【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
タービン発電機の固定子巻線の冷却方式として用いられる,水による直接冷却方式に関する次の各項目について答えよ。
(1) 水による直接冷却方式を採用することの長所と短所を合わせて\( \ 100 \ \)字程度以内で述べよ。
(2) 発電機に付属する機器と,固定子巻線を冷却するときの制御の対象となる物理量を合わせて\( \ 100 \ \)字程度以内で述べよ。
(3) 発電機運転中に冷却水の循環が停止した場合の対応の概要を\( \ 150 \ \)字程度以内で述べよ。
【ワンポイント解説】
タービン発電機の固定子巻線水冷却方式に関する問題です。
過去あまり出題されてこなかった内容ですが,雑誌等でもよく取り上げられている内容なので,日頃から学習されている方は解けた問題かと思います。
イメージとして,暑い夏に冷房の効いた部屋に入るよりもプールに入った方が体が冷えるという感覚を持つと各項目が理解しやすくなるかと思います。
1.水冷却方式の得失
発電機容量の増加に伴い空気冷却方式→水素冷却方式→水冷却方式と採用される例が多いです。
水冷却方式では液体である純水を供給するため,熱容量,熱伝達率が大きく冷却効果が高いですが,水質を保つための水処理設備,水を供給するためのポンプや配管等の設備が必要となり,構造は複雑となります。したがって,水冷却方式を採用する場合には,水の導電率,温度,圧力に注意して運転する必要があります。
\( \ 300 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \)を超える発電機から固定子の冷却に水が採用され始め,\( \ 1 \ 500 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \)級以上になると回転子にも採用される例があります。
【解答】
(1)水による直接冷却方式を採用することの長所と短所
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.水冷却方式の得失」の通りです。
・長所としては冷却効果が高くなり大容量化できるというところまで記載できれば十分かと思います。
(試験センター解答)
長所としては,同容量の発電機で固定子巻線を小形に製作することができるため,価格の低減や大容量化が可能となる。
短所としては,水質を保つための水処理装置や,水を固定子巻線に供給するためのポンプや配管などの設備が必要となる。
(2)発電機に付属する機器と,固定子巻線を冷却するときの制御の対象となる物理量
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.水冷却方式の得失」の通りですが,全ての機器を試験中に解答することは現実的ではないため,導電率,温度,圧力に関する内容を記載すれば十分かと思います。
・例えば圧力であれば,圧力計→圧力調整弁,ポンプ→電流値等,導電率であればイオン交換樹脂→導電率計と連想ゲームのように考えていくと列挙できるかと思います。
(試験センター解答例)
付属する機器は,貯水槽,ポンプ,イオン交換樹脂,導電率計,冷却器,圧力調整弁,温度調整弁,冷却水入口圧力計,冷却水入口温度計などがある。
制御の対象となる物理量は,冷却水導電率,冷却水温度,冷却水圧力などがある。
(3)発電機運転中に冷却水の循環が停止した場合の対応の概要
(ポイント)
・固定子の冷却ができなくなり過熱が懸念されるため,即時出力低下(ランバック),もしくは運転停止が必要になります。
・冷却水が沸騰すると冷却不能となるため,それまでに対応を行う必要があります。
(試験センター解答例)
固定子巻線内の純水が沸騰し始めるまでの時間以内に,緊急的に出力を降下させるランバックを行う。それでも固定子巻線が許容温度以下にならない場合は,発電機をトリップさせる。若しくは,ランバックさせずに即時,発電機をトリップさせる場合もある。
ポンプの異常であって,予備がある場合はそちらに切り替える。