《法規》〈電気施設管理〉[R04:問4]電力系統における周波数調整に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,我が国の電力系統における周波数調整に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

電力系統の周波数は,電気の品質を表す代表的な要素の一つである。周波数を一定に保つことは,需要家側に悪影響を及ぼさないだけでなく,電力の供給側にとっても必要である。周波数の変動は,同期発電機の回転数の変化を意味するが,発電機の連続運転が可能な許容範囲があるため,系統周波数の大幅な低下により,一部の発電機が停止した場合,それによってさらに周波数が低下して他のたくさんの発電機が停止する\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を起こし,大停電を起こすこともありうる。

同期発電機で機械的入力エネルギーが電気出力エネルギーを上回ると回転数は上昇し,周波数が上がる。その逆では周波数が下がる。機械的入力エネルギーを一定に保っていても,現実の系統の負荷は時々刻々変化するため,周波数が変動する。長周期変動分の負荷変動は,日負荷曲線からある程度予測できるため,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)として発電機出力値をあらかじめ指令しておく。それよりも短周期の変動分については\( \ \fbox {  (3)  } \ \)で対応する。\( \ \fbox {  (3)  } \ \)は,時々刻々変化する需要と供給の差を周波数の変化としてとらえ,発電機出力を自動制御するものである。これらよりもさらに短周期の変動分については,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)と負荷の自己制御性によって吸収する。\( \ \fbox {  (4)  } \ \)とは,発電機の調速機によって回転速度を一定に保つよう自動で応動させる運転をいう。また,負荷のうちかなりの部分を占める回転機負荷の場合,周波数が下がると\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が下がるが,この特性を負荷の自己制御性と呼んでいる。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 設備過負荷現象         &(ロ)& 力率     &(ハ)& デマンドレスポンス \\[ 5pt ] &(ニ)& 長期需要想定     &(ホ)& 消費電力     &(ヘ)& ロードリミッタ運転 \\[ 5pt ] &(ト)& 負荷周波数制御     &(チ)& ベース供給力     &(リ)& ガバナフリー運転 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 周波数異常現象     &(ル)& 高速バルブ制御        &(ヲ)& 経済負荷配分 \\[ 5pt ] &(ワ)& 回転数     &(カ)& 脱調現象     &(ヨ)& 定周波数制御 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電力系統における周波数調整,すなわち有効電力の調整に関する問題です。
電力の調整なので主に電力会社が扱う内容なので,\( \ 2 \ \)種まではあまり出題されない内容です。
二次試験にも出題される可能性がある内容なので,ここで紹介している\( \ 4 \ \)種類の制御は名称や略称を含め覚えておくようにしましょう。

1.電力系統における周波数調整方法
①微小変動(数秒~数十秒の変動)
負荷の自己制御性を利用して調整します。一般的な回転機負荷は周波数が上がると消費電力が増え,周波数が下がると消費電力が減少します。この特性を利用し周波数を制御します。

②短周期変動(数秒~数分程度の変動)
発電系統のガバナフリー運転で調整します。発電機の調速機によって周波数変化量から出力変化量を約\( \ 1.0 \ \mathrm {[%MW/0.1Hz]} \ \)程度で調整します。例えば火力発電所であったら,タービン入口のガバナ開度を周波数が低い場合は増加し,周波数が高い場合は減少させて蒸気流入量を調整します。

③長周期変動(数分~数十分の変動)
系統の周波数と基準周波数の偏差を検出して中央給電指令所からの制御信号に伴い,負荷周波数制御(\( \ \mathrm {LFC} \ \))で調整します。火力発電所であれば,中央給電指令所からの信号に合わせ出力をコントロールさせます。

④日負荷変動(数十分~数時間の変動)
天候,気温,湿度等のデータを元に需要予測を決定し,出力配分を各発電所の信号へ送ります。経済負荷配分制御(\( \ \mathrm {ELD} \ \))により最も経済的な配分を行い,各発電機の出力調整,起動停止等を行います。

【解答】

(1)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)設備過負荷現象,(ヌ)周波数異常現象,(カ)脱調現象,等になると思います。
系統周波数の大幅な低下により,一部の発電機が停止し,それによってさらに周波数が低下して他の発電機が連鎖的に停止する現象は周波数異常現象となります。通常,周波数がある一定以上低下した場合には,大規模停電を防ぐために一部負荷を緊急遮断する周波数低下リレー(\( \ \mathrm {UFR} \ \))が作動します。

(2)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ハ)デマンドレスポンス,(ニ)長期需要想定,(チ)ベース供給力,(ヲ)経済負荷配分,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力系統における周波数調整方法」の通り,日負荷曲線からある程度予測し,発電機出力値をあらかじめ指令しておくことを経済負荷配分(\( \ \mathrm {ELD} \ \))と言います。デマンドレスポンスは電力の需給を発電側で調整するのではなく,需要家側でも調整する取り組みで電験3種平成30年法規問10で出題されています。

(3)解答:ト
題意より解答候補は,(ハ)デマンドレスポンス,(ヘ)ロードリミッタ運転,(ト)負荷周波数制御,(リ)ガバナフリー運転,(ル)高速バルブ制御,(ヨ)定周波数制御,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力系統における周波数調整方法」の通り,時々刻々変化する需要と供給の差を周波数の変化としてとらえ,発電機出力を自動制御するものを負荷周波数制御(\( \ \mathrm {LFC} \ \))と言います。

(4)解答:リ
題意より解答候補は,(ハ)デマンドレスポンス,(ヘ)ロードリミッタ運転,(ト)負荷周波数制御,(リ)ガバナフリー運転,(ル)高速バルブ制御,(ヨ)定周波数制御,等になると思います。
ワンポイント解説「1.電力系統における周波数調整方法」の通り,発電機の調速機によって回転速度を一定に保つよう自動で応動させる運転をガバナフリー運転と言います。

(5)解答:ホ
題意より解答候補は,(ロ)力率,(ホ)消費電力,(ワ)回転数,になると思います。
ワンポイント解説「1.電力系統における周波数調整方法」の通り,回転機負荷は周波数が下がると消費電力が下がります。



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