \\[ 5pt ] &(リ)& 過熱器     &(ヌ)& 蒸気加減弁 \\[ 5pt ] &(ル)& 節炭器     &(ヲ)& 缶水循環ポンプ \\[ 5pt ] &(ワ)& 給水ポンプ     &(カ)& 再熱器 \\[ 5pt ] &(ヨ)& インタセプト弁     &(タ)& 始動時間 \\[ 5pt ] &(レ)& 材料の寿命が長くなる          &(ソ)& 主蒸気圧力 \\[ 5pt ] &(ツ)& 停止までの時間 && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

蒸気タービンの部分負荷運転に関する問題です。
火力発電専門の方であれば常識的な内容となりますが,電気を管理する電気主任技術者が必要な知識としては少し疑問が残る内容となります。
過去問でも出題されたことがある内容ですので,ここで理解しておきましょう。

1.再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図
図1に再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図を示します。

ボイラの過熱器から出た主蒸気は主蒸気止弁,蒸気加減弁を介して高圧タービンに送られ,高圧タービンで仕事をした後,再熱器に送られます。

再熱器で再加熱した再熱蒸気は再熱蒸気止弁,中間阻止弁(インタセプト弁)を介して中低圧タービンに送られ,中低圧タービンで仕事をした後,復水器で凝縮されます。

中低圧タービンは大型のプラントであれば,さらに中圧タービンと低圧タービンに分けられます。

主蒸気止弁は全開・全閉運用で蒸気を縁切りする弁,蒸気加減弁は調速装置と連動して高圧タービンに流入する蒸気の流量を調整する弁,再熱蒸気止弁は主蒸気止弁と同様全開・全閉運用で緊急時に再熱蒸気を遮断する弁,中間阻止弁(インタセプト弁)は通常時は全開運用ですがタービン回転数上昇とともに弁を閉じていく制御をする弁です。

2.蒸気タービンの変圧運転
汽力発電(特に負荷調整がしやすい液体燃料や気体燃料の発電)では定格運転のみでなく負荷需要に合わせ部分負荷運転を行います。

従来は部分負荷運転を行う際,蒸気加減弁で流量をコントロールし,発電機出力を調整する定圧運転が行われていましたが,「(出力)\( ∝ \)(蒸気圧力)\(\times \)(流量)」の関係から主蒸気圧力を制御し発電機出力を調整する変圧運転を行うようになりました。主蒸気圧力を下げることでタービンでの熱効率は下がってしまいますが,それ以上にその他の損失を低減できるため,全体としては熱効率は向上することになります。変圧運転の効果は以下の通りです。

・蒸気加減弁での絞り損失が減少する

・給水ポンプの吐出圧を下げることで必要動力が少なくなる

・高圧タービン出口蒸気温度を高く保つことができるので,連動して再熱蒸気温度を高くすることができ,中低圧タービンの入口温度を高くできる

・圧力が下がるので,配管等の材料への負担が小さくなる

・タービンケーシング温度を高く保ったまま停止ができるので,起動時間が短くなり,短時間での起動停止(\( \ \mathrm {DSS} \ \)運転)が可能となる。

【解答】

(1)解答:ソ
題意より解答候補は,(ホ)再熱蒸気圧力,(ト)絞り損失,(ソ)主蒸気圧力,になると思います。
ワンポイント解説「2.蒸気タービンの変圧運転」の通り,定圧運転は主蒸気圧力を一定として蒸気加減弁で主蒸気流量を調整して運転する方法です。再熱蒸気圧力は中間阻止弁(インタセプト弁)が原則全開運用であることから,基本的に調整することはありません。

(2)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ハ)主蒸気止め弁,(ヌ)蒸気加減弁,(ヨ)インタセプト弁,になると思います。
ワンポイント解説「2.蒸気タービンの変圧運転」の通り,定圧運転は主蒸気圧力を一定として蒸気加減弁で主蒸気流量を調整して運転する方法です。

(3)解答:ト
題意より解答候補は,(イ)復水器損失,(ロ)排ガス損失,(ト)絞り損失,になると思います。
ワンポイント解説「2.蒸気タービンの変圧運転」の通り,蒸気加減弁での損失は絞り損失となります。

(4)解答:ワ
題意より解答候補は,(ニ)復水ポンプ,(ヲ)缶水循環ポンプ,(ワ)給水ポンプ,になると思います。
ワンポイント解説「2.蒸気タービンの変圧運転」の通り,変圧運転をすることにより吐出圧力を低減できるのは給水ポンプとなります。復水ポンプは復水器の出口に設けるポンプ,缶水循環ポンプは強制循環ボイラにおいてドラム水を循環させるためのポンプです。

(5)解答:カ
題意より解答候補は,(リ)過熱器,(ル)節炭器,(カ)再熱器,になると思います。
ワンポイント解説「1.再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図」の通り,高圧タービン排気からは再熱器に接続されています

(6)解答:タ
題意より解答候補は,(タ)始動時間,(ツ)停止までの時間,になると思います。
ワンポイント解説「2.蒸気タービンの変圧運転」の通り,タービンケーシング温度を高く保っておくことで,タービンの始動時間を短縮することができます。

(7)解答:レ
題意より解答候補は,(ヘ)火炉圧力が高くなる,(チ)煙突効果が大きくなる,(レ)材料の寿命が長くなる,になると思います。
ワンポイント解説「2.蒸気タービンの変圧運転」の通り,部分負荷で蒸気圧力を下げることで,材料への負担が小さくなり,材料の寿命が長くなります。



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