《電力》〈送電〉[R03:問5]架空送電線に使用される鋼心アルミより線の許容電流に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,架空送電線の許容電流に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

電線に電流が流れると,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)による発熱のため電線温度は周囲温度より高くなる。電線の温度がある限度以上に高くなると,電線の諸性能,例えば,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が低下する。そのため,一定の温度(最高許容温度)を超えて電流を流してはならない。このときの電流を許容電流という。

鋼心アルミより線の最高許容温度は,短時間では\( \ 100 \ ℃ \ \)としているが,長時間使用すると\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が幾分低下することなどから,標準の最高許容温度としては\( \ \fbox {  (3)  } \ ℃ \ \)が推奨されており,そのときの許容電流を長時間許容電流という。耐熱鋼心アルミより線の場合,同じ公称断面積の鋼心アルミより線に比べ許容電流は約\( \ \fbox {  (4)  } \ \)となる。許容電流は,電線の材質,構造,表面の状況,周囲温度,\( \ \fbox {  (5)  } \ \),風向・風速などにより異なる。

許容電流は,電線の電流による熱損失と電線の周囲への対流によって放散する熱量が等しいとして次式で示される。
\[
\begin{eqnarray}
I &=& \ \fbox {  (6)  } \ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ただし,\( \ I \ \)は許容電流\( \ \mathrm {[A]} \ \),\( \ d \ \)は電線外径\( \ \mathrm {[cm]} \ \),\( \ l \ \)は電線の長さ\( \ \mathrm {[cm]} \ \),\( \ K \ \)は熱放散係数\( \ \mathrm {[W / \left( ℃\cdot {cm}^{2}\right) ]} \ \),\( \ t \ \)は温度上昇\( \ \mathrm {[℃]} \ \),\( \ R \ \)は最終温度における長さ\( \ l \ \)の電線の抵抗\( \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)とする。

自然環境の影響を大きく受ける架空送電線の許容電流は,過去の気象観測データなどから厳しい条件を設定し,一般的に,周囲温度は,\( \ 40 \ ℃ \ \)(夏季),\( \ \fbox {  (7)  } \ ℃ \ \)(冬季)を用いて計算している。そのため,夏季の許容電流は冬季に比べて\( \ \fbox {  (8)  } \ \)。近年では,送電線をより効率的に運用する取組として,線路電流,電線温度,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)などを実測して,許容電流を管理する手法(ダイナミックレーティング)が試行されている。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 5     &(ロ)& キャパシタンス         &(ハ)& 80 \\[ 5pt ] &(ニ)& \sqrt {\frac {\pi d^{2}Kt}{Rl}}     &(ホ)& 抵抗     &(ヘ)& 弾性係数 \\[ 5pt ] &(ト)& 導電率     &(チ)& 弛度     &(リ)& \sqrt {\frac {\pi dlKt}{R}} \\[ 5pt ] &(ヌ)& 小さくなる     &(ル)& 引張強さ     &(ヲ)& 日射量 \\[ 5pt ] &(ワ)& 1.5 \ 倍     &(カ)& 地上高     &(ヨ)& 90 \\[ 5pt ] &(タ)& 2 \ 倍     &(レ)& リアクタンス     &(ソ)& 大きくなる \\[ 5pt ] &(ツ)& 25     &(ネ)& 3 \ 倍   &&  \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

架空送電線における送電線の許容電流に関する問題です。
金属は温度が上昇すると電流が流れにくくなる特性があることを覚えておきましょう。
\( \ 3 \ \)種や\( \ 2 \ \)種の参考書でも取り扱う内容で\( \ 1 \ \)種受験生ではかなりの高得点が予想される問題なので,確実に知識を習得するようにして下さい。

1.鋼心アルミより線
鋼心アルミより線は,図1に示すように中心に亜鉛めっき鋼より線,その周囲に硬アルミ線をより合わせた電線であり,アルミの軽量かつ高い導電性と,鋼の強い引張強さとを併せもつ代表的な架空送電線です。
アルミは導電率では銅の3分の2程度ですが,重量が3分の1程度なので,全体として約半分の重量で同容量の送電線の敷設が可能となります。
耐熱温度は約\( \ 90 \ ℃ \ \)です。

2.耐熱鋼心アルミより線
鋼心アルミより線のアルミを耐熱性のアルミ合金にしたもので,導電性がやや落ちますが,耐熱温度は約\( \ 150 \ ℃ \ \)と高くなります。
したがって,許容電流も鋼心アルミより線の約\( \ 1.5 \ \)倍に増加するため,大容量のものが採用されています。

【解答】

(1)解答:ホ
題意より解答候補は,(ロ)キャパシタンス,(ホ)抵抗,(レ)リアクタンス,等になると思います。
電線に電流が流れると,その抵抗分のジュール熱\( \ \left( =RI^{2}\right) \ \)による発熱のため電線温度は周囲温度よりも高くなります。

(2)解答:ル
題意より解答候補は,(ヘ)弾性係数,(ト)導電率,(ル)引張強さ,等になると思います。
電線の温度が高くなると導電率や引張強さが低下しますが,問題文では「ある限度以上に高くなると」となっており,導電率はある温度から急激に低下するという性質ではないため,引張強さの方がより適当と考えられます。

(3)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ 80 \ \),(ヨ)\( \ 90 \ \),等になると思います。
ワンポイント解説「1.鋼心アルミより線」の通り,鋼心アルミより線の最高許容温度は約\( \ 90 \ ℃ \ \)となります。

(4)解答:ワ
題意より解答候補は,(ワ)\( \ 1.5 \ \)倍,(タ)\( \ 2 \ \)倍,(ネ)\( \ 3 \ \)倍,になると思います。
ワンポイント解説「2.耐熱鋼心アルミより線」の通り,耐熱鋼心アルミより線の許容電流は鋼心アルミより線の約\( \ 1.5 \ \)倍となります。

(5)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヘ)弾性係数,(チ)弛度,(ヲ)日射量,(カ)地上高,等になると思います。
このうち許容電流に影響があるのは日射量であり,日射量が増加すると電線の温度が上昇しやすくなり,許容電流は低下するようになります。

(6)解答:リ
題意より解答候補は,(ニ)\( \ \displaystyle \sqrt {\frac {\pi d^{2}Kt}{Rl}} \ \),(リ)\( \ \displaystyle \sqrt {\frac {\pi dlKt}{R}} \ \),になると思います。
「電線の電流による熱損失と電線の周囲への対流によって放散する熱量が等しい」となっており,電線の電流による熱損失は\( \ RI^{2} \ \)であり,放散する熱量は電線の表面積\( \ \pi dl \ \)と電線の温度上昇(電線と周囲温度の温度差)\( \ t \ \)に比例するので,
\[
\begin{eqnarray}
{RI}^{2}&=&K\cdot \pi dl\cdot t \\[ 5pt ] I&=&\sqrt {\frac {\pi dlKt}{R}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。

(7)解答:ツ
題意より解答候補は,(イ)\( \ 5 \ \),(ツ)\( \ 25 \ \),等になると思います。
周囲温度は夏季冬季とも平均気温よりも高めである厳しい条件に設定し冬季においては\( \ 25 \ \)℃として計算します。

(8)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ヌ)小さくなる,(ソ)大きくなる,になると思います。
夏季の方が冬季に比べて放散する熱量が小さくなるので,許容電流は小さくなります



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