【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,需給計画・運用と電力市場の関係を示した記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
現在の電気事業制度においては,小売電気事業者や発電事業者,一般送配電事業者等がそれぞれの役割を果たしつつ,電力の広域的運用と市場メカニズムを通じて,効率的に安定供給を確保する電力システムが整備されている。
小売全面自由化以降,小売電気事業者は,\( \ \fbox { (1) } \ \)義務が課せられ,\( \ \fbox { (2) } \ \)市場や相対取引を通して\( \ 30 \ \)分毎の需要計画と同量の電力量(\( \ \mathrm {kW\cdot h} \ \)価値)を実需給の\( \ \fbox { (3) } \ \)前までに確保している。
一般送配電事業者は,周波数維持義務が課され,必要な調整力(\( \ \mathit {\Delta }\mathrm {kW} \ \)価値)を広域的に調達・運用するため,主に\( \ \fbox { (4) } \ \)市場から調達している。調整には応動時間,継続時間などが異なる調整力が求められるため,一次調整力,二次調整力及び三次調整力が設定されている。
一次調整力は,極短周期成分に対応する発電機のガバナフリー機能に相当し,原則\( \ \fbox { (5) } \ \)以内に応動することが要件とされている。また,二次調整力は,周波数偏差に対する\( \ \fbox { (6) } \ \)となる\( \ \mathrm {LFC} \ \)機能に相当する要件と,需要や再生可能エネルギー発電出力の予測誤差に対応する調整量を経済的に発電機へ配分する\( \ \fbox { (7) } \ \)機能に相当する要件の二つがあり,どちらも\( \ \fbox { (8) } \ \)以内に応動することが要件とされている。三次調整力は,より応動時間の長い\( \ \fbox { (7) } \ \)機能に相当する要件と,再生可能エネルギー発電出力の予測誤差に対応する\( \ 30 \ \)分毎の出力調整指令に相当する要件の二つがある。
また,安定供給のためには,将来を見通した需要に対して一定の供給予備力が確保できる電源開発が必要であるが,競争環境下での電源計画にはリスクがあり,投資回収の予見性が低下する可能性がある。このため,中長期の供給信頼度への対処や調整力確保を目的として,供給力(\( \ \mathrm {kW} \ \)価値)を取引する\( \ \fbox { (9) } \ \)市場が創設された。供給信頼度評価においては,再生可能エネルギー導入拡大に伴う季節や時間帯毎の需給状況の変化を適切に評価できる指標である\( \ \mathrm {EUE} \ \)(\( \ 1 \ \)年間の\( \ \fbox { (10) } \ \)の期待値)が用いられ,一定値以下となるように必要供給力が算定されている。
〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 容量 &(ロ)& 10 \ 秒 &(ハ)& インバランス \\[ 5pt ]
&(ニ)& 15 \ 分 &(ホ)& 供給能力確保 &(ヘ)& 1 \ 分 \\[ 5pt ]
&(ト)& 1 \ 時間 &(チ)& 5 \ 分 &(リ)& フィードバック制御 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 供給力不足量 &(ル)& 最終保障供給 &(ヲ)& 予備電源 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 予測制御 &(カ)& 電源 &(ヨ)& \mathrm {EDC} \\[ 5pt ]
&(タ)& 卸電力取引 &(レ)& 前日 \ 12 \ 時 &(ソ)& 需給調整 \\[ 5pt ]
&(ツ)& \mathrm {VQC} &(ネ)& 供給力不足回数 && \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
近年における需給計画・運用と電力市場からの出題です。
2020年代になり大きく変化してきた時事問題で,そろそろ出題されそうな印象の内容でした。本内容は2025年現在のものであり,今後変更や改正の可能性もある内容なので,最新の情報は随時収集するようにして下さい。
1.電力に関係する市場
①容量市場
国全体で将来必要となる供給力(\( \ \mathrm {kW} \ \)価値)を取引する市場で,中長期の供給信頼度への対処や調整力確保を目的とされています。
②卸電力市場
需要家に供給するための電力量(\( \ \mathrm {kW\cdot h} \ \)価値)を取引する市場で,主に小売電気事業者における実需給\( \ 1 \ \)時間前までの供給力確保を目的とされています。
③需給調整市場
実需給\( \ 1 \ \)時間前以降の需給ギャップ補填,\( \ 30 \ \)分未満の需給変動への対応,周波数維持のための電力量(\( \ \Delta \mathrm {kW} \ \)価値)を取引する市場で,主に一般送配電事業者が以下の取引を行う目的の市場となります。なお,表中の\( \ \mathrm {GC} \ \)はガバナフリー,\( \ \mathrm {LFC} \ \)は負荷周波数制御,\( \ \mathrm {EDC} \ \)は経済負荷配分制御,となります。
出典:一般社団法人 電力需給調整力取引所 HP 需給調整市場かいせつ資料より抜粋
URL:https://www.eprx.or.jp/outline/outline.html
【解答】
(1)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)供給能力確保,(ル)最終保障供給,(ワ)予測制御,(ソ)需給調整,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力に関係する市場」の通り,小売電気事業者には供給力確保義務が課せられています。
(2)解答:タ
題意より解答候補は,(イ)容量,(タ)卸電力取引,(ソ)需給調整,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力に関係する市場」の通り,小売電気事業者の\( \ 30 \ \)分毎の需要計画と同量の電力量(\( \ \mathrm {kW\cdot h} \ \)価値)を確保するための市場を卸電力取引市場といいます。
(3)解答:ト
題意より解答候補は,(ニ)\( \ 15 \ \)分,(ト)\( \ 1 \ \)時間,(レ)前日\( \ 12 \ \)時,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力に関係する市場」の通り,小売電気事業者は卸電力取引市場等で\( \ 1 \ \)時間前までに供給力を確保しておく必要があります。
(4)解答:ソ
題意より解答候補は,(イ)容量,(タ)卸電力取引,(ソ)需給調整,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力に関係する市場」の通り,一般送配電事業者の周波数維持のため,必要な調整力(\( \ \mathit {\Delta }\mathrm {kW} \ \)価値)を広域的に調達・運用する市場を需給調整市場といいます。
(5)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)\( \ 10 \ \)秒,(ニ)\( \ 15 \ \)分,(ヘ)\( \ 1 \ \)分,(ト)\( \ 1 \ \)時間,(チ)\( \ 5 \ \)分,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力に関係する市場」の通り,ガバナフリーの応動要件は\( \ 10 \ \)秒以内となります。
(6)解答:リ
題意より解答候補は,(ハ)インバランス,(リ)フィードバック制御,(ワ)予測制御,等になると思います。
\( \ \mathrm {LFC} \ \)機能は系統の周波数と基準周波数の偏差を検出して出力を制御するフィードバック制御の一つです。
(7)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ハ)インバランス,(ヨ)\( \ \mathrm {EDC} \ \),(ツ)\( \ \mathrm {VQC} \ \),等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力に関係する市場」の通り,需要や再生可能エネルギー発電出力の予測誤差に対応する調整量を経済的に発電機へ配分する,もしくは三次調整力となるのは\( \ \mathrm {EDC} \ \)機能となります。\( \ \mathrm {VQC} \ \)は電圧・無効電力制御のことをいいます。
(8)解答:チ
題意より解答候補は,(ロ)\( \ 10 \ \)秒,(ニ)\( \ 15 \ \)分,(ヘ)\( \ 1 \ \)分,(ト)\( \ 1 \ \)時間,(チ)\( \ 5 \ \)分,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力に関係する市場」の通り,二次調整力の応動要件は\( \ 5 \ \)分以内となります。
(9)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)容量,(タ)卸電力取引,(ソ)需給調整,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力に関係する市場」の通り,中長期の供給信頼度への対処や調整力確保を目的として,供給力(\( \ \mathrm {kW} \ \)価値)を取引する市場を容量市場といいます。
(10)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ヌ)供給力不足量,(ヲ)予備電源,(ネ)供給力不足回数,等になると思います。
供給信頼度評価において,\( \ \mathrm {EUE} \ \)は電力融通も考慮した\( \ 1 \ \)年間の供給力不足量(停電量の平均値)の期待値の指標となります。















愛知県出身 愛称たけちゃん