《電力・管理》〈水力〉[R03:問1]反動水車におけるキャビテーションに関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

反動水車におけるキャビテーションに関して,次の各問に答えよ。

(1) キャビテーションの発生メカニズムについて\( \ 200 \ \)字程度で述べよ。

(2) キャビテーションが発生した場合,運転中の機器に与える影響を二つ挙げ,合わせて\( \ 30 \ \)字程度で述べよ。

(3) キャビテーションを抑制するために,発電所を設計するうえで考慮すべきこと及び水車の設計・製作上で考慮すべきことを合わせて\( \ 200 \ \)字程度で述べよ。

(4) 運用開始後に点検等でキャビテーションを確認した場合,運転上実施すべき対策を\( \ 30 \ \)字程度で述べよ。

【ワンポイント解説】

水車のキャビテーションに関する問題です。
令和3年の電力管理科目の中では最も取組みやすい問題で,ほとんどの受験生が選択した問題であるかと思います。
合格のためにはぜひ完答を目指したい問題と言えるでしょう。

1.キャビテーション
水車の流水中の圧力が飽和蒸気圧以下になると,その部分に気泡が発生し,その後気泡が圧力が高いところに移動すると気泡が潰れて,その衝撃によりキャビテーションが発生します。
キャビテーションが発生すると以下の現象が発生します。
 ① 効率,出力,水流の減少が起こる
 ② キャビテーション発生場所(ランナ等)に壊食が起こる
 ③ 吸出し管入口の水圧変動が著しくなり,振動や騒音が発生する

2.キャビテーション発生抑制対策
キャビテーション発生を抑制する対策としては,以下の対策が挙げられます。
 ① 水車の比速度を一定値以下とする
 ② ランナベーンの形状を整え,表面を滑らかにする
 ③ 過度の部分負荷運転や過負荷運転をさける
 ④ 吸出し管の高さを一定値以下とする

【解答】

(1)キャビテーションの発生メカニズム
(ポイント)
・内容はワンポイント解説「1.キャビテーション」の通りです。
・キーワードとしては「飽和蒸気圧」「気泡」「気泡が潰れた衝撃」等が入っていると良いかと思います。

(試験センター解答)
 運転中の水車(又はポンプ水車)は各部の流速,圧力がそれぞれ異なる。ある点の圧力がそのときの水温における飽和蒸気圧以下に低下すると,その部分の水は蒸発して水蒸気となり,流水中に微細な気泡が発生する。この気泡が周囲の水とともに流れて圧力の高い部分に達すると突然つぶれ,その瞬間に非常に高い圧力が生じる。この現象をキャビテーションという。

(2)キャビテーションが発生した場合,運転中の機器に与える影響を二つ
(ポイント)
・内容はワンポイント解説「1.キャビテーション」の通りです。
・合わせて\( \ 30 \ \)字程度なので,結論のみをサラサラっと記載すれば十分かと思います。

(試験センター解答例)
以下の機器に与える影響から二つ記載されていればよい。
 ①流水に接するランナ羽根に壊食が生じる
 ②水車効率が低下する
 ③振動・騒音が発生する

(3)キャビテーションを抑制するために,発電所を設計するうえで考慮すべきこと及び水車の設計・製作上で考慮すべきこと
(ポイント)
・内容はワンポイント解説「2.キャビテーション発生抑制対策」の通りです。
・発電所を設計するうえで考慮すべきこと及び水車の設計・製作上で考慮すべきことなので,両方の面を記載する必要があります。

(試験センター解答例)
 キャビテーションを抑制するために,設計上,最も重要なのは吸出し高さの選定であり,吸出し高さを低くすることが効果的である。
 これに加えて,プロファイルゲージ等を用いてランナ羽根の形状を適切に整形し,表面を平滑に仕上げることも重要で,水の流れがランナ表面から剥離しないことでのキャビテーションの抑制が期待できる。

(4)運用開始後に点検等でキャビテーションを確認した場合,運転上実施すべき対策
(ポイント)
・内容はワンポイント解説「2.キャビテーション発生抑制対策」の通りです。
・キャビテーション発生抑制対策の運用開始後として調節が可能なのは,過度の部分負荷運転や(行っている場合には)過負荷運転をさけることとなります。

(試験センター解答例)
 部分負荷運転の下限値を上げることでキャビテーションの抑制を図る。



記事下のシェアタイトル