《電力・管理》〈水力・火力〉[H22:問1]同期発電機の自己励磁現象に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

同期発電機の自己励磁現象について,次の問に答えよ。

(1) 自己励磁現象はどのような場合に発生する現象か,説明せよ。

(2) 自己励磁現象によって発生する発電機端子電圧について,発電機の無負荷飽和曲線を用いて説明せよ。

(3) 系統側の条件が同じ場合に,大容量の水力発電機,小容量の水力発電機,大容量の火力発電機,小容量の火力発電機のうちどれが最も自己励磁現象を起こしにくいか,その理由を付して答えよ。

(4) 上記(3)に示した発電機の選択以外に,自己励磁現象を防止するための対策を二つ挙げよ。

【ワンポイント解説】

同期発電機の自己励磁現象に関する問題です。
\( \ 3 \ \)種の頃から扱っている内容なので,多くの受験生が概要は理解していると思いますが,いざ説明せよと言われるとなかなかできないのが現実かなと思います。
会社等で後進を指導する等でも論説力は身に付きますので,チャレンジしてみるようにして下さい。

1.自己励磁現象
自己励磁現象は図1に示すように,同期発電機に負荷を接続する際に,系統が対地静電容量によって容量性負荷である時に電機子反作用が増磁作用に働くために発生する現象です。メカニズムは以下の通りです。
① 残留磁気の影響で発電機の誘導起電力が上昇する。
② 系統は容量性なので進み電流が流れる。
③ 電機子反作用により増磁作用となる。
④ 発電機の誘導起電力が上昇する。
以後②~④を繰り返す。結果的に図2の無負荷飽和曲線との交点(電圧確立点)まで電圧が上昇する。


【解答】

(1)自己励磁現象はどのような場合に発生する現象か
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.自己励磁現象」の通りです。

(試験センター解答例)
回転している同期発電機に,無励磁のままで容量性負荷を接続した場合に発生する現象をいう。

(2)自己励磁現象によって発生する発電機端子電圧について,発電機の無負荷飽和曲線を用いて説明
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.自己励磁現象」の通りです。
・試験センター解答では静電容量が小さい場合と大きい場合のパターンが記載してありますが,静電容量が大きいパターンを記載しておけば大丈夫かと思います。

(試験センター解答例)
残留磁気による電圧が進み電流を生じさせ,この電流がさらに端子電圧を高めて進み電流を増加させ,端子電圧はある極限値に達して安定する。

容量性負荷の静電容量を\( \ C \ \)とすれば負荷側から決まる電圧\( \ v \ \)と電流\( \ i \ \)の関係は\( \ i=\left( 2\pi fC\right) \cdot v \ \)であり,図に示すように直線(\( \ M_{1} \ \):静電容量小,\( \ M_{2} \ \):静電容量大)となり,最終的には無負荷飽和特性\( \ N \ \)と直線\( \ M_{1} \ \)あるいは\( \ M_{2} \ \)の交点\( \ m_{1} \ \)(電圧 \( \ v_{1} \ \))あるいは\( \ m_{2} \ \)(電圧 \( \ v_{2} \ \))に到達し安定する。

(3)大容量の水力発電機,小容量の水力発電機,大容量の火力発電機,小容量の火力発電機のうちどれが最も自己励磁現象を起こしにくいかとその理由
(ポイント)
・同期リアクタンスが小さい(短絡比が大きい)発電機ほど電機子反作用による磁束が小さくなり,誘導起電力の上昇がしにくくなります。

(試験センター解答例)
大容量の水力発電機である。

<理由>
発電機が自己励磁現象を起こすことなく送電線を充電できる最大充電容量\( \ Q \ \)は次式より求められる。
\[
\begin{eqnarray}
Q&=&\frac {v^{2}}{x_{\mathrm {d}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ここで,\( \ v \ \):充電電圧,\( \ x_{\mathrm {d}} \ \):同期リアクタンス(不飽和値)
水力発電機の自己容量ベースの同期リアクタンスは火力発電機に比べて小さく,また,容量が大きいほど系統からみた同期リアクタンスが小さくなる。そのため最大充電容量が大きくなり最も自己励磁現象を起こしにくい。

(4)自己励磁現象を防止するための対策を二つ
(ポイント)
・(2)解答の\( \ M_{1} \ \)の直線に示すような,静電容量が小さくなる対策を施すのが効果的となります。
・同期調相機を接続することや発電機の自動電圧調整装置を使用するのも有効かと思います。

(試験センター解答例)
① 受電端に並列リアクトルを接続する。
 送電線路の静電容量を補償し,進み電流による自己励磁を減少できる。

② 発電機を複数台,母線に接続する。
 各発電機は容量と短絡比との積に比例して充電電流を分担するので安全に充電できる。(ただし,この場合,界磁電流が小さいため同期化力が小さく並列運転に困難を伴う場合もある。)



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