《電力》〈送電〉[H29:問6]送電線における誘導障害に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,送電線における誘導障害に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

送電線と通信線が接近交差している区間が長くなると,通信線に対して\( \ \fbox {  (1)  } \ \)あるいは電磁誘導などの誘導障害を及ぼすことがあるので,送電線建設時には予測計算を行って過大にならないようにする。\( \ \fbox {  (1)  } \ \)電圧は,送電線の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)と通信線の\( \ \fbox {  (3)  } \ \),両者の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)によって決まる。
一方,電磁誘導障害は,主に送電線に\( \ \fbox {  (5)  } \ \)故障が発生した場合に生じ,中性点接地方式が\( \ \fbox {  (6)  } \ \)接地の送電線において問題になりやすい。実用的な計算式として知られる\( \ \fbox {  (7)  } \ \)では,起誘導電流\( \ \mathrm{1 \ A} \ \)あたりの誘導電圧の計算値は,周波数の他,その土地の\( \ \fbox {  (8)  } \ \)係数にも依存する。送電線側で可能な電磁誘導障害の対策としては,架空地線の条数や\( \ \fbox {  (9)  } \ \)を増やす,送電線をねん架するなどがある。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 天候   &(ロ)& 対地静電容量   &(ハ)& 地質 \\[ 5pt ] &(ニ)& 静電誘導   &(ホ)& 自己誘導   &(ヘ)& 高抵抗 \\[ 5pt ] &(ト)& 負荷電流   &(チ)& 零相インダクタンス   &(リ)& 地磁気 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 対地電圧   &(ル)& 深尾の式   &(ヲ)& 非 \\[ 5pt ] &(ワ)& 抵抗率   &(カ)& 地絡   &(ヨ)& 導電率 \\[ 5pt ] &(タ)& 短絡   &(レ)& 相互インダクタンス       &(ソ)& 直接 \\[ 5pt ] &(ツ)& 相互静電容量       &(ネ)& 中俣の式
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

送電線の誘導障害は静電誘導と電磁誘導の二種類があります。どちらもその原理と対策は理解しておいた方が良いと思います。

1.送電線の誘導障害
(1)静電誘導障害
送電線と通信線が近接している場合に,各相と通信線との静電誘導と通信線の対地静電容量により,通信線へ障害が発生します。
対策としては,①十分な離隔距離をとること,②通信線に金属遮へい付きケーブルを使用する,等があります。
定量的に求めると,図1においてキルヒホッフの法則から,
\[
\mathrm {j}\omega C_{\mathrm {o}}{\dot E}_{\mathrm {o}}=\mathrm {j}\omega C_{\mathrm {a}}\left({\dot E}_{\mathrm {a}}-{\dot E}_{\mathrm {o}}\right) +\mathrm {j}\omega C_{\mathrm {b}}\left({\dot E}_{\mathrm {b}}-{\dot E}_{\mathrm {o}}\right) +\mathrm {j}\omega C_{\mathrm {c}}\left({\dot E}_{\mathrm {c}}-{\dot E}_{\mathrm {o}}\right)
\] であるから,静電誘導電圧は,
\[
{\dot E}_{\mathrm {o}}=\frac {C_{\mathrm {a}}{\dot E}_{\mathrm {a}}+C_{\mathrm {b}}{\dot E}_{\mathrm {b}}+C_{\mathrm {c}}{\dot E}_{\mathrm {c}}}{C_{\mathrm {o}}+C_{\mathrm {a}}+C_{\mathrm {b}}+C_{\mathrm {c}}}
\] と求められます。

(2)電磁誘導障害
送電線と通信線が近接している場合に,各送電線と通信線との相互インダクタンスにより電磁誘導電圧が発生します。
対策としては,①十分な離隔距離をとること,②通信線に金属遮へい付きケーブルを使用する,③非接地方式または高抵抗接地方式の採用,④送電線のねん架等があります。
定量的に求めると,図1において,
\[
{\dot V}_{0}=\mathrm {j}\omega M \left( {\dot I}_{\mathrm {a}}+{\dot I}_{\mathrm {b}}+{\dot I}_{\mathrm {c}}\right)
\] となります。したがって,三相平衡状態であれば電磁誘導障害は発生しません。

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【用語の解説】

(ル)深尾の式
電磁誘導電圧の計算式で,実測値に基づいたものです。この他にも竹内の式というものもあります。
(ネ)中俣の式
インターネットで調べると積雪に関係する式が出てきますが,電気には関係ないようです。

【解答】

(1)解答:ニ
ワンポイント解説「1.送電線の誘導障害」の通り,誘導障害は静電誘導と電磁誘導があります。

(2)解答:ヌ
(3)解答:ロ
(4)解答:ツ
ワンポイント解説「1.送電線の誘導障害」の通り,静電誘導電圧\( \ {\dot E}_{\mathrm {o}} \ \)は,送電線の対地電圧\( \ {\dot E}_{\mathrm {a}},{\dot E}_{\mathrm {b}},{\dot E}_{\mathrm {c}} \ \),通信線の対地静電容量\( \ C_{\mathrm {o}} \ \),両者の相互静電容量\( \ C_{\mathrm {a}},C_{\mathrm {b}},C_{\mathrm {c}} \ \)を用いて,
\[
{\dot E}_{\mathrm {o}}=\frac {C_{\mathrm {a}}{\dot E}_{\mathrm {a}}+C_{\mathrm {b}}{\dot E}_{\mathrm {b}}+C_{\mathrm {c}}{\dot E}_{\mathrm {c}}}{C_{\mathrm {o}}+C_{\mathrm {a}}+C_{\mathrm {b}}+C_{\mathrm {c}}}
\] で求められます。

(5)解答:カ
ワンポイント解説「1.送電線の誘導障害」の通り,電流のアンバランスが発生する地絡事故時に電磁誘導障害は発生します。

(6)解答:ソ
中性点接地方式が直接接地の場合,地絡電流が大きいので電磁誘導障害が問題になりやすいです。

(7)解答:ル
(8)解答:ハ
深尾の式が実用的に用いられ,深尾の式は地域や平地と産地等の地質係数に依存します。

(9)解答:ヨ
題意より解答候補は(ワ)抵抗率もしくは(ヨ)導電率になると思いますが,電磁誘導対策として有効なのは導電率を増やすです。架空地線の条数を増やすこともリアクタンスを下げる意味では同意なので,分からなくても導電率が導き出せると良いと思います。



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