【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,再生可能エネルギーのうちバイオマス発電に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
バイオマスは,再生可能な,生物由来の有機性資源(化石資源を除く。)であるから,燃焼時は二酸化炭素を発生する。その排出量は,植物起源のバイオマスの場合,植物が成長過程で大気中から吸収した二酸化炭素の量に等しい。このため,植物起源のバイオマスを利用した発電では,環境中の炭素循環からみれば,二酸化炭素の量は増加しない\( \ \fbox { (1) } \ \)という特性をもっている。
バイオマスは,様々な形態があるが,有機分は固体燃料,気体燃料又は液体燃料に変えることができる。このうち固体燃料として,林地残材などの木質燃料があり,直接燃焼させる発電方式として\( \ \fbox { (2) } \ \)発電が採られている。また,気体燃料として,固体燃料を熱分解したガスや家畜糞尿を発酵させたメタンガスなどが,液体燃料として,穀物を発酵させたエタノールなどがある。
バイオマス発電は,太陽光発電や風力発電と違い,気象などの自然状況に左右されることが少ない。また,ガスホルダーを有しているバイオマス発電所では\( \ \fbox { (3) } \ \)調整が容易である。
バイオマス発電では誘導発電機が採用されている場合がある。「電力品質確保に係る\( \ \fbox { (4) } \ \)」では,誘導発電機の並列時の\( \ \fbox { (5) } \ \)により系統の電圧が一定の限度を超えて逸脱するおそれがあるときは,誘導発電機に限流リアクトルを設置するなどの必要な対策を行うこととされている。
〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 無効電力 &(ロ)& 高周波 \\[ 5pt ]
&(ハ)& 瞬時電圧低下 &(ニ)& カーボンオフセット \\[ 5pt ]
&(ホ)& カーボンサイクル &(ヘ)& 相差角 \\[ 5pt ]
&(ト)& 周波数低下 &(チ)& 系統連系アクセスマニュアル \\[ 5pt ]
&(リ)& カーボンニュートラル &(ヌ)& 出 力 \\[ 5pt ]
&(ル)& 系統連系技術要件ガイドライン &(ヲ)& ガスタービン \\[ 5pt ]
&(ワ)& 系統安定性指標 &(カ)& 汽 力 \\[ 5pt ]
&(ヨ)& ガスエンジン
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
再生可能エネルギーのうちバイオマス発電からの出題です。近年の太陽光や風力発電をはじめとした自然エネルギーの普及増大に伴い,毎年のように再生可能エネルギーの問題が出題されています。バイオマス発電は原理はほとんど火力発電と同じで,燃やす燃料が異なります。現在普及しているバイオマス発電は木材のチップやペレットを燃やす方法が多いですが,中には一般ごみを燃料と混焼している廃棄物発電等もあります。
【解答】
(1)解答:リ
題意より,解答候補は(ニ)カーボンオフセット,(ホ)カーボンサイクル,(リ)カーボンニュートラル,になると思います。カーボンオフセットは発生した\( \ \mathrm {CO_{2}} \ \)等の温室効果ガスを別の場所で削減しようとするもの(廃棄物発電等)であり,カーボンサイクルは炭素循環すなわち地球規模の炭素分の循環そのものを表します。したがって,環境中の炭素循環からみれば,二酸化炭素の量が増加しない特性は(リ)カーボンニュートラルとなります。
(2)解答:カ
題意より,解答候補は(ヲ)ガスタービン,(カ)汽力, (ヨ)ガスエンジン,になると思いますが,固体燃料を直接燃やすのは汽力発電(一般的な火力発電所の方式)となります。
(3)解答:ヌ
題意より,解答候補は(イ)無効電力,(ヘ)相差角,(ヌ)出力,になると思います。火力発電所と同様ガスホルダーを有している発電所では出力調整が可能となります。
(4)解答:ル
題意より,解答候補は(チ)系統連系アクセスマニュアル,(ル)系統連系技術要件ガイドライン,(ワ)系統安定性指標,となりますが,電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドラインでは電圧の調整に関する内容以外にも周波数や力率に関するガイドラインも記載されています。それほど長い文書ではないので,一度全文目を通しておいてもよいかもしれません。
(5)解答:ハ
題意より,解答候補は(ロ)高周波,(ハ)瞬時電圧低下,(ト)周波数低下,になると思います。いずれも並列時に発生する可能性がある事象ですが,「系統の電圧が一定の限度を超えて逸脱する」に沿う内容は(ハ)瞬時電圧低下となります。