《電力・管理》〈送電〉[R01:問6]直流送電及び直流連系に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

我が国の一般送配電事業者(沖縄電力株式会社を除く。)間の電力系統は,互いに接続されることで広域運営が行われているが,これらの中には直流周波数変換装置や直流送電線等,直流設備を介した直流連系が存在する。直流連系に関して,次の問に答えよ。

(1) 我が国の系統周波数は\( \ 50 \ \mathrm {Hz} \ \)と\( \ 60 \ \mathrm {Hz} \ \)に分けられていることから,広域運営のための周波数変換所が現在\( \ 3 \ \)箇所存在する。これら\( \ 3 \ \)箇所の名称を全て答えよ。

(2) 周波数が異なる系統の連系が可能となること以外の直流連系の長所及び短所について,それぞれ三つずつ答えよ。

(3) 周波数が同じ電力系統間において,直流連系が採用されている場合がある。そのうち,\( \ \mathrm {BTB} \ \)方式と呼ばれる直流連系に関して,次の問に答えよ。

①\( \ \mathrm {BTB} \ \)方式による直流連系の設備構成上の特徴を答えよ。

②\( \ \mathrm {BTB} \ \)方式による直流連系は,我が国では現在,隣接する一般送配電事業者\( \ 3 \ \)者間の電力系統の連系において\( \ 1 \ \)箇所の連系所に採用されている。この場合において,交流連系ではなく直流連系が採用された最も大きな技術的理由を答えよ。

【ワンポイント解説】

直流送電と交流送電の比較は一次試験、二次試験問わずかなり出題されている印象があります。1種の場合だと(2)のような問題以外にも(1)や(3)といったもう一歩突っ込んだ問題が出題される印象です。日頃から様々なことに興味を持ち,幅広い知識を有することが必要になると思います。

1.直流送電のメリットデメリット
<直流送電のメリット>
・安定度の問題がないため,送電線の熱的許容電流まで送電容量を増やせます。したがって,大容量の送電に有利です。
・無効電流による損失がないので,送電損失が少ないです。したがって,長距離送電に有利です。
・同容量のケーブルで,交流に比べ\( \ \sqrt {2} \ \)倍までの電圧を送電できます。
・電圧最大値が実効値と等しいので,絶縁強度を低減が図れます。
・静電容量による充電電流が流れないため,誘電損が発生しません。
・送電線が\( \ 2 \ \)条で良いため,建設コストが下がります。

<直流送電のデメリット>
・交直変換装置が必要です。
・交流のように零点がないため,高電圧・大電流の遮断が難しいです。
・変換装置から高調波が発生するため,フィルタや調相設備の設置が必要です。
・大地帰路方式において,電食が発生しやすいです。
・変圧器で電圧の変成ができません。

2.日本での直流送電の現状
下図のように日本では直流連系されている場所があります。
①北海道ー本州直流連系
 北海道と本州を結ぶ直流送電で,送電距離も\( \ 167 \ \mathrm {km} \ \)と非常に長く,直流送電のメリットが享受できると考えられます。完成も\( \ 1979 \ \)年と最も古いです。
②紀伊水道直流連系
 本州と四国を結ぶ直流送電で,送電距離は\( \ 100 \ \mathrm {km} \ \),完成が\( \ 2000 \ \)年とどちらも覚えやすい数字となっています。
③南福光連系所
 北陸電力と中部電力を繋ぐ直流連系で,関西電力との三者間の潮流制御をしやすくするために設置された直流送電を伴わない交直変換のみを行う送電です。


出典:Power Academy 電気の施設訪問レポート vol.17

【解答】

(1)周波数変換所が現在\( \ 3 \ \)箇所
(ポイント)
・知識を有しているかどうかを問う問題です。直流連系の図は何度か目を通しておくと良いと思います。

(試験センター解答)
佐久間周波数変換所,新信濃変電所,東清水変電所

(2)直流連系の長所及び短所について,それぞれ三つずつ
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.直流送電のメリットデメリット」の通りです。

(試験センター解答)
以下の項目から,長所及び短所がそれぞれ\( \ 3 \ \)項目記載されていればよい。
(長所)
・充電電流がないため,ケーブルによる長距離の連系が可能である。
・位相角による安定度問題がないため,長距離大容量の連系が可能である。
・交流系統の短絡容量は連系によって増大しない。
・潮流を急速かつ自由に制御できる。
・交流系統の事故が他系統に波及しない。
・送電線の建設費用が同等の交流と比較して小さい。
(短所)
・変換設備の建設費用が大きい。
・交流の短絡容量が小さいと,電圧・高調波不安定,軸ねじれ振動の問題が発生する。
・多端子系統の構成では制御・保護が複雑となる。
・高調波や高周波対策が必要となる。
・交流のじょう乱で運転に影響を受ける。
・他励式の場合,送電電力に応じた無効電力補償装置が必要となる。

(3)①\( \ \mathrm {BTB} \ \)方式による直流連系の設備構成上の特徴
(ポイント)
・ワンポイント解説「2.日本での直流送電の現状」の通り,直流送電線がないのが特徴です。

(試験センター解答)
2 組の交直変換装置を 1 箇所に設置し交直変換装置同士が背中合わせとなるような設備構成(\( \ \mathrm {Back \ to \ Back} \ \))となっており,交直変換装置間に直流送電線がない。

(3)②\( \ \mathrm {BTB} \ \)方式による直流連系が採用された最も大きな技術的理由
(ポイント)
・ワンポイント解説「2.日本での直流送電の現状」の通り,\( \ \mathrm {BTB} \ \)方式が採用された南福光連系所は北陸電力と中部電力を繋ぐ直流連系で,関西電力との三者間の潮流制御をしやすくするために設置されたものです。

(試験センター解答)
交流連系とした場合,一般送配電事業者\( \ 3 \ \)者間にまたがる交流ループ系統になり,常時の潮流制御が困難になるため。



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